アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

アイヌ遺骨返還裁判 第1回口頭弁論

2012-12-04 17:38:41 | インポート
さる、11月30日、札幌地裁でアイヌ遺骨返還裁判の第1回口頭弁論が行われました。

雪が降る寒い中、裁判所に撮影が入るということで裁判所の前で横幕「北海道大学はアイヌ民族人骨を返還せよ」を掲げ、記念撮影後、いざ法廷へ。
この日、三人の原告の中のお一人である城野口ユリさんが意見陳述を読み上げました。
陳述書は「さまよえる遺骨たちブログ」にて読めます
http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/

陳述書には、ユリさんの母親がカムイノミの度にアイヌ語で節をつけて墓を掘られて情けない」、「骨をもっていくなんてとんでもない。エカシ、許してくれ。」と繰り返していたこと、そして切実な願いを込めた遺言を残していたことが述べられています。
以下、引用します。

母が亡くなる2ケ月前のことです。母は私に突然、「ユリに伝え残したい事がある。よくよくしっかり聴け!オラは何時死んでも悔いはないが、先祖に対して申し訳ない事がある。」と語り始めました。「北大病院の医者(和人=シサム)達が、黙ってオラのエカシ(孫爺)やフチ(孫婆)、アチャ(父)、ハボ(母)達や周りのお墓を掘り、穴だらけになっていたのが情けないんだ。お前も見たので覚えているだろう、ユリ。オラは何時どうなってもかまわないが、先祖のもとに行った時、『マツ!お前はその年まで娑婆にいて何をやって来たんだ!折角収まっているオラ達先祖のお骨をコタンに戻してもらう事ができなかったのか?』とオテッキナ(怒鳴られる)と思うと、死にきれないのだよ。ユリ、頼むから北大にあるオラの先祖のお骨を杵臼コタンに返して欲しい。何とか努力してくれ!」
そして、「北大を訴えて罰金も取れ」と涙を流しながら手をぎっちり握って離そうとしなかった、と。

さらに、母親とご自身の思いとして、以下の質問と要望に早急に答えて欲しいと訴えました。 
①なぜ、どういう理由で北大はアイヌに無断でお墓を掘り起こしたのですか?      
②そのお骨を、北大はどのように使ったのですか? 
③お墓の遺体には、宝物(刀・タマサイなど)が必ずありますが、それはどうしたのですか?
④遺骨が眠っていた杵臼コタンの墓地に、遺骨を元通りに戻して欲しいのです。一緒に埋葬されていたタマサイや耳飾りや刀も埋め戻してほしいのです。 
⑤母は54~5年間もの間、悔しくせつない生涯を過ごしました。その償いを誠意を持って示して欲しいのです。お金には変えられない心の問題でありますが、損害賠償や慰謝料などでの形で、謝罪の心を示してほしいのです。


「ほんとうは裁判をしたくなかった」と口頭弁論前の打合せで城野口さんはわたしたちにつぶやきました。しかし、陳述書にも記載されているように、2011年12月に、北大総長宛に、先祖の遺骨と副葬品の返還と謝罪を求める申入れたにも関わらず、北海道大学の態度はろくに回答もせず、とても不誠実なものだったため裁判に踏み切ったのだ、と。

「きちんと返事をしてほしい」との切実な声に、裁判長が被告代理人に「この意見陳述に対して応答するかどうかも相談して下さい」とひとこと述べ、次回の打ち合わせに入りました。

さて、原告側代理人(弁護士)の説明によると、北大側は訴状に対する答弁として争う姿勢を示しつつ、原告が祭祀継承者であることを裁判所が判断するのであれば、それに従って返すと述べているとのこと。
いやいや、「発掘」して持ち去り、「保管」し「研究」していた側が、そのご遺骨をいつ、だれが、どのように(どなたの遺骨か、どのような承諾を得て、どのように保管・研究したのか)などを徹底的に調べ、明らかにして、丁重に返還するのが筋なのではないでしょうか。
この答弁は問題だらけと感じました。答弁書について詳しくは是非とも北大に問い合わせてください。


金成マツさんと知里幸恵さんのお墓

12月1日は足をのばして金成マツさんと地理幸恵さんのお墓参りをし、裁判のことやアイヌ民族の権利回復を願って墓前祈祷。
その後、一年ぶりほどで知里幸恵銀のしずく記念館を見学。副理事・事務局長の浅野さんとお会いし、金成マツさん情報をいろいろと伺うことが出来ました。浅野さんは独自の調査でマツさんについてまとめあげておられるとのこと。現在、上・中・下刊の上が出来上がっていました。お互い諸情報を目を輝かせながら交換。完成を楽しみにしています。

午後は白老でNHK室蘭放送局開局70周年記念「アイヌの神様ものがたり」「影絵:ポロ・オイナ~超人アイヌラックル伝~」全編を鑑賞。
影絵は1時間ほどの大作で、OKIとMAREWREWによるライブ演奏もあり、とてもよかったです。
最後のOKIの原発反対に対するメッセージは心に響きました。

「絵本:セミ神さまのお告げ」(古布絵制作・再話/宇梶 静江)の読み聞かせもよかったし、アイヌ民族博物館の皆さんによる歌や踊りも楽しかったです。一緒に踊ろうとの呼びかけに、たっくさんのこどもたちが前に来て楽しく踊ったのに感動!
これらの様子は近くNHKで放送されるとのことです。放送時間が分かり次第、お知らせします。お見逃しなく。



台湾九族文化村の踊り

さっぽろ自由学校「遊」の後期連続セミナー「アイヌ先住権とはなにか」が今週の水曜日から開催されます。
先述のアイヌ遺骨返還訴訟の原告代理人(弁護士)である市川守弘さんが4回に分けてお話してくださいます。楽しみですね。以下、ご案内。

アイヌ問題として先住権という言葉は出てきても、法学からのアプローチが乏しく、その中味について議論が尽くされていません。国際的視野にたって、アイヌ法を一から考えよう!
●日 時  2012年12月5日(水)開講 全4回  月1回水曜 19:00~21:00
●会 場  さっぽろ自由学校「遊」(札幌市中央区南1条西5丁目愛生館ビル2F)
●受講料  一般 4,000円 会員・学生・アイヌ民族3,200円
●講 師  市川守弘(弁護士)
①12/5 アイヌ問題を法的に考える
②1/16 アメリカ先住民法から学ぶこと、特に主権論
③2/6  アイヌ先住権を具体的に考える
④3/6  国の政策との対決、今後どう取り組むか
URL: http://www.sapporoyu.org/



裁判後の報告会の様子