日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ロンドン五輪“残念組”の敗因に学んでみる

2012-08-15 | 経営
ロンドン五輪が終わり、メディアではメダリストたちの凱旋帰国インタビュー等が連日取り上げられています。いつも思うことですが、なんともさみしいのは、開会前には期待感を持って複数のメディアに取り上げられながらメダルを逃した“有力選手”たち。敗れた時点ではともかく、大会終了後は全く触れられることもなく、当然敗因分析されることもなく、何事もなかったかのように黙殺されてしまうのです。あえて、そのメダルを逃した“残念組”の敗因を勝手分析し、他山の石的に役立てさせていただきましょう。


★潮田玲子(バドミントン混合ダブルス)
試合前日に「大切な君へ」と題した恋人宛のメッセージを、公式ブログに載せたと言うことが話題をさらいました。結果は予選敗退。そりゃダメでしょ。本人同士で電話なりメールなりで励まし合うことは結構なことですが、公式ブログでオノロケなのか交際宣言なのか知りませんが、少なくとも本番に向けたテンションが違う方向に向かってしまっているわけですから。思わず、競馬の世界で牝馬によくある、本命と目された馬がレース直前に“フケ(発情)”の症状が出てレースに集中できずに惨敗するっていうアレを思い出しました。

馬の話を引き合いに出して本人には申し訳ありませんが、人間とて動物。緊張感が高まる中で、通常は集中力を高めることでそれを乗り越えて行くものなのですが、動物の雌の本性として繁殖期(適齢期?)を迎えた女性が緊張を乗り越える手段として雄に対する依存心によって安心感を得て、緊張を別の形で消し去ってしまうのでしょうか。集中力高揚と言う点においては全くの逆効果です。この時点で彼女のオリンピックは終わっていたということなのでしょう。女性ばかりでなく、例えばビジネスにおいて重要プレゼン等を前に気合が乗るどころか、どこかに救いや逃げ道を求めたくなっているスタッフがいたなら、そのプロジェクトからは外すべきということなのです。


★浜口京子(女子レスリング)
ご存じアニマル浜口氏の娘として、3回目のオリンピック出場。アテネ銅、北京銅で今回こそ悲願の金を、と期待されましたが、結果は1回戦負け。同じ父娘コンビで、アテネ10位、北京6位から今回銀メダルを獲得した女子ウエイトリフティングの三宅義行、宏実親子とは全く正反対の結果となりました。同じ競技でオリンピック銅メダルという確固たる実績がある父の指導の下、“三度目の正直”を決めた三宅父娘に対して、浜口父娘は多くの人が指摘をするとおり、別競技である元プロレスラーの親父の干渉しすぎが最悪の結果となったように写ります。

父アニマル浜口氏は、ボディビルダー出身の元プロレスラーであり、氏が運営する浜口道場はプロレスラー養成所であります。アマレスとプロレスは似て非なるモノ。もちろん銅メダルを獲得するところまで育てただけでも大したものではないか、とも言えますが、銅⇒銅ときて今回金を目指すのなら、やはりここは門外漢の父はキレイに手を引いて完全に別のコーチの下で出直しを図るべきだったのではないかと。過去には門外漢のリードでうまく事が運んでいたとしても、門外漢としての自覚は忘れてはならないものであり、打開策を見出すには門外漢が引き際をしっかりと自らけじめる必要があるのです。マネジメントにおいても又同様也です。


★サッカー男子チーム
準決勝を優勝したメキシコと戦い敗戦。44年ぶりの銅メダルを賭けた韓国戦で、いいところなしの完敗に終わった日本U23チーム。中2日続きの過密スケジュールで各選手の疲労がピークにあったことは間違いありません。さりとて、相手の韓国も同じ状況下にあったはず。しかし、3位決定戦での両チームの動きには雲泥の差があったのです。要因は何か。メダルへの執念が劣っていたということに尽きると思います。「勝負の世界は思いが強い方が勝つ」とは真剣勝負の鉄則ですが、ビジネスにおいても同様のことは言い得ることではないでしょうか。

今回、韓国選手を勝利への「思い」に掻き立てたモノは、「銅メダル以上で徴兵免除」という国が用意したインセンティブでした。JOCが特定の競技だけに特別インセンティブを儲けることは難しいでしょうから、この場面ではサッカー協会が3位決定戦を前に「メダル獲得したら○○」という、選手にとって魅力的な特別インセンティブを用意する必要があったのではないかと思います。「思い」を左右する組織のモラール向上において、強力なインセンティブをぶら下げすぎることは好ましくないケースも間々あるのですが、同業のライバルが公然と知られた強いインセンティブに突き動かされていることが明らかであるのなら、それ相応のインセンティブ対応をすることも必要なことであるのです。