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No720-3『果てなき船路』~群像劇のおもしろさ~

観ても観ても、観たことを忘れる映画がある。本作もそう。

リュミエールのビデオで観た。
原題は「The Long Voyage Home」1940年。
出だしから、いきなり暗い。
画面も暗ければ、バストショットで映し出される男も女も、ものゆげで、どこか遠くを見ている。
聞こえてくるのは、南国の踊りの歌。

男たちは、舟べりにもたれ、煙草を吸ったり、どよーんとした面持ち。
南の島のふうの女たちは、やたら色気がある。
女たちと男たちの関係もよくわからぬまま、これは一体、どんな映画なんだろうと思う。

船員の一人を演じるワード・ボンドがぽわーんと、煙を輪っかにして出すのを観て、
「あ、この映画観たことがある」と思い出す。

とりわけ印象深いのがラスト。
船員の仲間たちが、ロンドンで船を降りてからのくだり。

ジョン・ウェイン演じる若者オルセンを、故郷のスウェーデン行きの船に送り届けるんだ、
それまでは飲まないと言って、
がやがや騒ぎながら、真っ暗な街を歩いていくときの路面や街の感じ。

船員をこきつかうことで知られる貨物船が同じ港に停泊していて、
船員を一人ほしがっていて、ポン引きの男と、目と目で、指で一人と示して合図をする。
男は、船員たちに、いいバーがあるよ、とやたら声をかける。

この人買いの怖さ。
ここからは、優しくて気のよいオルセンが無事に母親に会いに帰れるかどうか、
ドキドキしながら画面に見入る。

切符を買ったからもう大丈夫だ、別れの酒にと、
結局、男の誘うバーに入ってしまう。
そのとき、船員たちの故郷アイルランドの歌を歌って踊って大騒ぎしたり、
ワイングラスみたいなので、ビールを飲んでいたりする姿は、
ハラハラしながらだけど、楽しそうでいい。

別の部屋で、娼婦のような女が、船の時間を気にして帰ろうとするオルセンを、やたらひきとめる。
注文したジンジャービールに眠り薬を入れられ、倒れて船へとこっそり運ばれてしまう。
あとで、女もしくしく、カウンターで泣いている。
ここから最後までは、もう一気で、ラストシーンの美しさ。

ジョン・ウェインが出ていて、監督ジョン・フォードとくれば、
『黄色いリボン』のような明るい西部劇のイメージがあるが、
本作は、内容も暗い。
タイトルどおり、いわば、戦争下、弾薬を運ぶことになる貨物船に乗った船員たちの話で、
命を危険にさらして働く世界。

この暗い世界で、グレッグ・トーランドのカメラが、ぎりぎりと輝く。
マストの影が、甲板にねそべったジョン・ウェインの上を横切っていくシーンの美しさといったら。 

そして、男たちの群像劇はやっぱりいい。
仲間たちの絆が、心にほっこり光を灯す。

暗いけど、いい映画だったなあと思って、感想をまとめて、
自分のブログで検索したら、過去2回も感想を掲載していた映画でした、、、
何回観ても、はまるツボは同じのようです。
※2011年4月の感想→こちら
 2013年9月の感想→こちら

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