日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「70年代洋楽ロードの歩き方21」~パワーポップ4

2010-09-05 | 洋楽
パワーポップはその源のひとつがポール・マッカートニーであるが故、各所で彼の影響は見て取るができます。

ソロ・シンガー系では、まずギルバート・オサリバン(写真)。ビートルズ解散後、ポールが出す作品がことごとく批判の的になっていた絶不調期に、ポールの代わりを務めるがごとく「アローン・アゲイン」でシーンに登場。ポールをして、「僕の後を継ぐミュージシャン」と言わしめた“本家”公認のパワーポップ・アーティストです。彼には同時期のアメリカ発のシンガーソングライター・ブームのアーティストたちとはちょっと違った味わいがありました。「ゲット・ダウン」「愛のジェット便」などはパワーも十分。多少バブルガムっぽいムードも漂わせた作風は、確実にパワーポップ的であると言えるでしょう(特に「愛のジェット便」は日本でチョイ売れしましたが、実にB級でそれっぽいです)。

次にソロ・アーティストで特筆すべきはトッド・ラングレンです。彼はアメリカ人ですが、ビートルズに対する半端ない傾倒ぶりはつとに有名であり、ユートピア名義で全編ビートルズのパロディ・アルバム「ディフェイス・ザ・ミュージック」(これもある意味すごい才能を感じさせます)を作ってしまうほどの入れ込みは異常とも言えるほど。彼の余りある音楽的才能にポールからの影響が付加されれば、当然の如く極上のパワーポップのひとつやふたついとも簡単に作り出してしまうのです。その代表作が2枚組名作アルバム「サムシング・エニシング」。代表曲「アイ・ソー・ザ・ライト」「ハロー・イッツ・ミー」などをはじめ、彼のパワーポップ的一面を最大限に表現した作品であると言えそうです。

英国系のポール・フリークとして忘れてならないのが、ニック・ロウ。彼はルックスもどことなくポールに近いモノがあり、パワーポップ系の作品をデビュー以来常に一定量リリースしているように思います。彼最大のヒット曲「クルー・トゥビー・カインド」は、その代表ナンバーと言えるでしょう。また彼はプロデューサーとしても活躍しており、中でも特筆すべきは、尖りきっていたエルビス・コステロにパワーポップ的要素を加えることで、新時代の幕開けを演出した功績であろうと思います。コステロの「オリバーズ・アーミー」(アレンジはアバのパロディ)などはどこから聞いてもパワーポップ的です。(余談ですが、ロウとコステロはビートルズもカバーした「ベイビー・イッツ・ユー」をレコーディングしています。役回りはコステロがジョンで、やはりロウはポールです。また、ポール自身が80年代にコステロを“仮想ジョン”的共作相手として共演してもいますから、ニック・ロウはかなりポール的であると言えるのではないでしょうか)

もうひとり意外なことろでは、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(以下CSN&Y)のグラハム・ナッシュ。彼の長いキャリアの中で際立つ代表曲、CWSN&Yのアルバム「デ・ジャブ」収録の「ティーチ・ユア・チルドレン」と「僕らの家」。この2曲は演奏こそアメリカ的であるものの、曲はかなりパワー・ポップ的であると思います(いささかパワー不足な点がパワーポップと言うにはややモノ足りませんが…)。グラハム・ナッシュの60年代は英国のバンド、ホリーズのメンバーであり、アメリカ出身であるCSN&Yの他の3人とは音楽性で確実に一線を隔しているのです。その経歴を考えれば、ポールから直接音楽的影響を受けていて何の不思議もありません。この辺の影響系譜を見るにつけ、パワーポップはやはり60年代英国音楽の流れを汲んだ70年代の音楽文化であると言えると思うのです。

CSN&Yがらみという事で言えば、デビュー当時は“第二CSN&Y”と言われたグループ、アメリカにもパワーポップの香りがしています(こちらもややパワーが足りませんが…)。実は彼らはアメリカ人でありながら英国育ちで、デビューもイギリスでした。しかも彼ら一番のパワーポップ的創作期は、ポールとは縁の深いあのジョージ・マーチンがプロデュースをしたアルバム「ホリディ」「ハート」の時代なのです。同時期のヒット曲「ロンリー・ピープル」「金色の髪の少女」などは、堂々たるパワーポップであると思います。なお、ジョージ・マーチンは米国産のパワーポップ・バンド、チープ・トリックのプロデュースも手掛けており、パワーポップ陰の仕掛け人であると言ってもいいのかもしれません。

<70年代洋楽ロードの正しい歩き方~パワーポップ4>
★パワーポップを正しく知るアルバム★
今回は参考程度にタイトルのみです。全編パワーポップではないものも含みますのでご注意願います。
①「ザ・ベスト・オブ・ギルバート・オサリバン」
②「サムシング・エニシング/トッド・ラングレン」
③「ディフェイス・ザ・ミュージック/ユートピア」
④「ザ・ベスト・オブ・ニック・ロウ」
⑤「ザ・ベスト・オブ・エルビス・コステロ&ジ・アトラクションズ」
⑥「デ・ジャブ/クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング」
⑦「ヒストリー~グレイテスト・ヒッツ/アメリカ」

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1 コメント

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ニックロウ大好きです (koedo)
2010-09-07 23:29:03
スマッシュ企画の日本のライブにも行きました。70年代洋楽世代なので、シリーズ楽しみです。ブリンズリー・シュワルツも良く聞いてました。
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