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No687『京城』~うっとり陶酔するような映画体験~

1940年に清水宏監督が朝鮮総督府鉄道局から依頼を受けて
つくった国策映画のドキュメンタリー。
京城とは、今のソウルのことで、
市内の朝から夜までの、
いろんな風景を次から次へと撮っていく。
なんだかどの人たちも、どの光景もすてきで
なかば夢見心地だった。

日本人もいれば、韓国の民族服を着た韓国人もいる。
街を往来する人々をふかんで撮ったり、フルショットだったり
働く人たちの手元をアップにしたり…

路地で遊ぶ子ども達、
歩道の鎖に腰をかけたり、のぼったりする子ども、
バレーボールをする少女たち、
体操する少年たち、
お乳を吸う赤ちゃん、眠る赤ちゃん、
野球場で熱心に見守る観客の顔、
電車に乗る人たち、
路地を荷物を持って行きかう人たち、
往来をふいに横切ってゆく鶏や
唐突に現れる犬だとか、
とにかく、どの風景も数十秒ぐらいで、あっさり切り替わっていくのだが
どのシーンにも、“ひと”が、“まち”が
映っている、という感じ。

圧巻は、路面電車のシーン。
噴水がある周りをぐるりとカメラがゆっくり回っていく。
途中、路面電車とすれちがう。

少し情緒的な音楽が流れ、画面は長回し。
噴水をとらえながら、緩やかにカーブをしていき、
路面電車が視界に現れ、また消えていく、
噴水からは、ちろちろ水が出ていて、という感じが
なんとも陶酔するような感覚になり
すばらしかった。

夜になって、街灯に電気が灯り、
お店で働き続ける人をロングに映して、映画は終わる。
とても24分とは思えない充実度で
もう一回みたい~!!!!と
大きな声で言いたい傑作。

京都国立近代美術館での隔月開催での上映会。
明日は、『達磨はなぜ東へ行ったのか』という
韓国映画の上映もあり、
何年も前に、何かでタイトルを知って以来、
見たかった作品。
入場料は500円とお手頃。来年もぜひ続いてほしい企画です。
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