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No1467『わたしの叔父さん』~日常の営みの愛おしさ~

今年観た、最初の新作映画。
デンマークの作品。

叔父さんといえば、
フランスのジャック・タチ監督の
『ぼくの叔父さん』という有名な映画があるが、
本作は、27歳の女性クリスと
足が不自由な叔父さんの話。

クリスは、子どもの頃に親を失い、
叔父さんに引き取られ、
高校を卒業して獣医の学校に行こうとしていた時に、
叔父さんが倒れ、
農場や乳牛の世話を手伝うことになる。

映画は、
クリスが朝早く起きて、身支度をし、
おじさんを起こし、服を着るのを手伝い、
朝食を準備して、一緒に食べ、
牛の世話をするところから始まる。

クリスに想いを寄せる青年が登場し、
おじさんが倒れて入院し、また退院する。

クリスがどういう将来を選ぶのか、
映画は、何も示すことなく、
唐突に終わる。
少し意外な気がした。

もやもやした思いを抱きながら、
家に帰って、自分の日常に戻る。

ご飯をつくって、食べて、
あれこれやって、
お風呂に入って、ぼんやりしているときに、
映画が腑に落ちた。

日常とは、
毎日の営みとは、こういうものだと。

映画の中の彼らと同じように、
自分自身の日常に戻ってみて、
なんとなく、映画が描きたかったことがわかったような気がした。

そう思うと、
映画が、とても愛おしくなってきて、
別にクリスがどういう選択をするのかは、
観客の想像に委ねられているだけで、
十分だと思えてきた。

日常は、淡々と、続いていく。
その毎日の営み。
朝、ニュースを聞きながら、
パンを焼いて、ジャムをぬる。
その繰り返し。

広々とした農場。
草地が延々と続く中、
クリスと青年と叔父さんがぽつんと立っている姿を
超ロングシルエットで、とらえたショットが
印象的だった。
人生も、きっと、そんなふうに
延々と続いていくもの。

そんな中にも、ところどころユーモアもあって、
髪の毛にかかるエピソードが微笑ましくて好き。

大阪では、昨日から公開。
テアトル梅田の小さいほうのスクリーンは、
全席の7割くらいもお客さんが入っていて、びっくり。

地味な映画だから、すいていると思っていたが、
調べたら、東京国際映画祭で観客賞をとった作品だからか。

緊急宣言のせいで、
レイトショーもなく、夜は6時頃の上映が最後なので、
平日は仕事帰りに観に行けない人が多いから、
よけいに休日は混んでいるよう。

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