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No1289『フレンチアルプスで起きたこと』~家族の間の不穏な空気~

観終わった後、
いつまでも、ざわざわとした感じが残る不思議な映画である。

バカンスでスキー旅行に出かけた家族が、
テラスで大勢でランチをしている最中、雪崩もどきにあう。
父親は、妻や子どもを置いて、一番先に逃げてしまう。
幸い、直前で雪崩は止まり、雪煙だけで何事もなく終わるが、
家族の中には、見えない亀裂が生まれる。

夫は、最初、自分が逃げたことを認めようとせず、
妻は、逃げたことを責める。
子ども達は、夫婦仲が剣呑になったことに、敏感に反応する。

夫は夫で、どうしてそういう行為をしてしまったのか、
自己嫌悪と、もどかしさとで、情緒不安になり、
家族の前で泣き出したりする。
言葉にならない思いがあふれる。

そういう家族がすれちがっていく様を、映画は、
ホテルの鏡に向かって家族4人が並んで歯磨きをしている姿や、
朝食のなにげない風景から伝える。

感情の微妙なすれ違い、いざこざというのは、
ほんのささいなやりとり、
ちょっとした仕草から伝わるもの。
繰り返されるうちに、相手への嫌悪も募っていく。
そういう、ざわざわした、息づまるような居心地のわるさ、
ささくれだち、すれ違ってしまう歯がゆさが
リアルに伝わってくる。

スキー場の静謐な世界で、ガタンガタンと音をたてて進んでいく
リフトの規則的な音や、
夜遅くのスキー場で、清掃機などが動く音が、
そういった不穏な雰囲気を増す。

父親は家族を守るものという固定観念が、
ある意味、気持ちよく崩壊し、
家族って、なんだろうなと思ったりもする。(いい意味で)

終わり方も、ユニークで、考えさせられるところがあり、
脚本家や監督も、ずいぶんいじわるな人だと思ったり、
小品ながら、いつまでも余韻が残るおもしろさ。

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