アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

アイヌ政策推進会議宛の要望書

2011-07-13 21:08:25 | インポート
今回のアイヌ政策推進会議での二つの部活報告を読み、北大開示文書研究会がアイヌ政策推進会議および、「アイヌ民族の権利確立を考える議員の会」会員の方たちに「要望書」を送付しました。
http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/
いづれの「要望書」とも、研究会ブログにUPされています。アイヌ政策推進会議宛の文書のほうをここでご紹介します。

アイヌ政策推進会議  座長 枝 野 幸 男 様

小川隆吉
北大開示文書研究会
代表 清水 裕二
代表 殿平 善彦

要  請  文
 アイヌ政策推進会議におきましては、アイヌ民族の意見を踏まえつつ総合的かつ効果的なアイヌ政策を推進するため、審議を続けてこられたことに敬意を表します。
 わたしたちは、北海道大学に存在する、戦前から戦後に至るアイヌ墓地発掘に伴うアイヌ人骨台帳とそれに関連する文書を精査し、当時「研究」の名目で、道内外でおこなわれたアイヌ墳墓「発掘」の真実を明らかにすることを目的に2008年8月に発足した研究会です。
この度、第3回アイヌ政策推進会議にて「『民族共生の象徴となる空間』作業部会報告書」(以下、「報告書」)が提出されました。この「報告書」および今後の進行について要望をいたします。
「報告書」には「過去に発掘・収集されたアイヌの人骨等について尊厳ある慰霊が可能となるような施設が必要とされ」(P.2)とあるように、わたしたちも発掘・収集されたアイヌ民族のご遺骨を丁重に扱うことを願っています。
かつて明治期より戦後に至る間、北海道大学医学部の故児玉作左衛門教授など、人類学関係者をはじめとした研究者が国策を背景にした学問の権威を主張して北海道内外のアイヌ民族の墓地から多数の人骨をはじめ副葬品を発掘しました。アイヌ人骨に関心を持つ研究者はアイヌ民族を「滅びゆく民族」と位置づけ、その研究が急務であると、アイヌ民族との間に誠実な諒解もないままアイヌ墓地の発掘を続け、1000体を越える遺骨を大学に集め、同時に発掘されたたくさんの副葬品も大学に集められました。しかし、発掘された人骨の歴史的経緯やその後の副葬品の扱いは今日に至るも真相は明らかにされておらず、多くの疑問が残された状態のままです。
小川隆吉アイヌ長老会議議長は、真相の解明を願って、北海道大学にアイヌ人骨に関わる文書の開示を求め、大学は一定の文書を公開しました。公開された文書を検討してきたわたしたち北大開示文書研究会は北海道大学に対して発掘された人骨の扱いや副葬品の経過などについて回答期限を付して質問しました。しかし、今日まで、北海道大学から一切の回答を受け取っていません。
この問題は北海道大学のみのものではありません。北海道大学以外の旧帝国大学などにも人骨が収蔵されてきました。アイヌ墓地発掘は明治政府の北海道開拓と植民地政策に伴うアイヌ民族へのレイシズムがもたらしたものであり、アイヌ民族の伝統的追悼儀礼を無視した非人道的な発掘の記憶は今日もアイヌの人々の深い傷となって残されております。アイヌ墓地発掘問題に対する誠実な対応と解決への努力は、今日に残された、まさに『国民的な課題』です。日本政府は政府の責任においてアイヌ人骨問題の歴史的経緯を検証し、その歴史的責任を自覚し、遺骨の収集と今日までの処置に関して、アイヌの人々の意に反して収集した過去を反省し、アイヌ民族への謝罪がなされるべきです。
「共生空間」の整備に伴うアイヌ民族の遺骨を納める慰霊施設を設ける計画について、「報告書」に、「各大学等に保管されているアイヌの人骨について、遺族等への返還が可能なものについては、各大学等において返還する」(P.8)とあります。このことはアイヌ墓地発掘の経緯を検証し、遺族への返還のための積極的な努力なくしては出来ません。北海道大学においてはその努力が全く見られないばかりか、名目的な「返還」にとどめ、研究対象化しようとする意図さえ感じます。
また、遺骨を一か所に集めるなどの安易な解決を図ることがあってはなりません。ましてや慰霊施設と同じ空間に研究施設を設置することは、さらなる研究対象としてアイヌ民族を辱める行為ですから、そうするべきではありません。遺骨に関しては、アイヌ民族への遺骨奉還および静謐な安置と追悼を中心に据えるべきで、研究材料としての扱いを進めるべきではありません。
アイヌ墓地発掘に伴って膨大な副葬品が出土しましたが、それらの多くが行方不明になっています。このことは大学の管理責任にとどまらず、アイヌ民族の財産を散逸させた責任が具体的に問われることになりましょう。人骨問題の解決には副葬品問題の解決も不可欠であると考えます。
さらに、北大では大学所蔵のアイヌ遺骨の砂の洗浄と遺骨整理作業が行われようとしています。そのような行為は遺骨収集の証拠を失わせ、返還の場合の根拠を隠滅することになりかねません。即刻、中止を求めましたが、何の返答もないままです。
このような閉鎖的な対応をしている大学に、遺骨の返還をまかせようとするアイヌ政策推進会議の姿勢も問題であると考えます。アイヌ政策推進会議は慰霊空間へ遺骨を収集する方針を中止し、アイヌ墓地発掘問題の解決を目指して、すべてのアイヌ民族との誠実かつ慎重な対話を開始すべきです。国際的にも、先住民族への遺骨の返還が求められ、実施される動向の中にあります。先住民族への日本政府およびアイヌ政策推進会議の真摯な対応を強く要請します。
2011年7月12日



歩いて5分ほどの留萌の海岸はウニだらけ。夏に留萌に遊びに来たい方いませんか?


数日前の沖縄タイムス(2011年7月8日 09時25分)に、沖縄の差別状況を国連で訴えるという記事が出ていました。以下、紹介します。

沖縄の差別状況 国連で訴え
 琉球大学大学院1年の知念幸見さん(23)が、11日からスイスのジュネーブで開かれる国連欧州本部の「国連先住民族の権利に関する専門家機構」の会議に参加、米軍基地が集中する沖縄の現状や差別撤廃、日米両政府への要望などを訴える。ことし、日本からの参加者は知念さん1人で「今ある沖縄の問題を先延ばしにせず、強く訴えたい」と意欲的だ。
 知念さんは、所属するNGO「琉球弧の先住民族会」の活動の一環で、「意思決定機関の参加と先住民族の研究」「国連先住民族権利宣言」の二つの議題で参加、沖縄の現状をスピーチする。
 持ち時間は各5分。琉球・沖縄人の代表として日米両政府と同専門家機構に対し、独立した人権機関の設置や沖縄の差別状況の調査研究、侵略や支配を強いられてきた沖縄への謝罪要求―などを行う予定だ。
 2008年にハワイ大に留学した際、現地で失われつつある言語や文化の復興に向けた強い運動に心を動かされた。「大国に支配されてきた歴史や今もある基地の駐留など、沖縄とハワイは似ている。沖縄でも声を上げていくことが必要だと思う」と語る。
 県民の思いを無視して基地が集中する現状や、オスプレイの配備決定などを問題視し、「日本政府は意図的に構造的な差別をしているように感じる。わずか5分でも、マイノリティーの人々の声を真剣に受け止めてくれる貴重な時間。しっかり訴えたい」。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-07-08_20246/


知念さんといえば、昨年の9月4日blogにて、「先住民族の権利に関する国連宣言」採択3周年記念集会の際に彼女の発題を伺った時のことを書いていますが、頑張っておられますね。応援しています。


美瑛の丘から


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