日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

本当の利用者重視とは?~サービス業のあり方を考える 下

2008-07-17 | ビジネス
さて引き続きサービス業のあり方を考えます。ブランドに“胡坐(あぐら)をかいた”東京ディズニーランドのお話です。

ディズニーランドの印象にどんなものがあるでしょうか。確固たる強力なブランド力を持つ人気施設ですから、「楽しい」「素敵」というものは当然あると思います。がしかし、一度は行ったことのある人なら、同時に「待たされる」「混雑している」「高い(入園も飲食も)」という印象を持っている人が大半ではないでしょうか。

特に問題なのは「待たされる」。サービスを受ける側からみた場合、「自分が受けたいサービスを必要以上に待たされる」ことはサービスの価値を低くする大きな要因になっていると思います。ディズニーランド側では、特定のアトラクションで待ち時間を短くするファストパスと言う制度があるものの、「一度発券すると記載された指定時間を過ぎるか2時間経過しないと、他のアトラクションで発券することはできない」という最大の欠点があります。

さらに、「時間の指定はできず、特定の時間内にのみ使用可能」「アトラクションの優先入場口に並ぶ権利を得るシステムであって、ファストパスを取得したからといって入場が保証される訳ではない」「タワー・オブ・テラーなど人気アトラクションは開園から2時間足らずで発券終了になることもある」など、利用者からは多くの不満の声も出されています。つまり言ってみれば、「待ち時間対策をしているかのように見せかけだけの対策」でお茶を濁しているのです。本当にサービスを受ける側の立場でものを考えているとはとても言えないと思います。

ディズニーランドにおいて「待ち時間も楽しく」はプレショウの工夫などで以前より改善は試みられているものの、根本的な「待たせないアトラクションのあり方」については、先のだましの対策以外全くと言っていいほど講じられていないのです。それでありながら、パスポートが一律大人1日5,800円は高いでしょ?1日何人収容ですか?施設メンテや運営にコストがかかることは十分承知ですが、あまりにも、もうけ主義ではないでしょうか?

まずやるべきことは、パスポートを安くすること。最低でも今の半額でいいハズです。そのかわり、時間指定で待たずにアトラクションを利用できる権利を1件1000円とかのオプションで販売すればいいんです。「全部いくら待っても安い方がいい」「待つのも楽しみのうち」「園内の雰囲気を楽しむだけでいい」と言う人は、オプションなしで安く遊べる訳です。パレードも早くから場所取りをせざるを得ないのが現状ですよね。これも指定席チケットをオプションにすればいい訳です。場所取りのためにアトラクションに乗る時間を割かなくてはいけないなんて、来場者に無駄な時間の使い方を強いるやり方は、利用者の立場でサービスを考えているとはとうてい言えないと思います。

満足度の高いサービスは、今やサービスを受ける側に選択権を持たせることが当たり前の時代です。ならば、基本料金を極力安くして利用者の選択によって希望するサービスを受益者負担させることこそが、納得性と満足度の高いサービス向上の姿ではないかと思うのです。「“ゲスト”優先の良質のサービス」だとか、「超優良サービス企業」だと持ち上げられて、その気になってマスメディアにも“したり顔”で登場する、ディズニーランド関係者。企業の論理での一律高入場料&形式的な待ち時間対策を変えようとしない今のやり方を、私は決して「良質のサービス」でも「超優良サービス」でもないと思います。

ブランドの魔力はそういう間違ったサービスさえも、利用者の側で勝手に正当化してしまうことがあるのです。それは例えば、一流芸能人から直接話しかけられるなら、どんな失礼な言葉遣いでも「うれしい」と感じるミーハーファンの“脳天気”ぶりと相通じるものでもあります。言いかえれば、ブランドを持つ側の思い上がりに他ならない訳で、社会一般のあらゆる業態における真のサービス向上を実現するためには、利用者の側がブランド力にも騙されることのない「サービス評価眼」を身につけなくてはいけないのです。

そう考えるとディズニーランドの“思い上がり経営”の原因は、ブランド力に騙されてそれを許しているサービスの本質を解さない利用者の側にこそあるのかもしれません。