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No575『昼下がりの情事』~恋する女の子の精一杯の背伸びが切ない~

午前10時からの映画祭といいつつ、午後9時からの上映に挑戦。
オードリー・ヘップバーンが
ゲーリー・クーパー演じる、
アメリカの富豪で、プレイボーイのおじさんに
恋をする。
二人の年齢差は相当離れているようにみえ、
あの可愛いオードリーが!?と思わなくもなかったが、
映画館を出たとたんに、
オードリーと同じく「魅惑のワルツ」を歌いながら
スキップするように走っている私がいた。

『フォロー・ミー』の探偵トポルが
いつも、食べ物をいっぱい入れた鞄を持ち歩いていたように
この孤独な大富豪は、
ヴァイオリン、チェロ等の4人の楽隊を
いつも傍らにはべらせていて、
ご婦人の心を奪うバック・ミュージックに、重宝がっていた。
音楽があれば、自分の無口がばれない、とも言う。

たまたま出会い、昼間に会っていたオードリーが
自ら語るプレイガールぶりに
いつしか嫉妬心が燃え上がり、
自分でも消せなくなってしまい、酒をあおるゲーリー。

隣の部屋で演奏中の楽団のメンバーのため
酒をグラスについで、カートにのせて、ぐいと勢いつけて押して
隣室まで走らせる。
カートを受け取り、楽団員が手に取り、
今度は空のグラスをのせて、カートをゲーリーの元に返す。
カートが、ガラガラと音をたてて
二つの部屋を行き来しているうちに
皆酔っ払って、寝てしまう。
映像だけで時間経過もゲーリーの心情も描いてしまう
語り口がすてきだ。

ホテルの隣室の子犬とおばさんのやりとりも楽しい。
隣室からの訪問客をみつけて、一番に吠えても、
訪問客に全く気付かないおばさんは
何を吠えてるの!?と、叱られてばかりの子犬の不運。

とにかく会話が粋だし、脇役がいい。
楽団員はもちろん、
オードリーの父役のモーリス・シュヴァリエ。

娘のシャンプーの回数がやたら多くなったことや
冷蔵庫に入れられた1輪の花についての
父娘の会話もすてきだ。

オードリーが「パパ愛してる」といえば、
父は必ずいつも「もっと愛してるよ」と
moreをつけて返す。

父の仕事は、なんと私立探偵。
顧客ファイルは、秘密のはずが
なぜかオードリーは全部読み込んでしまっている。
ファイルに書かれた不倫の数々も、彼女の頭の中では
燃え上がるような美しいロマンスとなる。

このオードリーが、顧客ファイルの中に見つけて
あこがれ続け、
実物に会って、さらに魅かれ、
恋に落ちた相手が、富豪のゲーリー。

彼の姿を、数か月ぶりに、劇場の2階席から
下の客席の中に見つけた時の
嬉しさと驚きでこおりついたようなオードリーの表情。
双眼鏡で必死で見つめる。
彼も偶然パンフを丸めて、望遠鏡をつくり、周りを見回していく。
二人の目と目が合ったら、どんなにすてきかと想像して、
思わずときめいた。

ビリーワイルダーの57年白黒作品。
昔の映画で、10時半過ぎには終わると思っていたのが
なんと長尺の130分。終電が気になり少し焦ったが、
映画自体は、全く長さが気にならず、
ぜひこの語り口に酔ってほしい。
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