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No1349『緋牡丹博徒 花札勝負』~親分子分の情に思わず感涙~

「緋牡丹博徒」シリーズ8作品の中の第3作で、
加藤泰監督の1969年の作品。

西之丸一家の親分を演じたアラカンこと嵐寛寿郎と、
その子分役の山本麟一のやりとりに泣けた。

最初、有名な線路を穴掘ってカメラを地面スレスレで撮ったようなショットから、
電車にひかれそうになった目の見えない少女をお竜さんが助けるシーンで始まる。
タイトルロールに続き、
お竜さんの、仁義の挨拶のシーン。
このときの、ハキハキした、藤純子の口上に負けず劣らずいいのが、
相対する、西之丸一家の子分を演じた、山本麟一。

一宿一飯の義理で、親分と一騎打ちした高倉健の刃に、
急所は外されたものの、重症を負った親分を見て、
非道な金原のやり方に憤りを抑えきれず、
麟一さんの怒りの顔がクローズアップされる。
続いて、次のシーンでは、もう、
血まみれになって、帰ってくる。
一人で金原一家に殴り込みに行ったのは、描かれなくても、十分伝わる。

それだけに、
アラカンが、自分も手負いで寝ていたのに、
麟一さんが血だらけのすまきになって帰ってきた時、
麟一さんの傍らに連れて行ってくれと、頼む。
親分子分の熱い情に、
予期せぬくらい、涙があふれた。

実は、それまで、おもしろいとは思いつつも、
わりと冷めた目で観ていたので、自分でも、意外。

やくざ映画って、好きなジャンルではないけれど、
親分子分の情っていうのは、
男と女のような、惚れ込んだ人間と人間の情と、変わらない。
そこで生まれた情の、絆の物語に、
カメラの美学が加わり、
役者さん達のはちゃめちゃなエネルギーが漲れば、
もう、やくざ映画であることなんて忘れて、
ジャンル映画のお決まりのパターンを超えて、
ただもう、きれいな涙が流れる、と痛感した。 

有名な、雪の降る中、鉄橋の手前、橋のたもとですれ違う、
藤純子こと、お竜さんと、高倉健。
お竜さんが、道を尋ねられて、
いきりたつ子分(山本麟一さん)をおさえ、
折り目正しい人だから、 と丁寧に道を教え、
まだ道のりがありますからと、自分がさしていた傘を差しだす。
受け取る高倉健。
このとき、2人は、傘の柄の違うところを持って、受け渡しするのだけれど、
クライマックスで、高倉健は、
あのとき、差しだされた傘のぬくもりが、おっかさんを思い出させた、と言う。
ああ、ぬくもりなんだなあと思った。
直接、手を重ねたわけじゃないけど、
傘に残ったぬくもりが、二人をつないだ。。。
さすが、ロマンチスト加藤泰監督だ。 

それで、やっとわかった。
『瞼の母』で、親子の名乗りを自ら明かせなかった母親の木暮実千代が
番場の忠太郎(中村錦之助)が去った後、
彼が座っていたあたりの、畳を手で確かめるシーンがあって、
忠太郎が流した涙の跡かと思っていたけれど、
忠太郎の座っていたぬくもりなんだと気付いた。

話を『花札勝負』に戻せば、
藤山寛美さんが、ワンシーンだけ出演。
『三代目襲名』ですっかり寛美さんにさらわれた私は、
寛美さんがどこで出てくるのか注目していたのだけれど、一瞬だった。

四国から、お竜さんのいる西之丸一家を訪ねてきた若山富三郎に、
道を聞かれる警官役で、
名古屋弁を、否定形の意味に誤解するワカトミさんとのやりとりが楽しい。
ズボンをはきながら登場して、しゃべりながら、
チャックを閉めて、ベルトをしめながらという、人を食ったような感じがはまっていた。

ほかにも、ワカトミさんの子分、待田京介、
親分役の清川虹子と、皆、いい味出していた。

「お竜さん、俺から離れるな」という高倉健は、ひたすら無口で渋い役柄。
ひたすらローアングルのカメラに、お竜さんの足さばきが映えました。 

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