日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

コーチングとは

2010-05-20 | 経営
コーチを雇っての週一電話コーチングに加えて、年に1回コーチング合宿に参加しています。今年は今週末実施です。

コーチングって何か?結構世の中では誤解があるようなので、少しお話をしておきます。コーチングの正しい訳語が見当たらないがため日本では正確な理解がなされていないように思います。コーチというとスポーツのコーチを思い出させますが、いわゆる私が活用しているコーチングはこのコーチとは少し類が違うように思います。「コーチ」に相対する言葉があるとすれば「ティーチ」がそれかもしれません。「ティーチ」は学校の先生がその代表であるように「教える」がその中身であるように思います。それに対して「コーチ」の仕事は「教える」ことではありません。では何をするのか?簡単に言うと「気づきを与える」という役目であるように思うのです。スポーツの「コーチ」は大抵、「ティーチ」と「コーチ」の両方であるように思います。「コーチ」自身は過去にたいした選手実績がなくとも名「コーチ」と言われる人がいますが、これは「コーチ」的要素のより強い人かもしれません。

コーチングを始めた頃にいろいろ見聞きする中で、おもしろい説明に出会ったのは「その人に一番詳しいのはその人自身であって、その人の内面にある潜在能力を引き出すのはその人が一番上手にできるはず。コーチはその引き出す作業のキッカケづくりをするのに過ぎない」というお話でした。コーチングを受けるまでは十分その意味が分からなかったのですが、やっていく中で「なるほど」と思わせられる経験が続々出てくるようになりました。自分がコーチングを受けながら、テーマに関して質問を受けたり自発的に思考を巡らせたりしていろいろな事を話すと、自分の言葉が自分の耳から入ることで新たな“気づき”が与えられて次なる発想や展開につながっていく・・・。そんな流れがコーチングの実態であるように思うのです。その意味では「コーチ」は「プロの聞き手」であるのです。

この流れの中で一番大切なことはどこかというと、「自分の言葉が自分の耳に入る」という点にあるように思います。そこには「自身の思考の“見える化”」があるように思うのです。“見える化”というには「音」なので正確には見えていないのですが、「音声による“見える化”」な訳です(“聞こえる化”ではないんです。この微妙なニュアンス、未経験者には分かりにくいのですが・・・)。多くの成功した経営者がその秘訣として、「目標や進むべく道を字にして“見える化”をはかることが成功への近道である」と口にしていますが、このこととかなり近しい関係にあるのが、この「音声による“見える化”」であると思えるのです。もちろん、言葉として口に出した考えをその場で書き留めておくこともコーチングの効果をより一層充実させる手立てででもあるので、コーチングは広い意味での“見える化”に相違ないのです。

結局人間、いろいろなことを脳内で考えるのですが、脳の中だけでの作業容量にはやはり限界がある訳で、それをまず音として外に発することで違う形での脳内情報の活性化ができ、さらに耳から音情報が入ることで違う情報がまた脳内に発生し、それが外に出ることでまた活性化される・・・。またその音で発せられた段階で今度は文字情報として転換されることで新たな活性化を産む。その繰り返し作用が一個の人間の思考力を高めていくことになるのではないかと思うのです。経営者がコンサルタントを雇う場合、定例訪問時にコンサルタントの話を聞くのではなく毎度ほとんどの時間を自身が話すことに費やす人がたまにいます。そして「今日もありがとう。とてもいい整理が出来たよ」と喜んでもらいます。これ実は無意識のコーチング効果であるのです。このケースは大抵とても優秀な経営者で、自身の経験の中から動物的カンで自己を活性化させる術を心得ている訳です。当然このようなケースでのコンサルタントの役割は、「よい聞き手になること」「よい質問の出し手に徹すること」になります。ビジネス・コーチングでは、そのコーチを受ける人の専門領域を知らなくとも問題なくコーチングが出来るのですが、それはまさにプロの「コーチ」が「気づきを与える良い聞き手」であるからなのです。

このようにコーチングは経営者の活性化にも大いに役立つ道具であって、コンサルタントにとってもその基本を知っていることはとても重要なスキルになるのです。一時期のコーチング・ブームもあって今世間には「コーチング」を語るビジネスはたくさんあるのですが、けっこうマガイモノが多いのも事実です。本物とマガイモノを見分けるコツですが、「コーチング」の看板を掲げていながらその実「ティーチング」になっていないか、その点が一番分かりやすい見極め点であると思います。コーチングのお話、また改めてさせてもらいます。

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