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No1394『何が彼女をそうさせたか』~柳下美恵さんのピアノ~

かなり前になりますが、書きかけのまま気になっていた映画について。
2016年10月27日の晩、
サイレント映画ピアニストの柳下美恵さんの演奏つきで、
無声映画の上映がありました。

仕事が終わってから、頑張って神戸芸術センターへ。
こじんまりとした講義室に、
とってもステキなグランドピアノと大きなスクリーン。

The International Academic Forum (IAFOR)主催のイベントで、
お客さんの多くが外国人。
終わってから、男性の外国人がブラボーと連発されたり、
質疑の時間も、amazing!!!fabulous!と
すごく感激して喜んでおられたのが印象的で、
私も同じ思いだったので、書き留めておきたかった作品です。

1930年(昭和5年)、鈴木重吉監督、高津慶子主演。
内容は、一人の女性の一代記で、かなり悲惨。
あらすじを簡単に書くと、
14歳のすみ子は、貧乏で親が自殺して、叔父に預けられるが、
曲馬団(サーカス)に売られてしまう。
サーカスにいた青年と恋仲になり、一緒に逃げ出すが、
事故で、離ればなれに。

女中やら、詐欺師の子分やら、職を転転としているうちに青年と再会、結婚。
しかし生活苦で、心中。すみ子だけが生き残る。
教会の施設に入れられるが、施設長の不正や考えに怒りのあまり、教会に放火。
燃え上がる教会から上がる炎と火の粉を背景に、
「何が彼女をさうさせたか。」の大きな字幕が写って終わる。

本作は、1992年にロシアでフィルムが発見されますが、
冒頭と、最後の放火の部分は、フィルムが残っておらず、
字幕で語られるだけです。
でも、柳下さんのピアノがすごすぎて、
映像はなかったのに、
上映後も、頭の中に、燃えさかる炎の中のすみ子さんの姿が見えるようで、
圧倒されました。

映画をまるでじゃませず、
でも、確実に映画の力をより増幅して心に届けてくれる柳下さんのピアノは、
全編通じて、本当にすばらしかったです。

あと、とても印象深いのは、
叔父さん夫婦のところに行くのに、途中で出会った荷車の老人。
空腹にたえかねたすみ子を、家に連れて行って、
ご飯を御馳走してくれる。そのときのご飯の美味しそうなこと。
そうしてまた、田んぼの中の一本道を行って、
分かれ道で、別れるシーンを
とても情緒たっぷりに描いていて、
この老人の優しさがなんとも自然で、忘れられません。


叔父さん夫婦は欲深く、人をだまして、搾取するような嫌な人物ばかり登場しますが、
すみ子もたまに怒りを爆発させたりする姿が、なんともかわいくもありました。

サーカスを抜け出して、恋仲の二人が、ばらばらになってしまうくだりも
テンポよく描かれていて、アメリカのサイレント映画のよう。

社会主義思想に影響を受けた「傾向映画」の代表作で、
いわゆるプロパガンダ映画なので、タイトルは有名でも、敬遠していましたが、
最後の、火事になるところのピアノがドラマチックで、これは忘れたくないなと、
ご紹介したしだいです。



興味を持たれた方は、
ぜひ、映画のシーン等についても詳細に紹介されたブログ「一夜一話」をご覧ください。
(ご飯の写真は、こちらから引用させていただきました。すみません。ありがとうございます)
こちら

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