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No1348『車夫遊侠伝 喧嘩辰』~男と女の情が交錯する~

男と女のぶつかりあいの中で、
女が思いの丈を、はっきりと口にして、ぶつける姿がいい。
女も、負けじと、男の頬をひっぱ叩く。
意地と意地のぶつかりあい。
どちらも気風がよくて、たんかが気持ちよい。
それでいて、それとなく互いの気を察する心遣いもあり、
情と情とが交錯するさまの、ロマンチックなこと。
泣かせます。



本当にすばらしい映画(1964年)です。
大阪駅前で、人力車一台で、商売を始めようとする辰五郎は、
偶然、芸者の喜美奴を乗せることになる。
気の強い二人は、道中から言い合いになり、
「お荷物様ご一行さま」と札をつけた俺の車に乗った以上、
あんたは荷物だから、口をきいたら許さんと、
辰五郎は、渡辺橋の上で、
喜美奴を、車ごと、川の中へ投げ入れてしまう‥。
真っ逆さまに川に落ちていく喜美奴を見たとき、
辰五郎は恋に落ちた…。

タイトルに「喧嘩」とありますが、もう、これは、たまらない純愛映画。
いつのまにか惚れ合った二人が、なかなかひっつかない。
一度目は、男の意地、親分への義理だてで、花嫁を突き返す。
二度目は、女の方から、白い角隠しを男にたたき返す。
このときの、喜美奴を演じる桜町弘子さんが、絶品。
女が、どんな気持ちで、赤ん坊のように真っ白になって、
白無垢の花嫁衣裳に包まれて祝言にのぞむか、
あんたには、わかってへん、と思いの丈をぶちまける姿のかっこいいこと。

そんな二人に、まわりがやきもきする。
親分役の曽我廼家明蝶のきっぷのよさ。人情に泣ける。
男が妻に頭が上がらず、お妾さんを隠そうとする大人の事情も笑いを誘う。
親分の兄貴を演じた近衛十四郎もいい。
刑務所でおつとめして帰ってきた弟を一人で迎えに行き、
子どもの頃みたいに肩組んで歌いながら歩いていく姿には、元気をもらう。

加藤泰監督らしく、
横に長いシネスコ画面の中央奥で、親分らと辰五郎がやりとりしている、
その手前、画面の右隅で、喜美奴が、じっとその会話を聴いている。
自分のことが話題になっているのを、聞きながら、表情が動く。
長回しで、じっととらえられた表情のなんてすてきなこと。

女がとにかく元気があって、溌剌としていて、よくしゃべる。

加藤泰監督の映画は、東映やくざ映画と勘違いされがちですが、
女性を元気に、美しく、撮る監督さん。

3度目の祝言をあげる二人の姿は涙なしではみられません。 
橋の真ん中に立っている喜美奴を、
辰五郎の主観ショットでとらえたときの、二人の距離感に、ただもう涙です。 

ミヤコ蝶々さんが、有馬温泉のおかみさんの役でちょこっと出てきて、楽しいですし、
大阪に来たばかりの辰五郎が、
北から伏見町、平野町、淡路町‥と大阪の地名の覚え方を、
宿の女中さんに教えてもらうシーンは、印象深い。

9日の連休の中日、ほかに観たのは、名作『瞼の母』(1962年)。
浪花千栄子さんのごぜの三味線を弾いている長回し。
客が弾いてもらっている、後ろの方の広場を、忠太郎が気になりながら、
行ったり来たりしている様子がいい。

最後は、おっかさんが自分の名前を呼んでいる、
その声を耳にして、涙がこらえきれない忠太郎。
もう泣くしかありません。

『源氏九郎颯爽記 白狐二刀流』(1958年)
『炎の城』(1960年)と計5本。
終わって、近くで女友達と飲んだワインは美味でした♪
連休の3日目は、さすがに休憩で、余韻に浸って引きこもりでした。。。 

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