アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

川村カ子トアイヌ記念館 リニューアル!

2018-07-25 08:48:31 | 日記

川村カ子トアイヌ記念館は1916年に現在の三代目館長川村シンリツ・エオリパック・アイヌ(先祖を大事にする人)さんの祖父イタキシロ(言論正しい)氏が記念館専用のチセ(家)を建て、先祖や近隣の人たちが使用いていたアイヌ民具を展示したのが始まり。

創立102年の歴史を持ち、道内では最も古い記念館です。

創設当時、すでに十数箇所に散在していたアイヌ・コタンはみな近文地区の「給与予定地」に追いやられて「近文アイヌ」と俗称され案内札まで建てられていました(案内札は1970年代まであったと言う:川村談)。さらに1900年に第七師団が設置されたのをきっかけに和人が激増し、多くの和人が「見物」に来ました。皇族が来た時など、「旧土人学校(豊栄小学校)」では、授業をやめて接待のためにイオマンテ(熊送りの儀式)の真似をさせ踊らされたようです。そのような見世物扱いをやめさせるべく、イタキシロ氏は記念館を建て、アイヌとしての誇りをもってアイヌ民族とその文化を伝えるべく私財を投じたのです。

館内にはアッシ織りの着物やコタンコロカムイ(エゾしまふくろう)の剥製、砂澤ビッキの作品など約300点が展示・収蔵され、見ごたえがあります。建物の周りには、クネニ(弓つくる木: イチイ)や、イナウ・ニ(御幣つくる木:ミズキ)、トレップ(エゾオオウバユリ)など、アイヌが生活に常用していた木や植物も多く植えてあり、アイヌ語の地名であるチカップ・ニ(鳥・いる処:近文)の名のごとく、多くの鳥も憩いにくる豊かな場所です。

今年の年初めは旭川も豪雪で、2月末に旭川星光教会の牧師ファミリーと当センターに実習に来ていたRさんと共に二日ほど記念館屋根の雪おろしを手伝いました。ところが、3月末に落とし残していた部分が屋根ごと落ちてしまい、大惨事に。急遽、旭川の牧師達にも協力を得て、排雪と壊れた屋根や展示品の撤去作業を手伝いました。

数ヶ月たった昨日(7/24)、久しぶりに記念館を訪れると、屋根が落ちた部分が再建され、とてもおしゃれに変身。

さらに、展示コーナーもアイヌ民族文化財団の協力のもと、とても見やすくリニューアルされていました。ぜひ、この夏にお訪ねください。

川村カ子トアイヌ記念館HP

              

来たる7月27日(金) 夜7時半より、NHKでシリーズ北海道150年第2週「アイヌ民族 家族の物語」に記念館が紹介されます。

http://www4.nhk.or.jp/P2867/


大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況等に関する調査 調査票

2018-07-10 12:46:30 | 日記

第31回アイヌ政策推進作業部会の議事概要が出ました(第31〜34回の議事概要はしばらく出されていませんでした)。第31回は昨年の2017年4月に開催されていたのに、1年以上も未公開のままでした。

内容を見ると、最初に大学等におけるアイヌ遺骨の保管状況の再調査結果の報告があり、「これらの資料については、今後、文部科学省のホームページ等で公開をする予定」とありますが、再調査結果をクリックして見ることができます。

また、「これからのアイヌ人骨・副葬品に係る調査研究の在り方に関するラウンドテーブル最終報告書」に関する件が審議されています。この概要はこちら

この「(3)研究の対象となりえる遺骨と副葬品」には、「研究倫理の観点から見て研究対象とすることに問題がある」として、研究対象にしないとする4項目が記されています。その4番目には

iv・ 収集経緯が不明瞭であるものや時代性や埋葬地に関する情報を欠如するものや資料の正当性を担保する基本的データが欠如するもの。そのほか調査行為自体に研究倫理の観点から見て学術資料として活用することに問題を含むもの

とあり、現在、大学等に「保管」されている遺骨が該当するのですが、ここには以下の但し書きがつけられています。

なお、iv」の条件に該当するもののうち、アイヌを交えた検討と判断の結果として、研究の有効性がしかるべき手続きを経て保障される場合には、限定的に研究を行う可能性も残される

この、「アイヌ」は「北海道アイヌ協会」を指すのか、個人のアイヌを指すのかは不明ですが、数あるアイヌグループの一団体だけ、あるいは個人を交えて「検討と判断の結果」で研究が出来ると書かれているのです。

 

北大開示文書研究会のメンバーが『大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況等に関する調査 調査票』の開示請求をし、開示されたデータファイルを研究会サイトで見ることができます。こちら

じっくりと確認していこうとおもいます。北大、札医大に関して状況は把握できていましたが、他の10大学は初めてです。東京大学が「保管」しているアイヌ遺骨は全201体のうち、かなりの数を小金井良精が「発掘・発見」し、「調査研究の一環として収集」とあります。「収集場所」も仲間が数えてくださり35の自治体(クナシリやサハリン、シュムシュ島、エトロフ等含む)から掘り出しています。

調査票には、わかりにくいところも多々あります。たとえば、

①大学における調査の結果、個体ごとに特定できたもの(個体ごとに整理)」

②大学における調査の結果、個体が特定できなかったもの(保管している単位ごとに整理)

との分類の仕方。②の表には「成人3 未成人2」と個体が特定できているように読めるところがあるのですが、どういう意味でしょうか。

 

さて、北海道大学のアイヌ・先住民研究センターの研究員である方が、ツイッターで以下の発言をされていることをdon-xuixoteさんの7/2ブログで知りました。

「2020年開館を目指して建設予定の「国立アイヌ民族博物館」ですけどね。必要ないです。そもそもアイヌ民族は博物館なんて欲しがってないです。学芸員予定で採用されたのも和人ばかりで、アイヌ民族にはほとんどなんの関係もない施設です。作る必要が全くない。」 こちら

「そもそも国立アイヌ民族博物館構想はアイヌ遺骨研究施設と、事実上抱き合わせの企画でした。遺伝子研究を狙う人々にとって博物館はいわばダミーでしかなかった。アイヌ遺骨研究計画が頓挫した今となっては博物館を欲しがる人はもういない。作らなくても全く問題ない。」 こちら 

ツイッターをやっていないのでわからないですが、誰でも読むことが出来るのですね。下段の「国立アイヌ民族博物館構想はアイヌ遺骨研究施設と、事実上抱き合わせの企画でした」ときっぱりと言われています。そうだろうとは感じていましたが、確実な証拠をもっておられるということでしょう。「遺伝子研究を狙う人々にとって博物館はいわばダミーでしかなかった」にも驚き。上段の「そもそもアイヌ民族は博物館なんて欲しがってないです」には、わたしの周りのアイヌ民族の方は同意見。「学芸員予定で採用されたものも和人ばかりで、アイヌ民族にはほとんど関係もない施設」という発言は、学芸員予定者のリストを見たということでしょう。アイヌ民族の方の雇用につながらない施設は問題があるのではないでしょうか。

ただ、以前からこのブログでも指摘しているように(例えば最近では6/26記事や上述)、遺骨の遺伝子研究の可能性はまだありますので「頓挫」したとは言えないでしょう。

ひとり芝居の舞香さんが、ご自身の公演「神々の謡」の2公演分のDVDを送ってくださいました。映像がとてもきれい。みなさんに宣伝して、ぜひわたしたちの力で生公演をと願っています。感謝、感謝。

金成マツさんと知里幸恵さんの墓前で祈祷(銀のしずく記念館をお訪ねする度に寄らせて頂いています。この写真は今年の4月にお訪ねした時のもの)。


先住民族に土地を返した事実はある!

2018-07-06 14:32:54 | 日記

don-xuixoteさんのブログの7/2の記事をみると、さる、6月28日に内閣官房の小山参事官とアイヌの参加者が話し合いを持った際に、小山参事官が「世界で先住民族に土地を返した事実があるのですか? 自分たちが調べた限りでは世界で先住民族に土地を返還した事実はない」と言ったとの話(しかし、「これは間接的な情報なので、そういう主旨のことを言ったという程度に読んで戴きたい」とも書かれています)。それに対し、アイヌ側の出席者が「返還した事実があれば、日本もアイヌに返還するのか」と聞いたけれど、小山参事官からの返事はなかった、と。

先住民族に土地を返還した事実があることをdon-xuixoteさんはオーストラリアでの例で紹介(The Guardian, 21 June 2016)。さらに、わかりやすく地図(オーストラリア国立大学のジョン アルトマン教授作成)も紹介して証明しています。地図には1788年の時点では、オーストラリア全土が先住民族のものだったのが1965年には事実上0になり、1960年代半ばから土地回復運動が徐々に進行し、1993年と2013年の時点で増えているのがよくわかります。

また、7/5の記事によると、カナダ政府がモゥホークのガナワーゲ コミュニティに対して土地返還を正式に決定したという新たなニュースを紹介。

 ニュージーランドも過去のニュース記事の記憶では、土地の返還を行なっていたかと。この小山参事官の発言がどういったものだったか真実を知りたいものです。そして、誠実に土地返還を含めた先住権の審議をするべきだと考えます。ちなみに、先住民族の土地への権利に関して2007年に採択された国連の先住民族権利宣言ここでは、25条から28条に書かれています。

第25 条 【土地や領域、資源との精神的つながり】 先住民族は、自らが伝統的に所有もしくはその他の方法で占有または使用してきた土地、領域、水域および沿岸海域、その他の資源との自らの独特な精神的つながりを維持し、強化する権利を有し、これに関する未来の世代に対するその責任を保持する権利を有する。

第26 条 【土地や領域、資源に対する権利】
1.先住民族は、自らが伝統的に所有し、占有し、またはその他の方法で使用し、もしくは取得してきた土地や領域、資源に対する権利を有する。
2.先住民族は、自らが、伝統的な所有権もしくはその他の伝統的な占有または使用により所有し、あるいはその他の方法で取得した土地や領域、資源を所有し、使用し、開発し、管理する権利を有する。
3.国家は、これらの土地と領域、資源に対する法的承認および保護を与える。そのような承認は、関係する先住民族の慣習、伝統、および土地保有制度を十分に尊重してなされる。

第27 条 【土地や資源、領域に関する権利の承認】 国家は、関係する先住民族と連携して、伝統的に所有もしくは他の方法で占有または使用されたものを含む先住民族の土地と領域、資源に関する権利を承認し裁定するために、公平、独立、中立で公開された透明性のある手続きを、先住民族の法律や慣習、および土地保有制度を十分に尊重しつつ設立し、かつ実施する。先住民族はこの手続きに参加する権利を有する。

第28 条 【土地や領域、資源の回復と補償を受ける権利】
1.先住民族は、自らが伝統的に所有し、または占有もしくは使用してきた土地、領域および資源であって、その自由で事前の情報に基づいた合意なくして没収、収奪、占有、使用され、または損害を与えられたものに対して、原状回復を含む手段により、またはそれが可能でなければ正当、公正かつ衡平な補償の手段により救済を受ける権利を有する。
2.関係する民族による自由な別段の合意がなければ、補償は、質、規模および法的地位において同等の土地、領域および資源の形態、または金銭的な賠償、もしくはその他の適切な救済の形をとらなければならない。(市民外交センター仮訳 2008.09/21)

オオアカゲラ

いましがた、文科省情報公開係から仲間が開示請求していた『大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況等に関する調査 調査票』のデータファイルが届き、北大開示文書研究会サイトにアップされました。こちら

北大・札医大は以前に開示請求し、状況は把握できていましたが、それ以外の各大学アイヌ遺骨収蔵状況が記されています。各地のアイヌ民族に届きますように。


旭川アイヌ遺骨返還

2018-07-03 15:00:21 | 日記

さる、6月24日に旭川の旭岡墓地にてアイヌ遺骨返還にともなう再埋葬の儀式が行われたとのニュースが報じられました。手元に旭川遺骨返還裁判ニュース『ヤイコ ホシピレプ(自らに帰させるもの)』No.5がありますので、その内容をご紹介します。

昨年の7月に旭川アイヌ協議会の川村エオリパック・アイヌ会長と同協議会が旭川から持ち出されたアイヌ遺骨の返還を求めて北海道大学を訴え裁判を起こしました。5月29日に和解が成立しました。和解決定後の記者会見で川村さんらはこのように語ったとニュースにあります。

「1985年5月にウタリ協会(当時)の皆と北大(アイヌ納骨堂)に行った時、頭骨に旭川ナンバー1から旭川ナンバー5とマジックで書いてあるのが5つあって、『返してくれ』と言ったら、すぐに返してくれた、あの頃は。そして、旭川に帰ってきて市長に言ったら、納骨堂をすぐ作ってくれて、8月には北大が車で5体を運んで来て、一緒に慰霊もやってくれて納骨堂に納めた。それが、今回は、新たに見つかった2体見つかったと報告書(2013年3月)に書かれたきりで、返せと言っても返事がない。うかうかしていたら、2020年に白老にできる慰霊施設に、北大ばかりではなく全国にある遺骨と合わせて1600体、まとめてしまって、しかもそれを研究のためにレンタルもすると言うんだ。50年も100年も研究材料にされてきたのをまだそのままにすると言うんだから。自分の先祖、同族を売り渡すようなことは許されないでしょ。だから、他の地域にも出かけていって、返還運動を始めようと誘うんだけど、川村は過激派だから会うななんていう邪魔が入って中々動き出さないね。この裁判、結局は謝罪もないし、行方不明のタマサイもそのままだけれど、一時も早く遺骨が故郷に帰ってきて土にかえせるならそれで何より満足だということで和解するんだ。」

 わたしは一度も裁判にも行けず(再埋葬当日も日曜日であったために参列できず)、詳しいことが分からずにいましたが、この記者会見の発言はたいへんわかりやすく説明されています。このような報道はわたしの観た限りでニュースには流れていませんでしたので、ここでご紹介しました。

和解調書によると、85年に返還され納骨堂に納めていた5体のうちの4体—その内の2体は「散らばっていた骨盤や手や足の骨を取り戻した」もの(残り1体の遺骨は身元確認の可能性があるため調査)と、今回返還された遺骨3体の計7体、そして、副葬品5品を埋葬。「散らばっていた」骨の一部は、北大の納骨堂に納められていた際には骨箱名「常呂不明1」の中に保管されていたといいます。なんともずさんな管理だったことでしょう。

報道によると旭岡墓地にある納骨堂の隣に無事に再埋葬されたとのこと。朝日新聞20180625

 クロユリ

7月8日(日)に一人芝居をされる舞香さんが東京文京区の求道会館にて、知里幸恵没後96年記念公演をされるとのこと。お近くの方はぜひ。

フェイスブックにてご案内のチラシが見られます(こちら 神々の謠

わたしは4回ほど観せて頂いていますが、毎回感動しています。そして、回を重ねるごとに深まっているのに感心します。さる6月8日、旭川での知里幸恵さん誕生祭にてお会いしたのでご挨拶しました。今度、DVDを送ってくださるとも。楽しみにしております。

7月22日(日)午後1時より札幌エルプラザにて、シンポジウム「アイヌの視点で問う『北海道150年』」チラシは以下の通り。

 

7月29日(日)には、台湾ブヌン民族の少年少女合唱団が歌う讃美夕礼拝が札幌北光教会にて午後7時より開催されます。ブヌン民族出身で北海道にて活動されているディヴァン・スクルマン宣教師のメッセージと美しい讃美をどうぞ。無料(ただし自由献金あり)。