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No1431『コメディ・フランセーズ 演じられた愛』~人生を演じる人間の妙味~

ナレーションも音楽もなく、
劇団、動物園、モデル事務所、軍事基地、病院、
いろんな世界で生きる人々を淡々と撮っていく
ワイズマン監督。

とある街の一つの場所にどっぷり浸かって、
その街の空気を吸っているかのようなおもしろさ。

そこに生きる人たちの表情。
いろんな顔があって、
人間っておもしろいなとも思える。

閉じられた空間から、
いきなり、街に出る。
そのタイミングもすごい。

劇団の上演の、これから、という時に、
あっさり、カメラは、舞台を離れ、
静謐なクロークやバーで、
片付けたり準備している人たちの姿を
ロングでとらえる。

そして、すぅっと場外に移る。
行き交う車や電車、歩いていく人々、
街のビルのロングショットとか見ながら、
車の音や、街の音、川の音に包まれると、
まさに、その街にいたかのような気持ちになった。

監督が選ぶショットがおもしろいだけでなく、
編集のタイミングも絶妙。

休憩はさんで223分は、長丁場だったが、
それを超えるおもしろさ。

前半が終わってトイレ休憩の時も、
自分の足音が妙に気になり、
映画が続いているかのように、
リズムよく歩きたくなった。

フランスの「コメディ・フランセーズ」という劇団のことは
山口昌男さんの文章で、知って以来、気になっていた。

1996年の作品。
化粧している姿は、普通の老優という感じだった男性が、
舞台に立つなり、きらきらして、
女たらしの役にふさわしく、
魅力的なオーラにあふれていた。
俳優ってすごいと思う。

100歳を迎えた元女優さんと、
同じ劇団の後輩にあたる女優さんとのやりとりが、
一緒に苦労してきた者同士の友情にあふれていて、
女優が、貴女の出演された作品名をあげていく時の、
老女のうなずく仕草と笑顔のすてきなこと!
ひとつのことに打ち込んできた人生の美しさの奇跡に触れたような
気がする。。

「愛のない人生とは、人生とはいえません」というモリエールの言葉や、
信じきることができたら、それが真実…、みたいな
印象的な言葉も幾つかあって、
最後のパリの街の風景とお月さまは、
とってもきれいでした。

ワイズマン監督の魔法です。

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