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No1509『浮き雲』~ゆるやかな友情の尊さ~

カウリスマキ監督の1993年作品。
映画の冒頭のあたりで、
夜、仕事を終えた帰り道か、
イロナの前に、路面電車がやってくる。
この路面電車が訪れて、止まるシーンの
あまりの美しさに見とれた。

路面電車の動き、車体自体が、
とても艶めかしく感じられて、
どきどきした。

イロナは、路面電車の運転手のすぐ後ろに立って、
前方を見つめる。
二人は夫婦だとすぐわかるのだけれど。
とてもよい関係。

夫のラウリは、
ローンで、テレビを買ったりしたが、
リストラの波で、解雇されてしまう。
イロナが給仕長として働くレストランも閉店になり、
切実な職探しが始まる。

このレストランで働いていたコックが、アル中だったり、
クローク係の男が、存在感たっぷりで、
閉店とともに、ばらばらになってしまう。
でも、イロナは、偶然再会したりして、
それぞれに苦節を経て、
最後、新しいお店で再び集まる様子も、
淡々と描かれていて、とてもいい。
このかつての同僚と、偶然出会った時の会話もいいし、
緩やかな友情が、
イロナの将来への力にもなっていく。

アル中で、浮浪者になっていたコックを見つけて
アルコール中毒患者の専門病院に連れていき、
次に彼が登場した時には、
新しい店のコックとして、しかと立っている。

説明もセリフもなく、
行動で、てきぱき見せてくれる、
リズムのこぎみよさは、爽快。

ラウリは妻想いで、
花束を持って現れたり、
2人で映画を観に行って、
途中で、ラウリがつかつかと劇場から出てきて、
受付で、
「あまりにつまらないから金を返せ」と言うと、
モギリが「どうせ、ただ見でしょ」と返す。

え?と思っていたら、
ラウリに続いて劇場から出てきたイロナと
モギリの女性の会話で、
彼女がラウリの妹とわかる。

なんでもないシーンだけれど、上手に描いていると思う。

チラシの写真で、何度も観たことがある、
レストランの入口で、
イロナとラウリが見上げている姿。
これがラストだと初めて知った。

エンドロールで、
生きていたら、いろいろあるけど
空を、雲を眺めて、なんとかやっていこうという感じの
歌が流れてくる。

イロナが働き出そうと、気合を入れると
表情がピシリとなって、かっこいい。
自信をもって働く姿は、美しいのだなあと思った。

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