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No574『ローラーガールズ・ダイアリー』~自分をぶつけられる世界を見つけた少女の喜びと不安~

少女が、自分を信じ、全力でぶつかることのできる世界を見つけ、極めてゆく。
ブリスにとって、それがローラースケートだった。

ローラースケートゲームなんて全く知らなかったが
チームプレー、作戦プレーのおもしろみと
スピード、迫力ともすごくて、おもしろかった。

楕円形のトラックで
敵味方とも一緒に
各4人の仲間(ブロッカー)がスタートラインに並ぶ。
その少し後方に
各チーム1名の得点プレーヤー(ジャマー)が位置し、
ホイッスルとともに、まずブロッカー集団がスタートし、
次のホイッスルで、ジャマーがスタート。
ブロッカーは、相手のジャマーの行く手を阻み、
味方のジャマーが前に進むのを助ける。
ジャマーは、敵のブロッカーの合間を抜け出し
1周した後、再び敵のプレーヤーを1名抜くごとに得点を得る。

このブロッカーの間をすりぬけたり、くぐりぬけたり、という
スリルが生々しくて、
観ていてこちらまで上半身を動かしたくなった。
ひっくりかえったり、転んだときの勢いも尋常ではない。

いつも最下位のスカウツチームの新星ジャマーとなるのが、
高校生の小柄なブリス。エレン・ペイジが演じる。

一部スタントをつかっているとはいえ、
エレンがリンクで滑っている時の緊張感あふれる顔がいい。
初めてローラースケート靴を買って
街の通りで練習している時も
すごく嬉しそうで印象的だ。
まさに、己の天分を見つけていく瞬間。
自分の世界を見つけ、てごたえを感じ、成長していく。

映画は、あんがいと
ブリスが上手くなっていく時間経過はくどくどと描かない。
上手くなるのは一気だ。
むしろある程度強くなり、試合に勝ち残り、
山場を迎えた時に問題が起きる。
そのときの、彼女の心の揺れ。不安とあきらめ。
大事な試合を前に起きたトラブルにうちひしがれるブリス。
果たして自分の弱さを超え再びリンクにたてるのか。
エレンは、ナイーブで繊細な少女の内面をみごとに演じた。 

主役と同じくらい脇役がすばらしい。
チームの仲間には、
息子がいるお母さんもいれば、
元フィギュアのオリンピック選手もいる。
少し年齢を重ねてからローラースケートに出会い、
こここそ自分が輝ける場所だとブリスに語る選手。
若くしてローラースケートに出会ったブリスへの羨望も隠し切れない。
そんな女たちの本音。

そして、ブリスの親友や、両親。
母親が、自分の若い時の失敗を娘にさせないよう必死になる様子と
その夢を砕かれても、娘を愛し守ろうとする、大きな愛。
父が、妻に隠れTVでフットボールゲームの観戦に興じている様子と
娘を夢へと背中を押し出す優しさ。
それぞれに、親としての思いと、
男性、女性としての個人としての思いとが
うまく描かれている。

監督がドリュー・バリモアで彼女自身も出演しているせいか
女の子ムービーと思いきや
男性のお客、若者から中年までとしかも一人客が多かったのが意外。

母が自分を誇りに思ってくれるような娘になりたい、という
ブリスの母へのメッセージもすてきで、女性にはぜひお薦めの一作です。
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