静聴雨読

歴史文化を読み解く

プルーストの英訳・2

2012-08-31 07:39:36 | 文学をめぐるエッセー

 

(2)英訳では

最近、英訳版のプルースト『失われた時を求めて』の一つに接する機会がありました。

C・K・スコット・モンクリーフ C. K.. Scott Moncrieff の訳になる「Remembrance of the Things Past」で、初版は1922年に Chatto & Windus Ltd. から刊行されました。私の参照したのは、1973年版。

その第一篇『スワン家の方へ』が「Swann’s Way」のタイトルで訳されています。

その第1部「コンブレー」の冒頭の印象的な一文は英語ではどう表現されているでしょうか?

固唾を呑んでページを繰ると、以下の文言が目に入りました;

「For a long time I used to go to bed early.」

何と、「おそらく、 For a long time I used to go to bed early. とでも表現される」と推定すると上で書いたと同じ文言ではないか! 私はびっくりするとともに、深い満足を感じました。

プルーストの原文を移すにあたって、これほどピッタリした英語表現はほかにありません。それが確認できました。過去の習慣をあらわす used to のフレーズがピッタリなのです。

C・K・スコット・モンクリーフの英訳の評判を私は知りません。また、ほかの訳者が、この冒頭の一文をどう訳しているかも知りません。しかし、C・K・スコット・モンクリーフのこの冒頭の一文の訳文には賛同するとともに、深い敬意を覚えます。 (2012/8)

 



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