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第5回神戸ドキュメンタリー映画祭開幕!

画面の中、向き合って座っているダンサーの女の子二人。
言葉もなく、沈黙の時間が流れる。
じっと座っている彼女を正面からとらえた映像から、
ものすごくダンスを感じた。
身体の中から今にも何かが出てきそうな予感、
既に、身体の中には、うごめくものがあって、
すごくダンスしていそうにみえる。
じっとして、動いてないのに、すごくダンスを感じたのは
なぜだろう。

18日(金)の夜、神戸ドキュメンタリー映画祭のオープニング公演とパーティが
神戸、新長田であった。
「神戸在住の映画監督・濱口竜介と、
DANCE BOXの育成プログラム「国内ダンス留学@神戸」によるコラボレーション」の
新作映画『Dance for Nothing』(2013/27分/HD)の上映があると聞いて
職場をほぼ定時でとびだし、一路神戸へ。
頑張って行ったかいがありました。

女の子が少し涙をためた顔のアップで始まる。
一体、どんな映画になるのやら、
濱口監督のことだから、ダンスのワークショップや練習シーンだけでは
終わらないだろうと思っていたが、
想像以上に、街のシーンや、いろんなシーンがあって、
おもしろかった。

商店街を行き交う人たち、
小さな広場のような一角で子どもたちが遊んでいる長回しのシーン、
新長田の高架を走っていくJRの電車、
ビルの透明なガラスの自動ドア(ダンサーたちの練習会場のあるビルの1階)、
商店街にある風向計…などなど、
ダンスと関係なさそうに思えるものが、
どこか、ダンスを感じさせるように見えてくるから、おもしろい。
ダンスの可能性、ダンスの息遣いといったらいいのか。
なにかうごめいているのだ。

普段、何げなくみる風景のあちこちに、
ダンスしている瞬間がいっぱいありそうだとわかってくる。

若いダンサーたちが、厳しい女性指導者に教えられ、
汗まみれになって踊る姿(コンテンポラリーダンス?)。
すごいなあとみとれているうちに、今度は、
ダンサー同士のインタビューが始まる。
二人ずつ向き合って、いろんなことを質問して、それに答えていく。
濱口監督の『なみのおと』の対話を思い出す。

そのうち、映っている映像と、聞こえてくる声とが、微妙にずれてきて、
映っている人とは、違う人がしゃべっている声が聞こえてきたり、
ずれ具合がおもしろい。

何組か続き、男女のダンサーが向き合って質問しあう。
男性ダンサーが、女性ダンサーに対し、
自分に無理してしゃべりすぎだと言う。
女性は、そんなことはないと、しゃべり始めるが、
彼女のはきはきした声が、とてもすてきだった。
いわゆる、彼女の「いい声」「生き生きした声」「ダンスしてる声」
という感じがした。

そうして、最後の方で、
今度は、女性ダンサー二人が向き合って座っている。
互いに、なぜか黙ってしまい、言葉がでてこない。
でも、冒頭に書いたように、
その無言の彼女の身体に、すごくダンスを感じた。

ただ、座っているだけなのだけれど、
彼女が息をしてカメラの前にいる、向き合って、今にも何か出そうとしている
その身体がダンスしているようで、すごいと思った。
それまで、いろんな二人の対話を見てきたからこそ、感じられたような気もする。

長い沈黙を経て、彼女は、やおら
「踊るね」みたいなことを、ぼそりと言って、手のダンスを始める。
この手のダンスがまたすごくて、ひきこまれた。

「結局手だけのダンスで終わっちゃったね」
とにっこり笑う笑顔も最高で、
静けさから、
いきなり、駅の階段を駆け上がるダンサーたちの姿に切り替わる。
電車に飛び乗ろうとして走っていくのも、ダンスだなとみとれる。
電車に乗れた子たちと、乗り損ねた子。
カメラは、車内から乗れた子を撮り、窓の向こう、列車の外で、遅れた子が手を振っているのを
とらえる。

次に、切り返しのようにして、
乗り損ねた女の子が、ホームから過ぎ去る電車を見送る姿を、外から撮ったショットが入る。
電車の音、街の息遣いもまたダンス。
濱口監督の『親密さ』を思い出す、嬉しい瞬間。

無音の時間と、音楽をバックに踊る時間との交錯具合いが、絶妙で、
音のない空間が、くっきりと浮かび上がり、そこに何かを感じる。

濱口監督は、
「僕の感じるダンスを映像にしました。
そもそも最初は、ダンスを映像におさめられるかどうか疑問だったけれど、
『うたうひと』という民話を語るおばあちゃんを映した自作の映画を
ダンスをやっている人が観て、
このおばあちゃんダンスしてるね、と言われ、
こういうダンスなら撮れるような気がしました」
といったことを挨拶で話してくださった。

映画の上映後、ちょっとした食べ物(そばめしなど長田B級グルメ)と
ビールなどでお腹を満たしたあと、
映画に映っていた「国内ダンス留学@神戸」の若きダンサーたちによるパフォーマンスがあった。

舞台に立つのは男女5人。
一斉に現れ、舞台のあちこちに位置して、順番にひとりずつ踊り出す。

この映画から受けたもののリアクションとして披露された踊りは、
どれも、個性的で、すばらしかった。
影をつかった演出や、光をつかった演出もあり、
踊った後、ひとりひとりのコメントもすばらしかった。

普段、ダンスなんて、見たことがなかったが、
こうしてじかに見ることのすごさを、全身で感じた。

小さい子、きゃしゃな子、太目な子から、体型もさまざまで、
踊りも皆、全然ちがう。エネルギッシュで、アクティブ。

身体の一部だけでなく体中が燃えているような踊りをしたい、
心というより、身体が踊りたいというのを表したい、
身体の中で何かうごめいているようなものを踊りたい、とか
ダンサーの方々が、皆、この映画を繰り返し観て、感じたことを
自分なりに踊りにして披露し、
最後に、簡単な言葉にして話してくれた。

気恥ずかしくて、メモをとらなかったのですが、
覚えられると思っていたのに、既に記憶は曖昧ですみません。
言葉はかなり脚色しているかもしれませんが、
こんな感じの、とても充実した
普段みたことのない、まるで違うダンスの世界、
でも、どこかなつかしいような、身近にも思える世界に
足を踏み入れた、とてもすてきな時間でした。

ぜひ、明日から始まる神戸映画ドキュメンタリー映画祭に
足を運んでみてください。

余談ですが、慌て者で愚かな私は、
これから週末ごとに神戸通いが始まると、勇んで、
先日、JRの大阪ー三宮の回数券を買ったのですが、
昼得を買うつもりが、すっかり忘れていて、普通の切符の回数券を買ってしまいました。
これじゃあ、全然得にならないと、ショックを受けたところですが、
皆様、回数券を買われるなら、間違わないよう気をつけてください。 

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