(2)英訳では
最近、英訳版のプルースト『失われた時を求めて』の一つに接する機会がありました。
C・K・スコット・モンクリーフ C. K.. Scott Moncrieff の訳になる「Remembrance of the Things Past」で、初版は1922年に Chatto & Windus Ltd. から刊行されました。私の参照したのは、1973年版。
その第一篇『スワン家の方へ』が「Swann’s Way」のタイトルで訳されています。
その第1部「コンブレー」の冒頭の印象的な一文は英語ではどう表現されているでしょうか?
固唾を呑んでページを繰ると、以下の文言が目に入りました;
「For a long time I used to go to bed early.」
何と、「おそらく、 For a long time I used to go to bed early. とでも表現される」と推定すると上で書いたと同じ文言ではないか! 私はびっくりするとともに、深い満足を感じました。
プルーストの原文を移すにあたって、これほどピッタリした英語表現はほかにありません。それが確認できました。過去の習慣をあらわす used to のフレーズがピッタリなのです。
C・K・スコット・モンクリーフの英訳の評判を私は知りません。また、ほかの訳者が、この冒頭の一文をどう訳しているかも知りません。しかし、C・K・スコット・モンクリーフのこの冒頭の一文の訳文には賛同するとともに、深い敬意を覚えます。 (2012/8)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます