日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

売れ筋ブック・レビュー~「社長力養成講座/ 小宮一慶」

2009-05-06 | ブックレビュー
連休最終日、もう一丁ブックレビューいっときます。

★「社長力養成講座/ 小宮一慶(ディスカバー携書1000円)」

人気コンサルタント小宮一慶氏の新作です。明らかに本田直之氏の「レバレッジ・マネジメント」を意識したと思しき経営指南書といった趣です。よくよく読めば、06年刊「なぜオンリーワンを目指してはいけないのか」という著作の焼き直し版のようです(ご本人は「グレードアップ版」と申しております)。100年に一度の大不況の折、経営者をターゲットに人気コンサルタントをして経営指南書を無理にでも書かせたいという出版元の魂胆が見え隠れします。06年と言えば、まだまだ小宮氏ブレイク前のことですから、タイトルも今風に見直しして仕切り直しということでしょうか。

どうしても本田氏との比較で見てしまうのですが、内容の仕切り方こそ違えども「レバレッジ…」同様、経営者に求められる「力」を「戦略」「マーケティング」「人材活用」「会計」「リーダーシップ」という切り口で、ポイントを伝えくれます。似たような切り口で書き込まれているものの、厳しい言い方をすれば今ひとつありきたりで鋭さに欠ける感ありです。その辺がブレイク前の著作焼き直し作の限界でしょうか。方や絶好調の現時点での渾身の書き下ろしですから、比較をするのは酷なのかもしれませんが…。

そんな中にあって、小宮氏の得意分野である「会計力」に関する項は、なかなかタメになるお話が書かれています。中でも印象的な一言、「銀行に目を向ける暇があったら、お客様と向き合え」は実に言い得ています。昨今タイトルの妙で売れている「銀行員の言うことを聞いていたら潰される」とか「銀行が金を貸したくなる企業づくりはこうしろ」とか、コンサルタントの風上にも置けないくだらない指南書を書いている輩に対して、ビシッと一言放ってくれたという感じが胸のすく思いです。さすが小宮氏。

10点満点で7点。「会計力」以外の部分は、他のビジネス書でもよく語られている類のお話といった感じなので…。“焼き直し本”ということもあり少々辛めですが、昨今の不況対策マネジメント書の水準以上は十分確保できていると思います。この方はやはり、数字をベースにしたお話に徹していただいたほうがインパクトがありますね。