映画の感想をざっくばらんに、パラパラ読めるよう綴っています。最近は映画だけでなく音楽などなど、心に印象に残ったことも。
パラパラ映画手帖
ごつごつした歌の礫(つぶて)が心に飛び込んできた…~弾き語り~
あんぱんまんが自分の顔をちぎって、子どもにパンを分け与えたように、
今日、弾き語りで聴いたannさんの歌は
心をちぎって、礫(つぶて)にして、観客の心に投げかけてきたような
そんな気がした。
ごつごつしたその固まりの感触は、生きることの“ごつごつ”した感じに似ていて、
心にリアルに響く。
生きることは楽しいことばかりじゃなくて、辛いことも多いけれど、
笑顔を忘れないで、
今、このときを精一杯楽しんで、忘れられない時間にしたい、
そんなannさんの思いがストレートに客席に伝わってきた。
先日の「まりなっち&MITUNA生誕祭ライヴ」で
すっかりひきこまれた「あんどりいらんど。」。
ボーカリストannさんの弾き語りのライヴがあると知り、
ピコピコのエレクトロサウンドをバックにはじけるannさんが、
生演奏で、ひとり、ピアノを前に、どんな世界を繰り広げられるのか。
昨晩、神戸で若い人たちのダンスを生で観て、
こういう機会は大切にしたいと、
初めて梅田のALWYASというライブハウスに足を運んだ。
重い扉を開けると、クラシックやジャズもできそうな、本格的なライブハウス。
テーブルと机が細長い会場に整然と並んでいて、
じっくり演奏を聴いて楽しむ感じ。
ちょうどシンセのピアノの音とバイオリンをバックに女性が歌っていた。
生の演奏で音楽を聴く感覚は、
最近、観たジョン・フォード監督の『若き日のリンカーン』のラスト、
リンカーンが、初めての裁判での弁護を無事に終えて、
ゆっくりとひとり丘を上がっていく感じに似ている気がした。
知らない人たちにまざって心細さを抱えながら、
ひとり初めての音楽に身を浸す感覚が、
ゆっくりと一人で人生を歩んでいくことに似ているような…。
錯覚かもしれませんが。
続いて、グランドピアノの前に座ったannさん。
パワフルで、本当に表情豊かな声が気持ちよく伸びて、
ピアノの演奏も力強く、annさんの世界が広がっていた。
歌魂というか、歌に込められた思いが、心にまっすぐとびこんできて、
聴いた時の身体の感触、インパクトが強く、今も何か残っている。
他の歌い手さんたちが、
CMでも流れた有名な洋楽や、ゆーみん、MISIA、宇多田ひかると、
聴き慣れた曲が多い中で、
annさんのオリジナル曲は、よそいきでなく、
普段、日常の心象風景。
すごく身近な感じがした。
普段うまく言葉にできない思いを、歌詞にのせて歌い上げる。
「うん」、「そうそう」、「そんな感じ」と心の中で小さくうなずきながら、
しんみりと、楽しく聴く。
私自身の影、普段見ないふりしてた思い、影の部分も
気づかせてくれて、ちゃんとがんばらなきゃ…と思う。
好みではないけどイケメンの美容師さんに髪を切ってもらった時に
思い浮かんだことを、即興で歌にした曲も、とってもチャーミング。
ときめきがリアルに迫ってきた。
「ねえ、ねえ」といった短い呼びかけ(Fコードで完全5度下がる??)、
かろやかさ、しなやかさが楽しい。
最後の曲。
うれしい、
さびしい、悲しいといった短い感情を表す言葉を
リフレインするサビ(?)の直前、数秒、一呼吸の間が、
とても印象的で、思わず息を飲んだ。
昨晩の映画で、ダンスをしていなくても、ダンスを感じたように、
歌っていない瞬間にも、歌を感じる、そういう感じ。
音のない瞬間にも、思いが詰まってる。
「今日のひととき、何か残して帰ってほしい」というannさんの思い、
今、この時間を、とても大切に、心から楽しんで歌いたい気持ちが
声になって、音になって、丁寧に届けられたような気がして、
聴いている私もとても居心地がよかった。
「あんどりいらんど。」とは違う世界。
でも、歌詞を書いているのは、同じannさん。
さびしい思い、かなしい思いをいっぱい抱えながらも
元気に、強気に、しっかり前を向いて、笑顔で立ち向かっていこうとする
ハートフルで、けなげな女の子。
「あんどりいらんど。」の世界とも、
どこか地中深くでつながっているような水脈を感じた。
初めてとは思えない、堂々とした弾き語りで、すてきでした。
歌っておもしろい。
つくり手その人が感じたときめき、世界の感じ方が、歌になって広がる。
そこに触れる、出会うのは、とても新鮮ですてきなこと。
次が楽しみです。
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