アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

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チャールズ・ウィルキンソン氏の講演「先住民にサケを獲る権利はあるか?」

2016-08-01 13:02:47 | 日記

さる7月30日に、コロラド大学ロースクール教授チャールズ・ウィルキンソン氏の講演「先住民にサケを獲る権利はあるか?」を聞きました。

チャールズ氏は、インディアン法と自然資源法について全米をリードする学者として有名、かつ、大学の枠を越え、100以上のインディアンリザヴェーションを訪れ、トライブと連邦政府との間の複雑な問題を解決し、立法にかかわり、トライブの代理人として大きな訴訟に関わるなど、多彩な活動をされておられる方。

 

予定時間を1時間も越えると言うハプニングもありましたが、特に後半はアメリカ先住民族とアイヌ民族とをつなげて権利回復への道を示してくれました。

詳しくは、北大開示文書研究会のウェブサイトで紹介されるでしょうから、心に残った一部を要約して紹介します。

チャールズ氏は、2007年の国連によって採択された先住民族権利宣言(以下、「権利宣言」)の重要性を訴えました。以下、講演の内容です。

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1970年代後半にアメリカの弁護士たちは国際法に関しては知識が皆無に等しかった。但し、彼らは国際的な宣言を欲して動き始めた。権利宣言に向けた努力は、先住民族ではないアメリカの弁護士たちによって、そして、このような先住民族の権利確立を強く望んだトライブのリーダーたちによって行われた(1960年代の土地権の争いの延長上)。喜ばしいことに十数年のうちに他国の先住民族がこの動きに共鳴して運動に拍車をかけた。 

権利宣言は詳細に書かれていないという批判もあるが、わたしからみれば非常に詳細に述べられている。つまり、自己決定の権利、言いかえれば主権を求めることによって様々なことが可能になることは明らかだ。主権、自立の概念は集団的権利に適用出来ないという批判もあるが、自己決定権はこの権利宣言に何十回も記述されている。

権利宣言の真髄は自己決定権だとわたしは受けとめている。

江戸時代に北海道は日本の管轄下にありながら、政府によって調整をされていたのはアイヌ民族との交易関係のみであった。当時の各コタンは「蝦夷のことは蝦夷まかせ」と言うように独自の政府機関であり、集団的権利が行使されていた。そして当時の国際法においては、このような状況においてアイヌ民族は土地の所有権があった。つまり、入植者はそこでは住んだり土地開発をしてはならないし、アイヌ民族の漁業権は存分に行使することが可能だったのだ。

明治政府は入植者が移り住み土地を所有し、それを開発することを明治政府は可能にしたが、その際、土地の権利や漁業権を保護するための条約が結ばれなかったと言う破壊的な欠如があった。アメリカにおいては先住民族との間に条約が結ばれ、入植者の土地の開発を阻止する機能をはたした。 

まず、わたしたちは日本政府がアイヌ民族の皆さんに対して、やってはならない不正義を行ったことをきちんと認めさせるべきだ。ポイントは個人を批判することではなく、歴史的に起った不正義を認めさせることだ。先住民族の権利が回復している他国の事例を見ると、このような歴史的不正義を謝罪することは見られる。このような謝罪はその後の活動基盤にもなる。

次に必要なことは、過去の不正義に対し、なんらかの埋め合わせをさせることだ。それは道理にかなったものでなくてはならず、幸いにわたし達は、この度の遺骨返還に見る事ができた。コロラド州の先住民族が白人たちの墓に入り、遺骨を掘りおこしたことことがかつてあった(同じく酷い行為をして、自分たちがやったことを知らせる)。アイヌ民族がそのような行為をしなかったことに感心するし、建設的な対応だったと考える。これから目標とすべきは、アイヌ民族とアイヌ遺骨を保管している大学や博物館とが共同で、アイヌのもとに返還されるよう努力すべきだ。それはアイヌ民族が先祖を敬うという主権の行使にもなるからだ。

道理的対応と言うとき、アイヌ民族の3つの領域があるとわたしは考える。

まず、漁業権。ボルド判決(注)のように、捕獲量の50%をアイヌ民族に渡すとは過剰かもしれないが様々な判決が出ているので審議することは可能だ。

次に土地の返還。現在、住みついている和人を追い出すわけにはいかないが、国有林などは返還可能だ。

三つめは教育。多くのアイヌ民族の若者は学校教育において差別を受けてきた。そのような歴史的待遇を埋め戻すために特別なアイヌ教育はあるべきだ。歴史的なことをしっかりと踏まえた上で、アイヌ民族のこども達青年たちがよい成績をあげることがポイントだ。そして、アメリカのようにアイヌ民族の大学の設立も可能なはずだ。また、アイヌの教育に関する委員会設置も可能のはずだ。

最後にわたしは日本政府と北海道が昔あってはならない酷いことが起ったことを認め、アイヌ民族がいきいきと発展出来るよう努力することを望む。

注:ボルド判決:先住民族が慣習的場所で捕れるサケの全漁獲高の50%を捕る権利を認めた1974年の判決

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自己決定権の重要性を訴えていた内容に納得が行きました。

さて、北海道新聞7月29日付の紙面に、アイヌ民族に関する「新法」制定検討作業部会についてのニュースがありました。以下に記事があります。北海道新聞  http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/politics/politics/1-0298294.html

当センターニュースBlog http://blog.goo.ne.jp/ivelove/e/4e69b9c7864059e91cbd9e566e7c9c83

 この「新法」は、あくまでアイヌ民族の生活・教育支援を目的としたものであり、自己決定権は論外ということになるのでしょうか。

 

外観だけですが、やっと行くことができた蝦夷三官寺のひとつ 、様似の澍(とうじゆ)院。