日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

説明義務を求められる「政治主導断念」

2011-05-12 | ニュース雑感
政府・民主党は11日、閣僚枠を3人増員する内閣法改正案の成立を優先し、官僚に依存しない「政治主導」確立のための関連法案の取り下げを野党各党に正式に伝えたそうです。表向きの理由は「東日本大震災への対応を優先した」とのことですが、枝野官房長官も「この政権の大きな柱の一つだったが、いったん棚上げ、断念させていただきたい」と明言しており、本件はマニフェスト主要項目の実現断念と言える重大な出来事です。

そもそも09年の政権奪取直後には、国家戦略室を立ち上げ(初代室長は菅直人現総理)、官僚の答弁禁止、会見禁止、次官会議廃止などを打ち出した民主党政権でしたが、国家戦略室はほとんどその存在感を示すことができませんでした。そんな中、同室の国家戦略局への格上げを柱とする政治主導確立法案と、副大臣・政務官の増員や官僚答弁の禁止を盛り込んだ国会法改正案を昨年の通常国会に提出したものの、野党の賛成が得られずに法案成立の見通しは全く立たたずにここまで来ていました。そして遂に今回の法案取り下げ。言ってみれば東日本大震災と言う未曽有の事態に遭遇して、政府としての有事対応をしていく中で、自分たちの考えていた「政治主導」の考えの甘さが計らずも露呈する状況に対面し、「震災対応優先」という大義名分が立つ今が看板の掛け替えの好機とばかりに、“すり替え法案”の提出による法案取り下げに至ったというのが真相なのではないでしょうか。

組織論的には、あらゆる組織はその成熟化とともに官僚制度の弊害があらわれ是正が必要になることは一般的に知られている事実であり、民主党がぶち上げた「政治主導」の基本理念自体は必ずしも的外れではなかっただろうとは思います。しかしながら、政権奪取直前に管氏がヨーロッパ視察をして国家の成り立ち等を無視した“一夜漬け的サルまね”「政治主導」策を掲げたことに、そもそも問題点が多く内包されていました。考えてみれば、普天間の問題も子供手当の問題も、政権の座欲しさのあまりに勉強不足の状態で裏付けのない思いつきの「絵に描いたモチ」ばかりを国民に提示をしたがために、ことごとく袋小路に入りマニフェストの修正を余儀なくされる事態に陥っています。そして今回は、いよいよ選挙公約の大きな柱である「政治主導」の旗を降ろしたのです。今度ばかりは問題は政権運営の根幹にかかわるものであり、「震災対応優先」などという言い訳を隠れ蓑に逃げるのではなく、なぜ野党の賛成が得られなかったのか、なぜ中途半端な段階で断念せざるを得なかったのか、「震災対応」一巡後この問題は具体的にどう対処していくのか等々について、しっかりと国民に対して説明をする義務があると思います。

それにしても情けない。「官僚に依存しない政治主導の政策決定」は、震災対応を進める中で現実を知り現政権ではとうてい実現し得ないと実感してしまった訳でしょうから。表向きは震災に救われ延命されている感の強い菅政権。その実、震災対応を続けることによって、ますますその無能さ加減が明らかになっていっているようです。

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