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No1507『マッチ工場の少女』~言葉がなくてもこんなに語れる~

アキ・カウリスマキ監督の1989年作品。

冒頭、工場で、
太い木が、機械によって、
木肌を薄くそがれていく場面から始まる。
マッチがどうやって製造されていくのか、
マッチ棒が箱に入れられて、
梱包されるまで、
機械により自動的に行われていくさまが
順に映っていて、
とても興味深かった。

マッチ工場で働くイリスは、
機械がうまく貼り損ねたラベルを
チェックしたりの仕事。

家では、
母とその愛人に
こき使われて、つらい毎日。

セリフのないまま、
たんたんと描いていき、
その人の状況を浮かび上がらせる。

夜のダンスバーに行っても、
声をかけてくれる男性はおらず、
高価なドレスを買って、
乗り込んだバーで
やっと男性から声をかけられ、
男性宅でベッドイン。
幸せそうなイリス。

しかし、男性からは
一夜限りの夜遊びと
冷たくあしらわれ、
子供ができたと相談したら、
堕胎費用の小切手が送られてくる。

イリスが唯一、感情を表したといえば
幸せな夜を過ごした翌日、
工場で働きながらも、
どこか笑みがこぼれていた。

あとは、いつも、どちらかというと仏頂面。
表情を出さない。
薬局で薬を買うシーンでも。

イリスが計画したことが
うまくいったのかどうか、
映画は描かない。
でも、最後になって、わかる。
そのときも、やっぱり彼女は表情を変えない。
決然とした顔をしている。
自分をひどい目にあわせた人に
恨みをはらしただけと
いわんばかりに。

冒頭のマッチ工場の、単調な機械音がとても大きく、
うるさいぐらいだったが、
この工場音とともに、
イリスの、きっぱりとした顔が
心に残る。
不思議な映画。

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