アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

「北海道アイヌ政策推進方針(素案)」に関する意見 2021年2月25日

2021-02-25 11:47:00 | 日記

 「北海道アイヌ政策推進方針(素案)」に関する意見を以下の4点に絞って書きました。締め切り(3月2日)が迫っており、あわてて書いたため、変な文になっているかも知れません。述べたい意見を羅列しました。

「北海道アイヌ政策推進方針(素案)」は以下のH Pにあります。http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/ass/pubcom-hosakusoan.htm

 

1.「第2 背景・歴史・現状」の記述について

  3頁上6行目「理科や地理などは教えられず」とありますが、ここに「歴史」を書かないことに差別教育をしていたことを軽減する意図を感じます。アイヌの歴史を教えず、否定し、同化教育を強いたことは重大な点だと考えます。「など」で終わらせるのではなく、より正確な記述を望みます。

 

2.「第4 推進施策 1理解の促進 に関して」

この「理解の促進」は、マジョリティ(和人)へのマイノリティ(アイヌ)理解の促進、すなわちアイヌの歴史や差別の現実の理解を促す内容となっています。しかし、アイヌの実態をより理解することを促進する必要を感じます。

 アイヌ施策推進法の第4条には「何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」とあり、第5条には、アイヌ差別禁止について「国と地方自治体が・・・施策を策定し、及び実施する責務を有する」と定めています。しかし、この法では、罰則規定がなされておらず、これは単なる「お願い」でしかありません。さらに、「北海道におけるアイヌ施策を推進するための方針」(以下、「道施策方針」)も、罰則規定はなく、加えて、差別解消のための啓発には触れているものの、実際に差別がある中で、どのように対応するかが欠けています。それゆえ、「道施策方針」案のパブリックコメントで、罰則規定を盛り込むよう提案をいたしました。しかし、意見としてのみ聞かれたままでした。

 2017年度に道が実施した「北海道アイヌ生活実態調査」の結果を出さないまでも、差別の現実はあり続けています。また、昨今のインターネット上では、頻繁に「アイヌはもういない」などの発言や、「アイヌは不当な利権を受けている」などというデマやヘイトスピーチが綴られています。また、先日も40代女性がこどもの頃から今に至るまで差別発言を受けていることが北海道新聞に掲載されていました(2021年2月15日夕刊紙面)。

 アイヌ施策推進法を制定する国会審議において、「民族としてのアイヌなんてもういない」という発言はヘイトスピーチであることが認められ(衆議院 国交委員会 4月10日)。また、「明確にアイヌの人々を差別することを目的としたヘイトスピーチは本条に反するもの」「第4条においては、アイヌの人々に対してと規定しており、必ずしも個人を対象としない差別的言動も本条に反する」と答えています(参議院 国交委員会4月18日)。これらのことから、特に差別を目の当たりにする道における「道施策方針案」には、差別(ヘイトスピーチ)に関する具体的な罰則規定を盛り込むべきでした。

 「道施策方針」の「3 その他アイヌ施策の推進のために必要な事項」にある「アイヌの人たちの課題やニーズ」、「アイヌの人たちの意見を十分踏まえる」とありますが、参考に挙げている「平成29年度アイヌ実態調査」だけでは、正確な実態とは言えないと考えます。

 カナダの場合は政府が主導して1991年から先住民族委員会を設置して詳細な調査を行い、2008年に「真実と和解のための委員会」をつくり、さらに寄宿舎学校問題を調査し、2015年に「報告書」を出します。そこには、「同国の同化政策を文化的ジェノサイドとよび」、政府に対して先住民族と和解するための具体策を国連権利宣言に基づき94項目あげて、その実行を迫りました。日本政府はそのような動きに見習うべきですし、道においてもそのような提案を積極的に行うべきと考えます。特に道は、自分の居住地域において差別があからさまにあります。道として差別の現実を聞き取り、癒しの対策を練ることを願います。

 

3.「第4 推進施策 3文化の振興 のアイヌ語に関して」

  台湾政府は16原住民族を国内の先住民族と認め、各民族の語学研修を促進させています。アイヌ語もより学びの場を増やすことが求められています。また、ニュージーランドでは地名表記がマオリ語と英語の並列表記となっています。旭川市教育委員会が独自に、アイヌ語と日本語で並列表記した地名看板を2005年より現在までに37箇所に設置しています。道も積極的に看板設置を推進することを願います。

 

4.「第4 推進施策 4地域、産業及び観光の振興 に関して」

昨年の2020年8月17日、北海道浦幌町のアイヌ民族グループ「ラポロアイヌネイション」(旧浦幌アイヌ協会)が、祖先がサケを捕獲していた川でのサケ漁は先住民族の権利だとして、国と道を相手に漁業権を認めるよう札幌地裁に提訴しました。ラポロアイヌネイションは、浦幌町内に居住・就業するアイヌで構成されているアイヌ民族集団であり、現在の構成員のほとんどは浦幌町を流れる浦幌十勝川の左岸沿いおよびその周辺に存在していた複数のコタン(アイヌ集団)の構成員の子孫です。明治になるまで浦幌地域を支配領域(イオル)とし、サケをはじめとする自然資源を独占的・排他的に使用し、利用していました。このうちサケはアイヌにとって主要な食料であると共に重要な経済活動の交易品としての資源でもありました。訴状では原告ラポロアイヌネイションが十勝川河口地域でのサケ漁を行う権限を現在においても有していると主張し、それを認めることにより、同地域のアイヌが経済的自立のために極めて重要だと付け加えています。先住権を認め、経済的自立にもつながる政策推進方針を望みます。以上。

留萌はまだまだ吹雪く日があります。しかし、確実に日は長くなってきていますし、春が近いことを感じられます。この23年、毎年のように暴風雪警報で大荒れの数日を過ごして来ました。その時は建物も揺れ、どうなるかと不安になります。しかし、嵐は必ず終わり、その後に暖かい日差しがわたし達を包み込むことを体験して来ました。希望をもって歩みたいと願っています。