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No1059-2『甘い抱擁』再考~ヒロインを追い詰める監督~

アルドリッチ監督は、登場人物をどんどん追い詰めていき、
それが容赦なくて、
ときに映画を観終わった時の後味が、いいとは言えないことがあります。
『甘い抱擁』(原題『THE KILLING OF SISTER GEORGE』)は、その典型ですが、
それでも、そこから出てくる人間の真実味がすごく、
鬼気迫るものがあったりして、圧倒され、
まさに、それが映画の魅力とも感じます。

確かに、ヒロインのジューンには、容赦ない苛酷な運命が待っているわけですが、
彼女は、自分を連続ドラマ番組から引退させようとする、会社上層部や、脚本家たちに、
徹底的に、対抗姿勢をとっています。

彼女も雇われ女優という弱さで、
結局は、彼女の演じるシスター・ジョージは事故で死んでしまうことになりますが、
それでも、ドラマの収録中、彼女は、事故で倒れた時、顔をひんむいて、ほかの俳優を笑わせたりして、
演出家に、「テレビに映らなくても、ちゃんと脚本どおりにやってくれ」と苦情を言われたりして、
相当に“強い”のです。

そんな彼女を邪魔者扱いして、面と向かってなじった脚本家に、
番組の古参のスタッフの一人が、
「君よりも彼女の方が、この番組では古株なんだから、口を慎みたまえ」と言うのが印象に残りました。
彼女の苦しみがわかっている人もいるのです。

監督が用意した結末は、相当に残酷です。
ジューン自身も、悪態はつくし、下品な言葉をぶつけ、やけは起こすし
みっともなくて、魅力的な女性とは、とてもいえません。
それでも、どこか愛すべき人物で、
衰えと老いの迫る中、ひとり孤独に、心の悲鳴をあげているようにも見えます。
そんな彼女の最後の姿を思うにつけ、
どこからか、
「なにくそ、負けへんで」という気持ちを観客に抱かせ、鼓舞するものがあるような気がしますが、
さて、ご覧になった皆様はどうだったでしょうか。

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