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No1418『きみの鳥はうたえる』~夜明けの函館の街の空気が、恋の痛さとともに伝わる~

今年は、映画を観ようと思いながらも
やらなきゃいけないこと、
気になっていることがあると、
仕事終わりで、なかなか映画館へ足が向かない。

若い時は、何本でも続けて映画を観れたし、
次から次へと吸収しようとしていたけれど、
いまは、気になる本があったら、じっくり浸ったり、
余韻に浸ることが多くなり、
何がなんでも、映画を観ておかなければという気持ちが、
すっかり弱くなった気がする。

さりとて、家に帰って、何かできているかというと、
ピアノの練習もさぼりがちで、何もできていない。
なぜか料理だけは、せっせとしていて、
弁当なんていう代物を、時々つくったり、
私の人生にあるまじきこともしている(笑)。

この映画は、いい映画と評判なのに、
昨年、見損ねて、気になっていた。
シネ・ヌーヴォXで、リバイバル上映があると知り、
2月初め、
今年は映画をいっぱい観るんだ、と張り切って出かけて、
落ち込んで、帰ってきた一本(笑)。

へこんでいる時に限って、
観にいった映画が恋愛映画って、
どういうことよと自分につっこんだり(笑)、
この映画を観終わった後の
苦々しくてつらい気分は、今でも記憶に生々しい。

それだけリアルで、
生き生きした情感が伝わる映画だったのかもしれない。

三角関係のはなし。
石橋静河が演じるさちこは、柄本佑と恋に落ちる。
でも、柄本のルームメイトの染谷将太とも仲良くなり、
3人は微妙な関係に…。

恋に落ちた二人は、何をやっていても楽しい
というのがよく伝わった。

柄本佑は、ちゃらんぽらんで、投げやりに生きている感じで、
誠実さなんて持っているのか、つかみかねる性格。
さちこのことも、どこまで本気で好きなのかわからない。

そんな彼が、最後に数を数えるシーンがたまらない。
じっと数を数えて、さちこが戻ってくるかどうか、待つ。
でも、待てなくなる…。
初めて自分から動く。
駆け出して、さちこの後を追って、自分の気持ちを打ち明ける…。
結果は、観客の心に委ねられる。

自分の感情に素直に動けるのはすてきで、
若さの特権かもしれない。

最後の方で、本屋の店長と、いけすかない店員との
中年コンビが、飲み明かして、
夜明けに一緒に帰るシーンが入る。

店員は飲みすぎで吐いたりしながら、謝っていて、
店長がなだめている。
全然かっこよくないし、
なんでこの二人を映すのかなと思ったのをよく覚えている。

それぞれの世代に、それぞれのドラマがある
ということなのかもしれない。

夜明けの函館の街の空気感がよく伝わった。

石橋静河は、これから間違いなく伸びていく女優さんのひとり。
三宅唱監督も、これから活躍が期待できる若手監督。
予告編→https://www.youtube.com/watch?v=m_nZooXadp8

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