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別世界に入り込むこと

土曜日、久し振りに六甲山に登ってきた。
朝10時に友達と阪急岡本駅に待ち合わせ、
保久良神社、風吹岩、雨ケ峠を経て六甲山山頂までほぼ3時間。
さすがに暑かったが、
少し曇りぎみで、日差しはそれほどきつくもなく、
上の方に行くほど、涼しい風が吹いていた。
天気予報には猛暑日とあったが、
行ってみれば、なによりの登山びよりだった。

とはいえ、真夏とあって相当に暑く、
首に巻いたタオルは、あっという間にずぶ濡れ。
4本のタオルを山頂までとっかえひっかえ、
600mlのペットボトル2本も登りだけで、ちょうど空になった。
全部汗になってタオルとジャージに移って、
帰りの荷物はやっぱり同じ重さだねと友達と笑い合った。

真夏とあって、さすがに登っている人は多くはなかったが、
家族連れ、若いカップル、職場の同僚っぽいグループ(「課長」と呼んでるからわかる)
山ガールズ、高齢者のグループ、単独行と、
いろんな人たちが、思い思いのペースで登っている。

山頂手前の最後の七曲りが難所で、カーブのたびに急な登りが延々と続き、へとへとになった。
どうしてこんなにしんどい思いをして、登るのだろうと、
しんどそうに登っている人を横目に、自分も息を切らしながら思う。

でも、こういうしんどさは、嫌いではないとも思った。
小説家の村上春樹さんが、マラソンをして、身体を鍛えながら小説を書いているのと同じで、
どこかで、自分の身体を痛めつけないと、いいものは書けないような気が
勝手にしたりする。

登っている間は、友達とおしゃべりもするが、急な登りが続くと
お互い話す余裕もなくなり、黙々と、ただ登るのに必死になる。
しかし、一歩一歩に集中しているかといえば、それほどでもなく、
頭の中は、仕事のことやら、日々の雑事のことやらの間を迷走する。
そう簡単に、頭がまっしろになったり、達しきれるものでもない。 

でも、こうして別世界のようなところで、がむしゃらに、暑さとしんどさと格闘して、
また、元の世界に戻ってみると、
なんとかかなりそうと、少しは前向きな気持ちになっているから不思議である。

山まで行かなくても、
映画を観たり、
音楽を聴いたり、歌ったり、音楽を弾いたり、
違う世界、自分の好きな世界に没頭することで、
今の自分のもやもやした気持ちとも、距離が置けるようになる。
そうすることで、いつのまにか、気がついたら、
なんとかやっていけそう、と
前向きな気持ちが、心の中に座っていてくれて、
ちょっと感謝したい気持ちになる。

山登りの何よりのみやげは、感謝の思い。

七曲りを経てようやく一軒茶屋にたどりついて食べたかき氷。
ただの氷にレモンのシロップがかけただけのものが、
生き返るくらいに美味しく、一口ごとに感激する思いで食べた。

山では、すれちがう人みんなに、あいさつする。
杖をつきながら登る、背骨がすっかり丸くなったおじいさんから、
助け合いながら仲睦まじく登る若いアベック、
ずっとしゃべりながらすたすた歩く若い男の子二人連れ、かわいらしい山ガールズと、
誰でも彼でも、「こんにちわ~」とあいさつする。
から元気をふりしぼって、あいさつすることで、自分の中から元気が立ち返ってくる。
親子で来ていた、小さな男の子は、
上を向いて思い切り大きな声で、「こ・ん・に・ち・わ~」と叫ぶようにして挨拶を返してくれた。

最初の登りの頃、蝉の「ミーン、ミーン」という声が
なぜか、こどもが蝉の鳴き声をまねして言っている、人間の声のように聞こえて、
しかも、茶目っ気のある甥っ子の声にそっくりな気がして、おもしろく思った。
やかましく鳴いていた蝉や、鳥の声は、どれも話しかけられているように聞こえ、
暑さとしんどさの中、登っている間中、大いに励ましになった。

下りは、有馬温泉まで40分ほど。
赤錆びたような色の温泉はめずらしく、公衆浴場で汗を落とした後、
その向かいにある、カウンターバーみたいなところでビールを飲んだ。
ここのソーセージは、ドイツのっぽくて大変美味しく、
たくさんの登山客を愛想よくこなしながら、
丁寧にビールをサーバーからついでくれるお兄さんの働きぶりがすてきだった。
ハーフ&ハーフは、黒ビールを先に入れて、あとからふつうのビールを足すのだと発見。

どれもが、心地よい筋肉痛とともに、真夏の六甲の大切な思い出の一コマになった。

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