寒い晩に…

映画の帰り、いつも通る商店街の酒屋の店先に、
灘の酒造の酒粕入荷と、手書きで書かれた張り紙があった。
思わず、立ち止まり、少し思案して、店の中に入ってみた。
まだ酒粕が残っているか聞いてみると、
おばちゃんがにこにこと箱から一つ出してくれた。
300円くらいだったか。
柔らかくて、いい匂いがした。

子どもの頃、粕汁なんて食べたことがなく、
大学の生協食堂で食べたのが初めてだと記憶している。
味噌汁とも豚汁とも違って、独特の味わいがめずらしく、
野菜もたくさん入っていて、少し高価だったが、
よく食べた気がする。

働きだしてからも、なかなか食べる機会はなく、
職場の近くの居酒屋が、ランチタイムに、
冬場だけ、味噌汁の代わりに１００円アップで、粕汁をつけてくれたので、
粕汁目当てに、よく通った。

少し頭が薄くなりかけた愛想のよいじさんと、
若くてこまめに働く、気立てのよい女性が、
仲良く切り盛りしているお店で、
いつもカウンターごしにお客さんと会話が弾んでいた。
夏の間、しばらく行かないうちに、いつのまにか店をたたんでいた。

以来、なかなか食べる機会もなく、
ＳＮＳで、知人が、夜遅くに帰って、キャベツを入れて粕汁をつくったと書いていたのを見て、
私もつくってみようと思った。

日曜日、昆布からだし汁をとろうと、鍋を火にかけて、
机に向かって作業しているうちに、
すっかり忘れてしまい、昆布を煮たてすぎたのが失敗の始まり。

その日は、夜、出かける用事もあり、
それまでに仕上げたい作業もあったので、
料理はあきらめて、だし汁は鍋ごと冷蔵庫へ。

翌日、仕事の帰りに、
ごぼうやコンニャク、鮭と、普段買わない食材を買い込んで、
台所に向かった。

学生時代に先輩からもらった、２リットルは優に超える大きな鍋があって、
その鍋に、大根、人参、こんにゃく、ごぼうと、山ほど野菜を入れた。
半分残すということができない性質で、全部、買っただけ入れていく。
鮭の切り身も、５切れ入っているのを特価で買って、
冷凍するのも面倒で、全部、つかった。
油揚げも一枚、酒粕も全部入れたから、鍋はいっぱい。

買ったばかりの白みそを入れて、味を見る。
私は、味音痴ではないが、味には甘い方なので、
たいていの料理は美味しく食べれる自信がある。
ましてや、自分がつくった料理なら、
たいしたものではなくても、美味しいと思って食べている。

私がよくつくるのは、野菜炒めか、卵とじで、
納豆と豆腐（湯豆腐か冷奴）を一番よく食べるというから、
料理の腕はしれている。
粕汁をつくるなんて、画期的なことで、
これも、特大の寒波来襲ゆえにできたのだと思う。

お椀に上品に注げば、10杯くらいはとれそうな分量で、
こんなにたくさん、一体誰が食べるのかと、
自分ながらに呆れるが、
もともとよく食べる方なので、
大きなお椀で２杯半は食べた。
ご飯の代わりに、粕汁だけ。

夜になって、さすがに、少し胃がもたれてきた。
酒粕の入れすぎで、酔ったわけでもないだろうが、
そういえば、日本酒を入れすぎたかもしれないと、思い当たった。

口直しにビールが飲みたいと思ったが、時、すでに遅しで、
11時を回っていたので、さすがに我慢した。

明日の朝も粕汁だろう。

そこで一句。

「寒波来て　いつまで続くや　粕汁の旅」

（字余りで、おそまつでした、、、）

写真は、ネットからの転載で、私がつくったのは、こんな上品ではございません。
どかどか、具材が入って、鮭は粉々です＼(^o^)／。

☆後日談（１月１９日書き込み）

10杯くらいとれそうと書いたのですが、
今朝は、ごはんといっしょに、
晩は、ご飯なしで、喜んで２杯以上食べたので、
あっという間に減って、２、３日でなくなりそうです。

でも、食べ終わったら、なんとなく胸やけした気分になるのは、なぜでしょう。
単なる食べ過ぎかもしれません（笑）。