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No686『雲の上』~虚ろな心がさ迷う行方は…~

おもしろかった~。
ヌーヴォのレイトショーで特集上映されている空族(くぞく)特集の1本。

やくざのボスたちが、
シャブを横取りして逃げた若者をつかまえ、
トランクに押し込む。
(捕まえるシーンはあっさり省略、
いきなり押しこむシーンという鮮やかさ)

車が動き出し、トランクでどんどんやっているのが
うるさいからと、ラジオをつける。
懐かしの薬師丸ひろ子の「あなたをもっと知りたくて」が流れる。

ふっと回想シーンのような
よくわからないシーンが入ってきて
主人公チケンの弟が原付のバイクを盗もうとして
シートにナイフで切りつけるシーンも。
前から、バイクがやってきて、すれちがう。
なんと、チケンの弟が乗ってるバイク。
カメラは、バイクへと切り替わり、
バックミラーに映る弟の顔、
太陽にきらきら反射する赤いヘルメットを、
ほぼすぐ後から、呻るエンジン音とともに映す。

もうシーンの順番も曖昧だが
薬師丸の歌と、エンジン音と、
なんだか、切ない感じがして、すごいと思っていたら、
さらに、後から2台バイクが猛スピードでやってきて
追い抜いていく。
まるで、偶然、映画の撮影も知らず、
通りすがりのバイクのようなさりげなさ。
カーブを曲がって…
真っ暗になり、
「山、山、山どこまでも山ばかり」という男の声。
チケンが一人山の中をロープを持って歩いていく。

この一連のつながりをみて、わあ、すごいと
一気にひきこまれた。
廃墟になった集合住宅をチケンの弟が訪ねたり、
とにかく、次にどんなカットへとつながっていくのか
わくわくしながら、ラストまで一気だった。

富田監督の編集、音や画のつなぎ方が
とにかくすごい。

シャブですっかりうにゃうにゃ~となってしまった
赤いじゅばんを着た女、
ぼおーっとした表情のチケン、
チケンの背中の赤い龍の刺青も美しく、
女の赤い敷物、赤いカーテンの部屋が
8ミリ映像のざらついた感じにぴったりで
空気の粒粒まで感じられそうな、不思議な空間だった。

前半、意気込んで見始めたはずなのに、
疲れがたまっていて
一瞬、力が抜け、睡魔に襲われた瞬間
女の叫びが聞こえ、
それがまるで、現実に映画館で誰かが叫んでいるように聞こえて
びっくりして、すっかり目がさめた。
ちょっと叫んだだけみたいなんだけど、妙にリアルだった。

空族については、以前の上映時に『国道20号線』をみて
あまりにぶっとんだ世界で、
国道沿いの風景とか、おもしろいけど
正直なところ、その魅力がよくはわからなかった。

昨日、再見して、すぐというよりは、
見終わって思い返していくうちに、じわりじわりと
おもしろさが染み渡ってきて、
今日、一気に爆発した。
なんか、パンチがあるというか、リアルなてごたえがある感じです。

空続の特集は、明日が最後です。
私は用事があって行けませんが、
明日の、初期の作品は、今日『雲の上』をみて
ますます見たくなっただけに、すごく残念です。

彼らの作品は、今年『サウダージ』が公開されるので、
それを記念しての再上映を期待したい。
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