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No187「花つみ日記」石田民三監督1939年~おおさかシネマフェスティバル報告その2~

大阪宗右衛門町を舞台に、15歳の高峰秀子主演で撮られた本作。
50年ぶりに上映されるとあって、2月4日(土)、会場には、お年寄りの姿がめだった。
花街の置屋の娘(高峰秀子)と東京からの転校生(清水美佐子)との友情物語。
宝塚少女歌劇のスター、葦原邦子が、生徒たちがあこがれる教師役で出演し、
劇中で美しい歌声を披露。

上映後、評論家の川本三郎氏と上倉庸敬大阪大学教授とのトークが行われた。
川本氏は、映画評について、テーマを大所高所から論じるよりも、
どこで映されたのか、といった細部が大事で、
小さな記憶を積み重ねていくのが大切とコメントされた。

「この作品の舞台の学校がどこかご存知の方ありませんか?」との問いに、
客席から、すっかりお年をめしたおばあさんが、
「私は、玉造にあるウヰルミナ女学校(現在の大阪女学院)の出身で、
当時、高峰秀子さんたちが、バスに乗って、大勢、こられたのをみました」と発言。
映画に登場する教会も、学院内のチャベルだが、戦災で消失してしまったとのこと。

ほかにも、生玉神社の北門や、大川の銀橋、信貴山ケーブルがうつっていた、とか
三味線、舞の稽古のシーンが大阪の大和屋の稽古にちがいない、という発言まで、
次々に映画のロケ場所が解き明かされ、川本さんも、ぜひ行ってみます、と顔をほころばせた。
古い作品は資料も少なく、いまのうちに撮影場所などを調べておくことはとても大切だと話された。
二人のトークのはずが、意外な展開で、映画的な発見の場に居合わせたようで楽しかった。

本作は、高峰と清水が親友になったものの、ちょっとしたことで大喧嘩。
口もきかなくなった間に、
高峰は、まるで「竹くらべ」の美登利のように、学校をやめて、芸者になるための稽古を始める。
そんな二人がまた仲直りするまでを描いている。原作は吉屋信子。

「少女」時代というのは、異性にまだ興味がわかず、
同性の友達と仲良くなり、親友になる。そして、同性の先生にあこがれる。

現代は、子供がすぐ大人になってしまい、少年少女が失われてしまったが、
本作の製作当時(昭和14年)は「少女」が輝いていた時代。

やがて大人になれば、失われてしまう、この「少女」のはかなさ、純粋さが、
転校生を演じる清水美佐子の、やせて、不安げな表情、存在から感じられ、
みごとに描かれていた、と川本さんは指摘された。

会場となった鶴見区民センターは400人くらいは収容できる大ホール。
新しくて、とてもきれい。区の図書館も併設されていた。
しかし、土曜、日曜とも、半分強の入りだったことが、なんとも残念。
来年は、ぜひもっとたくさんの人に訪れてほしい。
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