映画の感想をざっくばらんに、パラパラ読めるよう綴っています。最近は映画だけでなく音楽などなど、心に印象に残ったことも。
パラパラ映画手帖
No1392『奥様は魔女』1942年~テンポのよいスクリューボール・コメディの絶品~

尊敬する山田宏一さんという映画評論家が
「映画的な、あまりに映画的なマキノ雅弘の世界」という本の前書きに
こんなふうに書いておられます。
「映画を映画的に、映画の言葉で語れぬものか」
マキノ雅弘監督の映画(特に次郎長三国志(1952~54年)シリーズ)を観たことがある方なら、
ユーモアにあふれた、軽妙な語り口、
余計な説明はなし、省略が効いたテンポよい展開、
情感をくすぐる美しい映像と、
思い出すだけで、楽しさがよみがえってくるでしょう。
そんな映画のような言葉が書けたら。。。
『奥様は魔女』(I Married a Witch1942年)は、そんなマキノの映画を彷彿させる一本です。
知人からビデオ(リュミエールシリーズ)を数本借りていて、
1時間26分と一番短いから、選んだところ、
こんなにおもしろいとは思いませんでした。
監督はルネ・クレール。フランス映画の巨匠。
ナチ政権下、アメリカに渡ってハリウッドでつくった映画。
タイトルからしてホームドラマと思いきや、
魔女と結婚するまでの展開するまでがメインの、
映画らしく、粋でテンポのよい、スクリューボール・コメディ。
「傷だらけの映画史」(蓮見重彦氏と山田宏一氏の対談集によれば、
“アメリカ喜劇”の四天王の一人、プレストン・スタージェスがプロデューサーの一人として
関わっているそう。(ネット情報では、製作はルネ・クレールとなっていますが。)
魔女が、密告されて火あぶりにされた恨みに、ウォーリー家に呪いをかける。
その呪いが、代々、不幸な結婚をするというのがユニーク。
夫たちは、代々、ヒステリックな妻たちにさいなまれ、、、現代へ・・・。
知事選に出馬した政治家ウォーリーが、新聞社の娘と政略結婚する前夜、
魔女ジェニファーと父ダニエルが封印されていた樹の根に雷が落ちる。
封印は溶け、二人は、煙となって、自由の身となる。
二人が、煙のまま会話をしながら、街を眺めていくときの会話が楽しい。
とうもろこし畑がないのにびっくりして、290年も経ったから当たり前、とか、
パーティの窓から人間たちを眺め、キスしている男女がいれば、
290年経っても変わらないのねとささやく。
窓から、飲み物の瓶の中にそれぞれ入り込み、瓶同士が会話する。
魔女の父が入った瓶が酒瓶で、酔っぱらったり。。。
この瓶が、最後への伏線ともなる。
ジェニファーが、火事で見つけた、人間の身体は、金髪の超美人。
演じるのは、ヴェロニカ・レイク。
姿は人間でも、自分の身体にまだなじんでいない感じで、
階段の手すりを滑りおりたり、少し、とぼけた天然キャラが可愛らしい。
魔女の癖に、間違えて、ウォーリーに飲ませるつもりのほれ薬を、自分が飲んでしまう。
そのことに気が付いて、あら大変、失敗しちゃった!という感じもいい。
ウォーリーの婚約者が、ジェニファーに嫉妬して、という三角関係の描き方もドラマを盛り上げる。
婚約者との結婚式では、いきなり突風が吹いて、
おばさん歌手が、「愛は永遠に・・」みたいな歌を何度も繰り返して歌ってる面前で、
まさに結婚式は、かき乱され、大騒動で、婚約者は帰ってしまう。
大騒ぎをいかに楽しく撮るかも、映画の妙味で、このシーンも傑作。
最後は、ほうきに乗って遊ぶ少女の姿で終わる。
観るものの心を、ユーモアで、映画の世界に溶け込ませ、
まるで、ウイスキーを飲んで、心も身体もほっこりあたたまったような気持ちにしてくれる。
ぜひお薦めです!
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