アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

学者の役割

2011-07-29 08:44:46 | インポート
6月16日blogにて山田伸一さんのことを書きましたが、間違っていたので訂正しました。「町史」は別の話で、旅先に持っていかれたのは内容も分量も手頃な吉川弘文館刊行の「街道の日本史」シリーズのうちの、その地域に関連する一冊を携えて行って読むようにしているとのこと。失礼しました。

いつも情報をくださるwakkaさんから、今回もメディア情報を頂きました。
霧の摩周湖に現れる滝霧の生まれるところは、なんとはるか500キロ離れた太平洋三陸沖だと!
NHKスペシャル「幻の霧~摩周湖 神秘の夏~」7月31日午後9時放送
http://www.nhk.or.jp/special/onair/110731.html



このblogでもよく紹介する小野有五さん(今年で北大大学院教授を辞されたと伺っている)の、「シレトコ世界自然遺産へのアイヌ民族の参画と研究者の役割-先住民族ガヴァナンスからみた世界遺産-」を読みました。

研究対象としての先住民族と研究者のあり方について小野さんは①研究者が「客観性」や「中立性」を重んじすぎていつも対象の外にいるため諸問題に関わることを避けてきたこと、②問題が一応解決してから「研究」を始めるという二点に批判的立場だと始めに述べています。

世界の先住民族は常に「研究」の対象で、研究者の素材とされることでさらに利用・搾取され続けている。研究者は分析力があるゆえに先住民族の権利回復のための運動に加わるべきで、「研究は運動を成功に導くためにある、というのが筆者の立場である」と述べます。
とても納得がいきます。

シレトコ世界自然遺産関連では何が問題なのかに関しては内容が複雑に絡まっている(図式を見たほうが早い)ので実際に論文をご覧下さい。
http://ci.nii.ac.jp/naid/40015366239

北海道アイヌ協会のHPを見ると、北海道に居住しているアイヌ民族で組織し、「アイヌ民族の尊厳を確立するため、その社会的地位の向上と文化の保存・伝承及び発展を図ること」を目的とする団体として紹介されています。
また、全道の市町村に49支部あり、会員総数は3,234名(2011/3現在)。これを仮にAとします。
アイヌ協会とは別にアイヌ民族を代表とする小規模なNPO(法人格ではないのが普通)の会員がいます。その一部はアイヌ協会の会員を兼ねている方もいます。これを仮にBとします。
いっぽう、北海道が2006年に実施した「アイヌ生活実態調査」 によると、北海道に住むアイヌ民族の人口は、72の市町村に23,782人となっています(これを仮にC)。この「アイヌ生活実態調査」は、「道は、地域社会でアイヌの血を受け継いでいると思われる人、また、婚姻・養子縁組等によりそれらの方と同一の生計を営んでいる人と定義し、自らが表明する人のみを調査対象とした」と注意書きがありますし、調査範囲が北海道居住(注:2)のアイヌに限定されていますから、実際にははるかに多くのアイヌ人口が見積られます。
さらに、アイヌ協会入会の年齢制限(二十歳以上など)や、会費免除(家族割や未成年免除など)があるのか、「アイヌ生活実態調査」の年齢制限(15歳以上など)があるのかは未確認です。
Cというアイヌ・アイデンティティを持つ人々の中の約14%がアイヌ協会に入っています。それに加え、BのNPOも一部アイヌ協会と重なりながら加わります。
しかし、Cの他に、アイヌであることを隠すアイヌ(D)、さらには、アイヌであることを知らないアイヌ(E)の方たちがはるかに多いだろうと小野論文は書いています。理由は、アイヌであることを社会的に明らかにすると、様々な面で不利益や差別を受ける現状が今も続いているからだ、と。
これもその通りだと思います。
不利益・差別のない、むしろアイヌであることを誇れる日が一日も早く来ることを願います。

今日は今から札幌に行き、アイヌ奨学金事務と、なかなか行けなかった「アイヌ文化普及啓発セミナー」にイオル再生事業伝承者育成事業1期卒業生の木村多栄子さんの「私のなかのアイヌ文化」と道立文学館学芸員の新明英仁さんのアイヌ風俗画の世界」の講演を聞きに行ってきます。



留萌の海水浴場。この二週間、ゴールデンビーチはテントが一杯になるほどにぎわいます。


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民法学から

2011-07-23 21:36:35 | インポート
手元に今年4月3日、釧路アイヌ文化懇談会で吉田邦彦さん(北大大学院法学研究科〔民法〕教授)の話された
「アイヌ民族の補償問題と所有権・知的所有権―民法学からの有識者懇談会報告書の批判的考察」があります。
民法専門の立場からアイヌ民族の諸権利に関して記述されており、多くを教えられます。最初のほうでアイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告書(2009/7)の問題点として以下を挙げています。

(1)文化復興という文化面への限定が問題。土地利用の再検討として博物館類似の公共工事が考えられているが、現実のアイヌの人々の貧困対策とは「無縁であり、眉唾」。
(2)アイヌ民族の歴史の根幹は、所有権侵害ないし広義の財産権侵害でることが看過され、それに対する補償問題が伏在することへの理解が欠落している。その結果として謝罪がないし、補償問題があつかわれていないため、「逆差別になる」等の論理を滑り込ませている。
(3)アイヌ民族の集団的アイデンティティと言いながら、個人権的補償をベースにしていて限界がある。なぜ民族の集団的権利を認めようとしないのか。

☆結論として「1996年のウタリ懇報告書との連続性が大きく、先住民族性ないしそれに対するこれまでの侵略・搾取に対する救済の政策的展開としての踏み出し方は、限定的であり、「妥協の産物」的なお役所文書的側面が強い。」と記述。
吉田さんの言われるとおり、アイヌ地の土地侵略・征服に関わる補償の問題と具体的対策の検討が大事なのに、先の有識者懇談会の報告書だけでなく、この度のアイヌ政策推進会議でも触れられず、「共生象徴空間」のみを推進しているのは、実に問題だと言えるでしょう。

世界各国の先住民族に対する補償論を今後、調べて比較してみたいと思いますが、吉田さんはアメリカにおける黒人・先住民族・ハワイ原住民に対する差別・虐待に関する補償を参考に、以下を述べています(注・いつもながらわたしが理解したところで大胆に短く要点を書きます)。
(1)過去の不正義に鑑みて、加害者側でその歴史的事実を認め、その歴史的責任を認めつつ、まずは、謝罪を行うべき(報告書に謝罪がないのは理解に苦しむ)。
(2)所有権返還に関し、①共有財産は再施すべき。補償的に増額すべき(謝罪も)。②土地返還は、一部を象徴的にアイヌ協会に返還する。③埋葬品・遺骨盗掘問題は、返還(ないしは北大の追悼施設に収める)、慰謝料賠償がなされるべき。象徴空間に持っていくという考えは責任主体との関連性が希薄になるため慎重にすべき。
(3)金銭授受されるべき。従来の福祉施策ないし生活向上施策は、実質補償的性格があるが、「補償」の明示がないために削減されたり、あまり意味のない使われ方をされている。
(4)(広義の)知的所有権関連の補償(損害賠償)問題についても、慎重な検討が必要。刺繍などの意匠権の侵害事案は伝統的な知的所有権保護をつくり、補償がなされていい。薬草文化などの伝統的知識の特許権弊害については(聞いてはいないが)、打開に向けた取り組みが必要。
(5)観光物に関してはアイヌ民族のアイデンティティ侵害に関わるような商品化には慎重な扱いを要し、差別的行為に対しては、人格権的保護の充実をはかり、効果として差止め的なものを認める。

法的なことなので、理解し切れているとは言えませんが、うなずけます。ただ、(2)②の「アイヌ協会に返還する」には意義あり。北海道アイヌ協会はアイヌ民族の代表ではありませんから。

北大アイヌ人骨の問題の真相を究明し、適切な対応を求めている「北大開示文書研究会」のblog「さまよえる遺骨たち」に、英語版の概要がUPされました。北大や国の問題を国外の先住民族の団体に知って頂き、協力をお願いするためです。すでに、いくつかのグループから協力の呼びかけを頂いています。キリスト教関係のつながりも含めて点が線に、線が、網のようになっていきます。
http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/



初山別の岬公園から稚内を望む


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「アイヌ民俗文化財伝承・活動事業のご案内」

2011-07-21 20:37:55 | インポート
新情報の追加です。
「アイヌ民俗文化財伝承・活動事業のご案内」というもので、北海道教育委員会から委託を受けた社団法人北海道アイヌ協会が講座を開催しています。講座はだれもが受講可能。詳細は下記PDFファイル参照。

http://www.ainu-assn.or.jp/data/whatsnew/tmpfile/1310012700__kouzaannai10.pdf

帯広、苫小牧、浦河、登別、阿寒など、教団の教会の近くでも頻繁に開催しています。足を運んで関係作りが出来たらいいですね。今までこのような案内は見たことがありませんでした。見落としていたのでしょうか。


瀬川拓郎さんの「アイヌの世界」(講談社)も読み始めました。アイヌのクマ祭りは縄文時代の祭りに由来し、アイヌ語も縄文語の伝統を受け継いでいると書かれています。
山田伸一さん著「近代北海道とアイヌ民族」(北海道大学出版会)も届きました。楽しみです。


留萌カトリック教会のM神父と早朝の海岸の散歩でばったりと会い、震災追悼と平和を祈る会を開催することになりました。聖公会も入って頂いて三教会合同で、ろうそくを囲みながら8月14日の夜に集まります。M神父は20年前にも留萌にいたユニークなドイツ出身の方で、ことし美唄から移って来られました。考え方も柔らかく、「追悼と平和のために一緒に祈りましょう。もうプロテスト(抗議)しないで、一緒にやりましょう」とお誘いを受けました。チラシを新聞折込にしようという話で、わたしが思想・宗教にかかわる折込は断られることを言うと、「だったら『教会』を『協会』に変えて印刷しましょう。ちょうど『協』の字は十字架に三つの力と書くでしょ?三教会で協力しあいましょう」と。どれだけ真面目に言ってるのかわからなくなりますが・・・。
M神父にアイヌ民族のことを言うと、な、なんと、マオリのS氏のお連れ合いととても仲良しで、今月末に一週間ほど留萌の教会に来られるとか。ちょうどいい。キリスト教関連のコネクションを使って世界の先住民族と連携し、北大のアイヌ遺骨問題や国の対応についてアクションを起こして頂くことを考えようと思います。
WIN-AINUとも連携し、世界先住民族サミットで関係が出来た各先住民族グループともつながれるはずです。どんどんと行動を起こしていかないと。



19日(火)は、天塩・初山別の教会員訪問に出かけました。途中で天塩川河口の川口遺跡の竪穴式住居跡を訪ね、昼食。


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「ピラサ」 「ピヤラ」 アイヌ語カルタ

2011-07-20 14:26:58 | インポート
いくつか情報をUPします。
北海道教育委員会でアイヌ民族の歴史・文化等に関する教師用啓発資料「ピラサ」を年に1~2回発行しています。
アイヌ語カルタが「ピラサ」18号(2010/9発行)から連載されています。絵は「ア」「イ」まで道内の中学生が描き、「ウ」から小笠原小夜さんが画いておられます。彼女のアイヌ語動物絵はがきをいろいろな場で販売協力させて頂いていますが、その絵同様、かわいいカルタが出来ていますよ。
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/pizara.htm

「ピラサ」自体はカメのスピードで発行されていますので、首を長くして待つのみですが、19号(2010/12発行)は「か」行、最新の20号(2011/3発行)は『さ行』まで完成。ただしどういうわけか、道教委のURLには18号が『NEW!』となって、19~20号はUPされていない。あとで電話して聞いてみましょう。
いつか完成したものをカルタにして、いつも遊びに来るこどもたちと楽しみたいです。今でもこどもたちとは時々「昔話カルタ」を楽しんでいます。

NCC教育部では今年度も「平和のきずな献金」で、アイヌ奨学金キリスト教協力会の献金呼びかけをして下さいました。昨年はわたしが北海道の自然を写した写真を12枚ほどのパネルにしてアイヌ民族の歴史を解説した「アイヌ・モシリからのメッセージ」を貸し出して下さいましたが、今回は小笠原さんのアイヌ語ポストカードセットを、宣伝を兼ねて紹介してくださっています。


「ピラサ」に似ていますが、北海道新聞のアイヌ民族情報「ピヤラ」というのもありますので、時々更新をご覧下さい。 http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/piyar/

7月14日の過去blogに「アイヌ政策推進会議」を「アイヌ制作推進会議」と間違っていましたので訂正しました。さらに、当日<第1部>「作業部会報告書について」には、佐々木利和さんも加わるとのこと。常本照樹さんとお二人で報告書について話されるとのこと。是非、近場の方は傾聴を!


興部途中の牧草地で悠々と草を喰らう鹿
17日の興部教会との交換講壇も無事に終え、夜から翌日18日午前中は道北地区教師会に参加。その最中に、当センターのHPに多大な協力をしてくださっている難波さん(士別教会)との相談でfacebookにもリンクを貼り付けようということになり、デビュー。しかも、「さまよえる遺骨たち」の資料カンパも皆さんが協力してくれて赤字が減りました。感謝!!
みなさんも「さまよえる遺骨たち」URLから資料はダウンロードできますが、印刷された資料をカンパのつもりでご協力お願いします。


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映画 「賽德克・巴莱」(セデック・バレ)

2011-07-16 14:04:53 | インポート
浦河べてるの家(http://urakawa-bethel.or.jp/)関連で向谷地生良さん著「技法以前」(医学書院)を読み始めました。これまた気付かされることばかり。失敗を恐れず、実践のない机上の空論になならないようにと自戒。

作日は札幌に所要で行って、宇梶静江さん著「すべてを明日の糧として」(清流出版)と、瀬川拓郎さん著「アイヌの世界」(講談社)を購入。後日に読書感想文をUPします。先日の山田伸一さんの講演で、出張に地方に行く度にその地域に関連する吉川弘文館刊行の「街道の日本史」シリーズを出張中に一冊読んでしまうというのを聞いて触発されました。
山田さんの「近代北海道とアイヌ民族-狩猟規制と土地問題」(北海道大学出版会)も近く、Amazonで届きます。井上勝生さん(北大名誉教授)からもお電話で推薦を頂きました。じっくり読みたいと思います。
宇梶さんと児玉作左衛門北大医学部教授との接点について過去blogに少し触れましたが、第2章の一節に「ある学者が私たちにした許せないこと」で触れています。アイヌ民族差別・パワハラ・セクハラ・肖像権侵害について書かれています。けっして許せない、と。


注目ニュースです。台湾の歴史的な霧社事件のニュースがありました。

日本統治時代の集落セットを一般公開へ 台湾
MSN産経ニュース 2011.7.8 18:09
 日本統治時代の1930年、台湾中部で発生した先住民の武装蜂起「霧社事件」が台湾で映画化された。9月上旬の封切りに合わせて、台北郊外に再現された日本人集落のオープンセットも一般公開されることになった。
 映画は日台の絆を描きヒットした「海角七号」の魏徳聖監督の最新作「賽德克・巴莱」(セデック・バレ)。先住民のタイヤル(セデック)族が不当な扱いに反発し、警察や学校などを襲撃して日本人130人以上を殺害、日本軍の武力鎮圧で千人以上が自殺するなどした事件が題材となっている。タイヤル族の血をひく台湾人女優、ビビアン・スーさんらも出演しており、日台の衝突の描き方が注目されている。
 約110メートルに及ぶ街道には舞台となった警察分室や公学校をはじめ、郵便局や旅館、商店、武徳殿などが、細部にわたり当時の雰囲気で再現されている。セットを整備中の新北市では「話題作だけに多くの観光客の来場に期待しています」と話している。(台北 吉村剛史)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110708/chn11070818120003-n1.htm


日本でも上映されるでしょうか。このような歴史をしっかりと知っておきたいです。
ビビアンは事件で自殺した警官・花岡二郎(ダキス・ナウイ)の妻を演じている」とか。観たいですね~。


明日は道北地区の牧師たちが自分の教会以外で説教をする交換講壇。留萌と興部の教会が交換です。お互い片道200キロ以上を明日の早朝から走ります。夕方は道北地区委員会と教師会。「さまよえる遺骨たち」シンポの資料集を持参しますのでカンパを兼ねて買って頂ければと考えています。若干赤字がでましたのでそれで補います。




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「総合的なアイヌ民族政策はどうなるのか」

2011-07-14 12:51:15 | インポート
会議や講演案内をイヴェント情報blogにまとめてUPしました。
http://blog.goo.ne.jp/sakura-ive

開催地域も北海道、東京、横浜と範囲が広いですから、FaceBookなどでも広く呼びかけようと思います。
近くだったら是非とも行きたいのが下記の集い。どなたか録音してくれませんか。
トムとジェリーの対話を生で聞きたい!! (注・T&Jはご本人たちがおっしゃっていました)・・・
いや、常本さんに北大アイヌ遺骨・副葬品の二枚舌発言を含む疑問を直接伺いたいです。

総合的なアイヌ民族政策はどうなるのか~アイヌ政策推進会議の作業部会報告から~
◆日時  2011年7月31日(日)14時~17時30分 (30分前開場)
<第1部>
「作業部会報告書について」佐々木利和、常本照樹
「アイヌ民族の意見」阿部ユポ、宇梶静江
「国連先住民族権利宣言とアイヌ民族政策」上村英明
<第2部>
ディスカッション
「総合的なアイヌ民族政策の実現に向けて」

◆ 料金 1,000円(資料代込)※予約不要。どなたでもご参加いただけます。
◆ 会場:東京麻布台セミナーハウス3F 大研修室 東京都港区麻布台1-11-5
http://kenshu.e-joho.com/azabudai/
◆ 共催 :先住民族の10年市民連絡会、市民外交センター
◆ お問合せ  先住民族の10年市民連絡会事務局  TEL&FAX:03-5932-9515
  メール:postmaster@indy10.sakura.ne.jp


宇梶静江さん著「すべてを明日の糧として-今こそ、アイヌの知恵と勇気を」(清流出版)が出ましたね。本屋で少し中を見ましたが、以前から伺っていた北大の児玉作左衛門医学部教授とのつながりも書かれていました。
次回は購入します。


アッニ(おひょう)の葉 

アイヌ文化振興・研究推進機構主催の「アイヌ文化普及セミナー」が7月27日(水)~30日(土)13:30~16:40に開かれますね。
詳細・受講申し込みはhttp://www.frpac.or.jp/evt/seminar.html

毎年、よき学びと出会いをさせて頂いています。今年もどれも楽しみですが、特にわたしの注目は田澤守さんの「樺太アイヌ-エンチウ史」(7/28)。ご本人の紹介も「エンチウ」として表され始めました。アイヌ・アートプロジェクト代表の結城幸司さん「時代がつくりゆくものと現代アイヌ」(7/27)や、大須賀るえ子さん (白老楽しくやさしいアイヌ語教室講師 7/30) のお話も!イオル再生事業伝承者育成事業1期生の木村多栄子さんも「私のなかのアイヌ文化」(7/29)で話されますから応援を兼ねて聞きに行きたいです。

歴史関連も面白そうです。 「日本海沿岸のアイヌ文化~余市地方を中心として~」(余市水産博物館館長 乾芳宏さん 7/27)、「アイヌ史のなかの7世紀-「縄文の時代」の終焉」(苫小牧駒澤大学国際文化学部准教授 蓑島栄紀さん 7/28)、「アイヌ風俗画の世界」(北海道立文学館学芸主幹 新明英仁さん7/29)、「阿倍比羅夫遠征と古代北海道」 (旭川市博物科学館主幹 瀬川拓郎さん 7/30)。
瀬川さんは「アイヌの世界」(講談社)、瀬川さんと箕島さんは「アイヌ史を問いなおす 生態・交流・文化継承」(勉誠出版)を書いていますね。その内に読みたいと思います。
さて、どれも聞きたいですがどう考えても連日は無理です。聞き逃したものは後日にHPでUPされた講演記録や冊子になった報告集で読ませて頂きます。

11日のアイヌ民族委員会出席のため札幌に行った際、アイヌ文化振興・研究推進機構に寄って「アイヌ生活文化再現マニュアル」のまだ見ていない8本を借りて来ました。無料で1ヶ月借りられて、とても面白いし、いい学びになります。クチャ(仮小屋)など、実際に作ってみたくなりました。


富良野 富田ファーム 


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アイヌ政策推進会議宛の要望書

2011-07-13 21:08:25 | インポート
今回のアイヌ政策推進会議での二つの部活報告を読み、北大開示文書研究会がアイヌ政策推進会議および、「アイヌ民族の権利確立を考える議員の会」会員の方たちに「要望書」を送付しました。
http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/
いづれの「要望書」とも、研究会ブログにUPされています。アイヌ政策推進会議宛の文書のほうをここでご紹介します。

アイヌ政策推進会議  座長 枝 野 幸 男 様

小川隆吉
北大開示文書研究会
代表 清水 裕二
代表 殿平 善彦

要  請  文
 アイヌ政策推進会議におきましては、アイヌ民族の意見を踏まえつつ総合的かつ効果的なアイヌ政策を推進するため、審議を続けてこられたことに敬意を表します。
 わたしたちは、北海道大学に存在する、戦前から戦後に至るアイヌ墓地発掘に伴うアイヌ人骨台帳とそれに関連する文書を精査し、当時「研究」の名目で、道内外でおこなわれたアイヌ墳墓「発掘」の真実を明らかにすることを目的に2008年8月に発足した研究会です。
この度、第3回アイヌ政策推進会議にて「『民族共生の象徴となる空間』作業部会報告書」(以下、「報告書」)が提出されました。この「報告書」および今後の進行について要望をいたします。
「報告書」には「過去に発掘・収集されたアイヌの人骨等について尊厳ある慰霊が可能となるような施設が必要とされ」(P.2)とあるように、わたしたちも発掘・収集されたアイヌ民族のご遺骨を丁重に扱うことを願っています。
かつて明治期より戦後に至る間、北海道大学医学部の故児玉作左衛門教授など、人類学関係者をはじめとした研究者が国策を背景にした学問の権威を主張して北海道内外のアイヌ民族の墓地から多数の人骨をはじめ副葬品を発掘しました。アイヌ人骨に関心を持つ研究者はアイヌ民族を「滅びゆく民族」と位置づけ、その研究が急務であると、アイヌ民族との間に誠実な諒解もないままアイヌ墓地の発掘を続け、1000体を越える遺骨を大学に集め、同時に発掘されたたくさんの副葬品も大学に集められました。しかし、発掘された人骨の歴史的経緯やその後の副葬品の扱いは今日に至るも真相は明らかにされておらず、多くの疑問が残された状態のままです。
小川隆吉アイヌ長老会議議長は、真相の解明を願って、北海道大学にアイヌ人骨に関わる文書の開示を求め、大学は一定の文書を公開しました。公開された文書を検討してきたわたしたち北大開示文書研究会は北海道大学に対して発掘された人骨の扱いや副葬品の経過などについて回答期限を付して質問しました。しかし、今日まで、北海道大学から一切の回答を受け取っていません。
この問題は北海道大学のみのものではありません。北海道大学以外の旧帝国大学などにも人骨が収蔵されてきました。アイヌ墓地発掘は明治政府の北海道開拓と植民地政策に伴うアイヌ民族へのレイシズムがもたらしたものであり、アイヌ民族の伝統的追悼儀礼を無視した非人道的な発掘の記憶は今日もアイヌの人々の深い傷となって残されております。アイヌ墓地発掘問題に対する誠実な対応と解決への努力は、今日に残された、まさに『国民的な課題』です。日本政府は政府の責任においてアイヌ人骨問題の歴史的経緯を検証し、その歴史的責任を自覚し、遺骨の収集と今日までの処置に関して、アイヌの人々の意に反して収集した過去を反省し、アイヌ民族への謝罪がなされるべきです。
「共生空間」の整備に伴うアイヌ民族の遺骨を納める慰霊施設を設ける計画について、「報告書」に、「各大学等に保管されているアイヌの人骨について、遺族等への返還が可能なものについては、各大学等において返還する」(P.8)とあります。このことはアイヌ墓地発掘の経緯を検証し、遺族への返還のための積極的な努力なくしては出来ません。北海道大学においてはその努力が全く見られないばかりか、名目的な「返還」にとどめ、研究対象化しようとする意図さえ感じます。
また、遺骨を一か所に集めるなどの安易な解決を図ることがあってはなりません。ましてや慰霊施設と同じ空間に研究施設を設置することは、さらなる研究対象としてアイヌ民族を辱める行為ですから、そうするべきではありません。遺骨に関しては、アイヌ民族への遺骨奉還および静謐な安置と追悼を中心に据えるべきで、研究材料としての扱いを進めるべきではありません。
アイヌ墓地発掘に伴って膨大な副葬品が出土しましたが、それらの多くが行方不明になっています。このことは大学の管理責任にとどまらず、アイヌ民族の財産を散逸させた責任が具体的に問われることになりましょう。人骨問題の解決には副葬品問題の解決も不可欠であると考えます。
さらに、北大では大学所蔵のアイヌ遺骨の砂の洗浄と遺骨整理作業が行われようとしています。そのような行為は遺骨収集の証拠を失わせ、返還の場合の根拠を隠滅することになりかねません。即刻、中止を求めましたが、何の返答もないままです。
このような閉鎖的な対応をしている大学に、遺骨の返還をまかせようとするアイヌ政策推進会議の姿勢も問題であると考えます。アイヌ政策推進会議は慰霊空間へ遺骨を収集する方針を中止し、アイヌ墓地発掘問題の解決を目指して、すべてのアイヌ民族との誠実かつ慎重な対話を開始すべきです。国際的にも、先住民族への遺骨の返還が求められ、実施される動向の中にあります。先住民族への日本政府およびアイヌ政策推進会議の真摯な対応を強く要請します。
2011年7月12日



歩いて5分ほどの留萌の海岸はウニだらけ。夏に留萌に遊びに来たい方いませんか?


数日前の沖縄タイムス(2011年7月8日 09時25分)に、沖縄の差別状況を国連で訴えるという記事が出ていました。以下、紹介します。

沖縄の差別状況 国連で訴え
 琉球大学大学院1年の知念幸見さん(23)が、11日からスイスのジュネーブで開かれる国連欧州本部の「国連先住民族の権利に関する専門家機構」の会議に参加、米軍基地が集中する沖縄の現状や差別撤廃、日米両政府への要望などを訴える。ことし、日本からの参加者は知念さん1人で「今ある沖縄の問題を先延ばしにせず、強く訴えたい」と意欲的だ。
 知念さんは、所属するNGO「琉球弧の先住民族会」の活動の一環で、「意思決定機関の参加と先住民族の研究」「国連先住民族権利宣言」の二つの議題で参加、沖縄の現状をスピーチする。
 持ち時間は各5分。琉球・沖縄人の代表として日米両政府と同専門家機構に対し、独立した人権機関の設置や沖縄の差別状況の調査研究、侵略や支配を強いられてきた沖縄への謝罪要求―などを行う予定だ。
 2008年にハワイ大に留学した際、現地で失われつつある言語や文化の復興に向けた強い運動に心を動かされた。「大国に支配されてきた歴史や今もある基地の駐留など、沖縄とハワイは似ている。沖縄でも声を上げていくことが必要だと思う」と語る。
 県民の思いを無視して基地が集中する現状や、オスプレイの配備決定などを問題視し、「日本政府は意図的に構造的な差別をしているように感じる。わずか5分でも、マイノリティーの人々の声を真剣に受け止めてくれる貴重な時間。しっかり訴えたい」。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-07-08_20246/


知念さんといえば、昨年の9月4日blogにて、「先住民族の権利に関する国連宣言」採択3周年記念集会の際に彼女の発題を伺った時のことを書いていますが、頑張っておられますね。応援しています。


美瑛の丘から


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6月末からの活動報告

2011-07-08 20:16:31 | インポート
少し遅れましたが、いくつか報告をUPします。

まずは6月24日札幌で世界先住民族ネットワークアイヌ(WIN AINU)の第1回学習会に参加しました。
講師は阿部健一さん(人間文化研究機構 総合地球環境学研究所教授)。
東ティモールのコーヒーと日本との橋渡しをされていて、「モノ」で人と人をつなぐことに関して興味深い話を伺えました。コーヒーという「モノ」には『物語』があり、それによって人がつながっていき、さらなる『物語』ができてくる、と。
条件の厳しい中、「右肩上り」の運営ではなく、地道に誠実に「モノ」でつながっていこうというあり方は、清水義晴著「変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから」(太郎次郎社)の内容に近く、共感できました。東ティモールにも行ってみたくなりました。

6月28日はさっぽろ自由学校“遊”の連続講座「サケとわたしたち」第3回講演で山田伸一さんの「明治期北海道のサケ漁禁止とアイヌ民族」を聞いてきました。
いろいろなところで目からうろこが落ちた内容でした。大変、感謝です。
千歳川流域を例にして、歴史資料に当たりながら、開拓使(1869~)や札幌県(1882~)がどういった理由・手順で禁漁にしていき、アイヌ民族が「密漁者」とされていったかを見ていきました。

1878年に支川は「魚苗」が生育する場所だからと支川の禁漁を通達。しかし、アイヌ民族に対して、その代わりの生業を開拓使は考えていたかというと全くなく、翌年に勘農事業の準備を始めたと。しかも、結果は、勘農は金がかかるからやめた。(ということは・・・自分たちのもっともらしい理由によって禁止だけして、アイヌ民族をほったらかした)。

内村鑑三は千歳川の調査に行き、禁漁のままではまずいのではないか、密漁を黙認しないとアイヌが飢餓に陥るぞという報告書(復命書)を出しているとか。実際にその後に相当深刻な飢餓が発生(明6~8)したとか。いろいろもう少し反芻しつつ、その後に役立てたいと思います。
幸いに、当日、山田さんから開拓記念館研究紀要に掲載された「千歳川のサケ漁規制とアイヌ民族」(32号)、「遊楽部川へのサケ種川法導入と地域住民」(36号)、「札幌県による十勝川流域のサケ禁漁とアイヌ民族」(37号)を頂戴したので、後日、じっくり読ませていただこうと思います。感謝。


7月2日は、キリスト教独立学園3年の30名(62期生)が、修学旅行のプログラムとして二風谷アイヌ民族フィールド・ワークを行い、協力してきました。
瀬棚の学園卒業生らの牧場で各々約一週間の酪農実習を終え、その日の早朝に瀬棚を出発、昼に二風谷へ。疲れているにもかかわらず、とてもまじめに二風谷の町のこと、アイヌ民族のこと、二風谷ダム裁判のことを聞いてくれました。萱野茂さんのアイヌ民族博物館に移動し、萱野志朗さんよりアイヌ語普及のことに関してお話を伺いました。
質疑では、道外アイヌの生活実態調査の数字についての質問や、後世に何を一番伝えて行きたいかなど、事前に調べているものや素朴な疑問を聞くなど、わたしもハッとさせられたひと時でした。
毎年、お礼にアカペラのコーラスをしてくれますが、今回もとても素敵でした。


熱心に萱野志朗さんのお話を聴いているところ

先住民族の10年News 第172号(2011/3/19発行)に、手島武雅さんの「文化人類学会の『研究倫理見解』再訪-遺骨問題を年頭に-」が掲載されており、やっと読めました。
手島さんは日本学術会議の人類学・民族学研究連絡委員会が出した「アイヌ研究に関する日本民族学会研究倫理委員会の見解」 (以下「見解」 1989年)を、この度の政策形成過程における政治的意味合いを持つ文書として細かく考察しています。
「見解」本文は有識者懇談会第2回会合参考資料(2008/9/17)に入っていますので、そちらのサイトから確認できます。
「見解」には、アイヌを「民族」と認めながらも先住民族とは一切明記していない(少数「民族」に留まる)、さらには先住民族の権利には一切触れていないことを指摘。また、過去のアイヌ民族文化研究は「アイヌ民族の意思や希望の反映という点においても、アイヌ民族への研究成果の還元においても、極めて不十分であった」と反省してはいるものの、その反省に基づいて出される見解は「研究の発展」であり「研究体制の確立」、そして、アイヌ民族出身の専門家研究者の育成」であって、大事なことができていない、と。
大事なこととは“滅びゆく文化(人種・民族)”という「偏見と植民地主義との関係を文化人類学会が機関として厳しく検証してこなかった」ことだと指摘。
また、先住民族の権利に関する国連宣言採択を受けて、まずは1989年のこの「研究倫理見解」の見直しをすべきだし、民族学会に限らず、先住民族の権利宣言に則ったもっと厳しい研究倫理とその実践の仕組みを、先進事例を参考にして構築すべきだ、と。
なるほど、これらの反省がしっかりしていないから、不信感になっているのかと納得。そして、文化人類学者だからこそ、先住民族の権利に関する国連宣言にしっかりと則って先々を歩んでいって欲しいですね。




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「『民族共生の象徴となる空間」作業部会報告書」

2011-07-07 13:14:13 | インポート
北海道新聞の社説:アイヌ政策 「象徴空間」に知恵集めて(6月28日)に、「象徴空間」に触れている記事が出ました。しかし、慰霊施設と研究施設を兼ね備える問題については触れていません。そればかりではなく、気になる一文があります。
「(象徴空間の)具体的な内容や工程には触れず今後の課題として、新たな部会を設けて作業に当たる」
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/301925.html


この作業部会はどこまでをどのような審議をしたのか知りたくて、早く部会まとめを読みたいと思っていましたら、第3回アイヌ政策推進会議(2011/6/24開催)の配布資料がUPされました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/dai3/haifu_siryou.pdf

80ページを超える資料なのでエコモードでA4に2頁分を縮小し、それを表裏でプリント。
その中に「『民族共生の象徴となる空間」作業部会報告書」(以下、「報告書」)が入っていましたが、確かに具体的な内容や工程には触れていません。
そして、この「象徴空間」は、
「国際的にも追求されている将来の豊かな共生社会を構築し、将来の世代により良い社会を残していくための象徴として重要な意義を有する国家的なプロジェクト」(P.1)であると述べています。

が、疑問が沸いてきます。

第11回作業部会会合(2011/2/23)の議事概要には、
「各大学等に存在するアイヌの人骨の状況、それらの人骨が各大学等に存在するに至った経緯等の詳細について不明な点があることから、まず、各大学等における保管状況、存在するに至った経緯、個々の取組等に関する調査・整理が必要である。」(P.3)
とありますが、その後の会合では、「存在するに至った経緯、個々の取り扱い等に関する調査・整理」を行ったかは述べられておりません。行ったのであれば調査結果が出るはずですが、ないのを見ると調査はしていないのか?

そして、この度の「報告書」には、
「各大学等に保管されているアイヌの人骨について、遺族等への返還が可能なものについては、各大学等において返還するとともに、遺族等への返還の目途が立たないものについては、国が主導して、アイヌの人々のよりどころとなる象徴空間に集約し、尊厳ある慰霊が可能となるように配慮する。」(P.8)
「集約の対象となる人骨を特定し、人骨の返還や集約の進め方に関する検討を行うため、各大学等の協力を得て、アイヌの人骨の保管状況を把握する」(同頁)
とあり、「存在するに至った経緯、個々の取り扱い等に関する調査・整理」は抜け落ち、「保管状況」についてのみの把握に留まります。

ごまかしておりますな!

「国が主導」するべきは、各大学の遺骨収集の実態調査を迅速かつ詳細に大学に行わせることであり、どのような差別的な研究がなされたかを明確化し、謝罪することではないでしょうか。
北海道大学に対し、北大開示文書研究会は
「自らの責任において過去と現在のすべてを調査し、その結果をアイヌ民族に説明し、反省と謝罪とともに遺骨奉還と副葬品返還のための積極的な手立てをとって下さい。」と要望を出し続けていますが、全く無視されたままです。
(さまよえる遺骨たちblog参照= http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/ )

このような不誠実な対応をしている大学に、主体的に返還させようとする「報告書」は問題であると考えます。
かつての北大のアイヌ遺骨・副葬品「発掘」は「盗掘」だったという疑いがかけられている中、北大の関係者がこの作業部会メンバーの中で重要なポストとしておられるのですから、率先して北大の調査から始めるべきではないでしょうか。


また、「過去に発掘・収集されたアイヌの人骨等について尊厳ある慰霊が可能となるような施設が必要とされ」(報告書P.2)ると言いながら、この文脈の後半には「集約した人骨については、アイヌの人々の理解を得つつ、青布歴史を解明するための研究に寄与することを可能とする」(同)とあります。研究材料にすることと「尊厳ある慰霊」とが同時に出来ると考えていることにわたしは疑問を感じます。

そして、「尊厳ある慰霊」はアイヌ人骨「盗掘」の経緯と検証という、遺族への返還のための努力なくしては出来ないと考えます。北大においてはその努力が全く見られないばかりか、安易に「返還」の名による研究対象化という意図さえ感じます。そして、この作業部会も。
これでは何が「重要な意義を有する国家的なプロジェクト」(報告書1頁)なのでしょう。


富良野のニングル


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