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No685『映画史』ジャン=リュック・ゴダール~爆音映画祭 at Osaka~

噂に聞く爆音映画祭がとうとう関西にやってきた。
知人から伝え聞いて、どんなものかと思っていたが
やっぱりすごかった。
時々、びりびりと振動が体に伝わってきた。

爆音上映というのは、
音が一律に大きいだけじゃなくて、
普段、気付かないような音を大きくしたり
いろいろ仕掛けをしているそうだ。

とはいえ、とにかく
全体に音は相当に大きくて、
冒頭、いきなりびっくりしたが、
終わってみると
うるさい、という感じではなく、
なんだか非常におもしろい映画体験だった。

「タイプライターの音が銃声に聞こえ、
フィルムを編集機にかけてズルルル、ル~と
早回しする音がチェーンソーのように聞こえるんですよ」と
主催の方が言っていたが
そのとおりで、フィルムの方は、私には
バイクがふかすエンジン音のように
でかく激しく聞こえた。

ゴダールの映画史は、全部で8章、延々4時間半で、
百本以上もの映画の断片や
絵画、写真を
コラージュのようにつなげ
ときに、文字だけの字幕が入ったり、
音も、実際流れている映画の音もあれば、
ナレーションがかぶったり、
いろいろな言葉がとびかい、
まるで言葉の乱反射のようだ。

ヨーロッパ映画からハリウッド映画まで様々で
あまり洋画に詳しくない私には、
大半がみたこともない映画で、
たまに、自分が好きな映画だったり
ここ1年位に観たことがある映画だとわかったりすると
途端に嬉しくなり、思わずスクリーンに前のめりになる。

しかし、どの映画かさっぱりでも、
そこに「映っている」人、もの、風景、
「映っている」動きは
それぞれに、美しかったり、きれいだったり、怖かったりいろいろで
意味はわからなくても、おもしろい。
沈うつな表情で飛び降りてしまう少年、
駆けていく女、
叫んだり、いろんな表情。
時々、強烈に印象に残るシーンがあって、
一体どの映画だろう、とやたら気になったりもする。

前半、戦争や虐殺などの暴力シーンとかが多くて
映画史は、戦争の歴史、圧政の歴史でもあるのだなあと
重い気分になったりもした。

スクリーンやスピーカーから放たれる
パワフルな音の波に身を浸すのは、慣れれば、
それなりに快感で、
わけはわからなくても、後半になってくると
なんだか心地よい気までして
油断すると、眠気まで襲ってきた。
私だけじゃなく、
最前列の男の子も時々船を漕いでいたっけ。

「さまざまな人やさまざまな世界の
さまざまな過去や未来や現在が、一気に押し寄せてくる。」と
映画のちらしに、
爆音上映を企画した樋口泰人さんが書かれていた。
まさに「押し寄せてくる」感じ。
溺れもせず、体の中をいろんな音が通って、すり抜けていく。

バッハやベートーベンの曲もなんだか強く残っている。

爆音上映は、物語性の薄いゴダールの映画にはぴったりで、
「映画史」なんて、格好の対象ではないかと思う。

どちらかといえばゴダールを苦手とする私のような人間には、とりわけ、
この『映画史』の爆音上映こそ、
ゴダールを身近に感じる絶好の機会ではないか
なんて思ったりした。
多分、これをいきなり、普通の上映でみせられるのと
爆音上映でみるのとでは、ショッキング度がかなり違う。

といっても、今、何を覚えているのか、といわれれば
そんなにたくさん言えるわけではなく、
もう少し映画人の顔とか、覚えておけばよかったと思った。

とりあえずは、このゴダールとのご縁をきっかけに
十三の第七芸術劇場で開催中のゴダール特集にも
足を運んでみよう!
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