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No1058『メカス×ゲリン 往復書簡』~蟻んこよ、再び~

久しぶりに旧作特集で、神戸新開地のKAVCへ。
ホセ・ルイス・ゲリン監督とジョナス・メカス監督とが交わすビデオ・レター。

ゲリン監督が、最後に日本を訪れ、
新潟、鎌倉とめぐる。新潟では良寛和尚の像の上にきりぎりすがのっていた。
鎌倉では、小津安二郎監督のお墓を訪ねる。
この蟻んこのシーンが大好きで、
今日はまさにそれを観に行った感じ。

小津監督の「無」と書かれた墓碑で
蟻んこが2匹、みみずの死骸のような、3倍くらい長いのを
お墓の段の上に持ち上げようと
必死で壁を登っていく。
2匹が協力して、数十センチの高さを上がり、へりまでたどり着く。
よっこらしょと、へりの上にのせたいところが、
あえなく、蟻んこ1匹とともに、落下。

落ちてしまった蟻んこは、1匹になっても諦めず、
再び、必死で持ち上げようとする。
へりのあたりまで来て、
さっきの一度は見放したけど、やっぱり未練がある蟻んこが戻ってきたのか、
通りかかった蟻んこなのか、
2匹くらいが、現れて、手伝う。
3匹が力をあわせて、やっとのことで、無事、段の上までみみずを持ち上げる。

その間、わずか1分少々だろうか、
木々のざわめきや、鳥のさえずりや、風の音、いろんな音が、駆け抜けていく。
まるで、私自身も、あの木々に囲まれ、墓地を吹き抜ける風を感じながら、
ゲリン監督といっしょに、蟻んこを見つめているような、
そんな永遠の時間を感じた。

別に蟻んこが好きだから、というわけじゃないけれど、
すごく好きなシーン。

「生に反応する」というゲリン監督の言葉のとおり、
二人は、人間だけでなく、鳥や猫を映像におさめていく。
木々の葉、枝もきれいだ。

メカス監督が、NYの街中で、
一匹の薄汚れた鳩が、
落ちている菓子をついばんだりする様子を、
じっととらえ続けていたのを、ふいに思い出した。
二人の映像は静かに呼応している…。

ゲリン監督が撮る映像は、自身の影や、
回転ドアの光のきらめきや
映像が反射して二重になったり、ぼんやりしたり
生活の合間に、ふと目にするような、さりげない美を、繊細にカメラにおさめていく。
本当にロマンチストだと思う。

明るく楽しく語りかけるような、少しハイテンションのメカスの声もすてきだし、
二人のモノローグの声もいい。

今日は、メカス監督の作品
『ロスト ロスト ロスト』(1976/’49〜63撮影)
『リトアニアヘの旅の追憶』(1972/’50〜72撮影)の上映もあった。
子どもたちがかわいらしい。
にこやかに笑っている人たち、
雪の中、そりで遊んでいる人たち、
いろんな風景、いろんな人、いろんな言葉が綴られている。
『リトアニア~』の冒頭、メカス監督が山歩きに出て、
アメリカに来てからいろんな嫌なことがあったが、
ひとときとはいえ、忘れることができたという言葉があった。
3時間近くと長い『ロスト~』もあわせ、
どちらも上映の機会があれば何度でも観たい。

実は、昨日、残業の挙句、誘われるまま飲みに行って、
つい調子に乗って10時過ぎだというのに、3杯もビールを飲んで、
疲れがたたったというわけで、
睡魔にところどころ襲われながらの、メカス体験でしたが、
それでも、漂うように観た映画の現実感が、私を現実に引き戻してくれる感じが、
なんとなくすてきな感じで、心地よい映画体験でした。

ところで、参考情報ですが、
KAVCの会員(年会費1000円)になると、
映画はいつでもシニア料金で
近くの「元町エビス」という、ビールがおいしい居酒屋の料金が
なんと2割引き!!になることを、今日、発見しました。
ぜひよろしければご利用ください。


 

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