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No1136『もらとりあむタマ子』~ゆるゆるの前田敦子が魅力~

前田敦子がとっても可愛い。
くりくりした大きな瞳で、まばたきもせず、
じっとスクリーンからこちらを見つめている。
お父さんを見てたり、テレビやいろんなものを見ているだけなのだけれど、
そのまなざしに、思わずどきりとしてしまう。

可愛いはずの前田敦子が、
アップの顔をよくみたら、顔のつくりもアンバランスで、
ふつうの女の子にみえたりする。
彼女は、めちゃくちゃな美人というよりは、少し個性派の美人で、
ふてくされた顔、ぶすっとした顔も含めて
彼女の存在感自体が、魅力。
どこか超然としていて、とってもユニーク。

大学を卒業して、実家の甲府に帰ってきたものの、
就活もせず、ぐうたらな毎日を送るばかり。
洗濯も料理も、スポーツ店を営むバツイチの父にまかせきり。
漫画を読んで、居眠りして、テレビ観て、テレビゲームして、ぼっとしている。

お父さんがつくる夕飯は、ご飯とみそ汁とおかずとサラダと
いつも手作りでちゃんとしている。
でも、タマ子は、お父さんにおしゃくとか、ビールをついだりなんてしない。
超マイペースで、
お父さんが何か、説教くさいことをいえば、逆ギレするぐらい。

タマ子ちゃんがご飯を食べているアンニュイな雰囲気がいい。
左利きで、あんなふうにごはんを食べてみたいと思った。
ロールキャベツを、大きな口でかみついて、キャベツをもぐもぐ食べる感じとかリアルで、
食卓の光景は、この映画の魅力の一つ。

タマ子ちゃんと仲の良い近所の中学生の男の子のかけあいがいい。
「ぼくは部活に恋に忙しいんです。タマ子さんとちがって」と言って、
タマ子に頭をごつんとたたかれるシーンは、思わず笑ってしまった。

ふつうなら、ここまでゆるゆるだと、観ている方がいらついてしまいそうだが、
そうはならないから、不思議。
むしろ、タマ子ちゃんが、ふてくされたような、ぼーっとした表情で、
神社の前で、自転車止めて、三色団子をかじったり、
ベンチに座ってアイスクリームをかじってるのを、
観てるだけで、こちらまで満たされた気持ちになる。
けだるい感じ、アンニュイで、まどろんでる感じが、心地よくて、
ずっとそんな彼女を見つめていたくなる。

のほほんとみえても、
実は、タマ子ちゃんも深い悩みを抱えてる、と描きがちだが、
本作では、そうでもないところがおもしろい。
おとうさんの再婚が気になったり、人間くさくて、
ひたすら、ぐうたらなタマ子ちゃんの“今”を追いかけている。

いわば、父と娘の物語。
お互いに子離れ、親離れできないまま、ずるずるっときている。
それが、わざとらしくもなく、さらりとしていて、
もう、本気で、本音で、このとおりという感じの前田敦子の演技、セリフまわし、雰囲気がいい。

タマ子ちゃんが、
人間は、誰もが自分でない誰かを演じていて、
今の私は私じゃないんです、というようなことを書いている。
やっぱり、つかみどころのないタマ子ちゃんの姿が魅力なんでしょう。

駅の横を自転車で一人、通り過ぎていくうしろ姿がすてきだった。
どう終わるのかと思っていたら、
やっぱり、という感じの終わり方で、うれしい。

街の風景の中にはまっているタマ子ちゃんの存在感は、
『私は猫ストーカー』(鈴木卓爾監督)の星野真理を思い出した。

今週で上映が終わってしまう夕方一回上映のテアトル梅田。
意外にお客さんが入っていたのも納得。
富田靖子が出ていて感動した。

テアトル梅田では、箕面ビールが売っていた。
ぜひレイトの時に、挑戦したい。
18日からは、前田敦子主演の「『Seventh Code』も1週間限定公開!

映画を観た帰り、デパ地下で、3割引きのロールキャベツを買って帰って食べた。
そういえば、タマ子ちゃんは、お酒は飲んでなかったな。

もらとりあむタマ子CM「冬バージョン」
こんなのをみてると、無意味なことをしているタマ子ちゃんが
とめどなく、かわいい。
中学か高校の頃、
学校から帰って、こたつで、母や弟たちと、山のようにみかんを食べながら、
水戸黄門とか、必殺とか、夕方の時代劇を、
途中で観るのをやめられないまま、いつも最後まで、
ずるずると観ていた頃を思い出した。

追記(1月14日)
山下監督、脚本の向井さんらのおもしろいトーク記事を見つけましたので、
よろしければご覧ください。
UNZIP(アンジップ)掲載の記事

写真:(C) 2013『もらとりあむタマ子』製作委員会

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