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No1508『パラダイスの夕暮れ』~潔さから生まれるテンポのよさ~

カウリスマキ監督の1986年の作品。

『マッチ工場の少女』他とあわせて
「労働者3部作」と呼ばれるとのこと。
冒頭、
ゴミ収集会社のトラックヤードに
制服を着た男たちが、わいわいと入っていき、
次々とトラックに乘っては、
早朝のごみ収集のために、街に繰り出して行く。
その中に、ニカンデルもいて、
車を止めては、
てきぱきと、ゴミのカートから
収集車へと回収し、手際よく働いている。

このリズムのよさが心地よくて、
実に魅力的に描いている。
ゴミのカートの縁が、
収集車の角にひっかかって、
そのままひっくり返って、中身のゴミだけが
回収されるという仕組みも
初めて知った。

男も女も、潔くて、
一目で恋に落ちるし、
別れを告げたり、
自分の考えを相手にぶつけるのも潔い。

男はふられた悲しさを
いつまでも引きずっていても、
どこかでずっと思い続けていて、
再会すれば、潔く相手を受け入れる。

だから映画のテンポもよいのかと
思ったりもするが、
要は
余計なショットがなくて、
いかに少ないショットで
語っていくかの達人なのだと思う。
省略の美学。

描かれなかった部分の
主人公たちの心の動きを
映画が終わってからも
想像している。

エンストした車を直すときに
指にけがをし、
スーパーのレジ係のイロナが、
支払いの時に気が付いて
手当をする。
手当の前、レジで並んでいる時から、
ニカンデルは、すでに、もう恋に落ちている。

イロナをデートに誘い、
小さな花束を用意したり、
やがて、
スーパーの経営不振で解雇され、
居候してきた彼女のために
料理をつくったり、皿洗いをして
彼女に尽くしている。

しかし、うまくいかない。

ヒロインのイロナが、心移りした
新しい勤め先の
洋服屋のマネージャーが
ジャン=ポール・ベルモンドを
思い起こすような、
のっぽで、顔が長い、イケメンふうの男で、
ニカンデルは、
フィンランドの高倉健みたいに、
不器用だけど、腕っぷしは強い、きまじめな男。

自分のブログを検索してみたら、
カウリスマキ監督の作品について
ほとんど書いておらず、
見逃したか、
書けずに終わっていると気付いた。

今回の特集上映の機会に、
ぜひたくさん観たいと思う。

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