アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

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遺骨を研究材料にすることへの疑問

2016-12-31 19:56:25 | 日記

大晦日です。今年中に書かなければならないと考えていたことを短く書きます。

前回に書いたことですが、ご遺骨の「研究資料として供する」という決定は北海道アイヌ協会の理事会で決定されたものだとのこと(第18回作業部会議事ココ)です。しかし、その後の意見で、どなたか(内容からしておそらくアイヌ民族の委員)が、それは「北海道アイヌ協会の会員全員の一致の意見ではない、一部の人たちがこういうものを出してきているだけで、これを読んだら怒るアイヌがいっぱい出てくる」と反対意見が出ていました。 

以前にもご紹介しましたが、平取アイヌ協会の木村二三夫副会長も、反対の意見をFMピパウシで述べられています。12/19放送の原稿を頂き、ご本人から「どんどん広めて」との了解を得ましたので、ここでご紹介します。

「・・・お聞きのリスナーの皆さん、そして全国、全世界の人達にもこの集骨、盗掘の歴史の事実を知ってもらいたい。遺骨も一人の「人間」である事を。あっちこちのアイヌ墓地から遺骨を集骨、盗掘して学者達の意のままにされたばかりか。外国へ売り飛ばされる、そんな非人道的な歴史の数々。今からでも遅くない、国、大学、学者たちは非を認めて償いをするべきではないか。それが人の道ではないか。それにはまず、先人達「アイヌ」の思いをどう受け止めるか。「先人達の思い」とは。尊厳ある慰霊施設を言われている白老だが、30数余年大学の納骨堂と言う牢屋に押し込められ、白老へ遺骨され人権も尊厳も無視され、研究材料としての順番を待つ事を、先人達は決して望まない。むしろ、この場所は人権尊厳を無視し踏みにじられる最悪の場である。一日も早く故郷の地へ帰り安眠出来る事を願っていると思う。白老へ遺骨することは「人でなし」の行う行為である事に、関係者には気ずいてもらいたい。(以下、略)」 (原文まま)

怒っておられる事が伝わる内容です。「研究材料としての順番を待つ事を、先人達は決して望まない」と、平取から盗掘して北大にある遺骨も白老へ集骨させず、平取へと返してもらうのだ、研究材料にはさせないぞとの強い思いを述べられています。

木村さんだけではなく、現在、遺骨返還訴訟を起こしておられる紋別アイヌ協会の畠山敏会長も(11/25和解し返還決定)、浦幌アイヌ協会の差間正樹会長と協会員17名も、北海道アイヌ協会理事会と意見の異なる主張をし、コタンの土に戻したいと返還を求めておられるのです。その他、複数のアイヌ民族の方から、わたしは個人的に返還を希望されておられることを伺っています。また、まだこのアイヌ協会理事会の決定をご存じない協会員の方はどう感じられるのでしょうか。そして、これらの反対意見をアイヌ協会理事会はどう聞くのでしょうか。 

内部ですらそうですが、前回にも触れたように、たとえアイヌ民族のなかでいちばん会員の多い北海道アイヌ協会だとしても、それ以上におられる非会員のアイヌ民族の意見を聞かないのは問題でしょう。

2013年に実施された「北海道アイヌ生活実態調査」ココによると、アイヌ民族の人口は16,786人。そのうち、アイヌ協会の会員数を調べてみたものの、探し方が悪いのかどこにも数字が出てきません(2015年には2,400人とどなたかのお話で伺った記憶がありますが、現時点ではわからなくなっていますので、保留にさせて頂きます。ウイキペディアでは2012年現在の当時支部会員数は3234人とあります。ココ 多い方をとったとしても、道内のアイヌ民族のみなさんの中の20%弱の方しか会員になっていません。残りの80%の方、そして道外に住まれているアイヌ民族の皆さんの意見・要望をどう傾聴するかが問われています。

どうしても木村二三夫さんの原稿をお伝えしたく、今年最後の更新をしました。

新年も皆さまに神さまの祝福が豊かに注がれますようにお祈りします。

 


DNA鑑定

2016-12-30 16:17:45 | 日記

書きたいことがたくさんあるのですが、時間がとれずに年末になってしまいました。ひとまずノートに書き溜めておき、今回は、どうしても書いておきたいことを記します。

北海道大学をはじめ、全国の12大学に個体ごとに特定出来るご遺骨が1636体あり、個体ごとに特定できないバラバラのご遺骨が515箱あると文部科学省の調査(2013年)で明らかにされました。その後も、調査が適当だったことで2016年8月に再調査を行いました(結果は未確認)。さらに、国内の博物館、研究施設にも遺骨があることが判明し、遺骨の数は増えています。

今回、問題にしたいのは、6大学に「保管」されていた「個体ごとに特定できない515箱」について。

東北大(1)、新潟大(17)、東京大(6)、大阪大(2)、天理大学(5)に、北海道大が484箱。

木製の箱に保管されている遺骨が508箱(約99%)、紙製の箱に保管されている遺骨が5箱(約1%)、プラスチック製の箱に保管されている遺骨が2箱。箱の大きさは各大学によりバラバラなので何人の方の遺骨かは不明。こんなずさんな「管理」と「保管」に怒りを覚えます。勝手に盗掘して研究材料にし、ずさんな管理をした大学は、まずは謝罪するべきです。バラバラにされたご遺体を元に戻せと要求するのは当たり前のことと考えます。

 ※ 『大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況の調査結果2013』参照 ここ

過日の道新に、保管されている515箱のご遺骨のDNA鑑定をするとの報道がありました。(北海道新聞 12/23 05:00、12/23 16:47 更新)ここあるいはここ

「有識者会議」とは何か不明でしたが、仲間が教えてくれたところによると、文部科学省の「大学が保管するアイヌ遺骨の返還に向けた手続等に関する検討会」ココのもとにある「DNA鑑定等の在り方に関する作業部会」のことか? しかし、いずれも議事録は見つかりませんので12月22日の会議がこの部会決定のことかは不明です。

この記事によると、515箱のバラバラのご遺骨を「できるだけ一体として特定」するためにDNA鑑定をするというのです。この記事は28日付で訂正が行われ、

「2019年度までに骨学的に同じ人のものであるかどうかを確認するとともに、これによる一体化が難しい場合に限り、アイヌ民族の同意を得てDNA鑑定の活用も検討するという方針を固めた」(24面)と。

人騒がせなものとなりました。23日から5日も経っての訂正で、しかも小さく謝罪もなし。

 

しかし、将来的にDNA鑑定をするとなると、いくつかの問題があります。

まず、バラバラな部位の中には「個体として特定出来ているご遺骨」の一部が混入されている可能性があるのなら、すでに個体ごとに特定出来ているご遺骨も一致させるためにDNA鑑定するということになりかねません。現在、大学等に「保管」されているすべてのご遺骨のDNA鑑定がなされることは大きな問題だと考えます。

まず、鑑定のためにご遺骨がさらに傷つけられバラバラにされることになります。遺骨の尊厳を傷つける行為です。たとえ、1グラムの半分の量であったとしても、です。※1

そして、再度、遺骨は研究材料にされるという問題があります。第14回アイヌ政策推進作業部会(2014年2月28日)ココでの議論で、こんな発言が(おそらく和人の学者?)から出されています。

○遺骨を一体にすることとアイヌ民族の起源などを知るために行う作業は、性別や年齢の特定や仮に行う場合におけるDNA鑑定なども同じ作業とになるので分けて考える必要はないのではないか。

DNA鑑定をしてしまえば知りたい情報が手に入るということでしょう。DNAの保管や管理の倫理はできるのでしょうか。遺伝情報をそっくり流用される可能性も多いです。

また、鑑定によって「遺骨承継者」に返すことが出来るようなことが書かれています。そうした場合、今、生きておられるアイヌ民族の方達のDNA鑑定が必要になります。

このDNA鑑定の議論は第11回作業部会(2013年4月19日)から行われています(※1の発言もココから)。そのときのやりとりでは

○四肢骨と頭骨がバラバラになっている骨については、これが一体になって初めて返還になるのではないか。遺族に返すには、遺骨を一体にする、掘った際の状況に復元するということを考えなければならないのではないか。そのために、DNA鑑定の手法を用いて一体に組み上げることは可能か伺いたい。

○理論的には可能だが、非常に大変な手間がかかるのが現状だと思う。

○骨学的判定だけでは個体特定できない遺骨の全部又は一部をDNA鑑定することによって個体特定できる遺骨が増える可能性があるが、そのための作業は膨大だということか。

○そういうことである。

また、第16回作業部会(2014年4月18日)ココでは、DNA鑑定の専門家として「東京歯科大学名誉教授水口清氏」が呼ばれて手法の解説をしています。水口さんは「(正確な鑑定は)簡単なことではない」と何度もクギを刺しています。それなのに、膨大なお金をかけて行うことの問題があります。

もうひとつ、ご遺骨の「研究資料として供する」という決定はアイヌ協会の理事会で決定されたものだとのこと(第18回作業部会議事)ですが、しかし、その部会でも「北海道アイヌ協会の会員全員の一致の意見ではないですね。一部の人たちがこういうものを出してきているだけで、これを読んだら怒るアイヌがいっぱい出てくると思う。」という意見が出るほど疑問の残るものであり、さらには、北海道アイヌ協会の会員ではないアイヌ民族の意見を聞いていない、すなわち、一方的過ぎるという問題があります。

訂正記事にある「アイヌ民族の同意を得て」は、北海道アイヌ協会という一部の同意ではいけないと考えます。

さて、バラバラの515箱のご遺骨の発掘・発見された場所は、北海道が410箱(約80%)であり、樺太(サハリン)が10箱(約 2%)、千島列島が16箱(約3%)、発掘・発見された場所が不明の遺骨が79箱(約15%)。ということは、436箱の発掘場所が確定出来るということでしょう。それは、杵臼の遺骨返還裁判の和解と同じく、各コタンに再埋葬が可能なご遺骨となり、DNA鑑定の必要のない返還となります。

遺骨訴訟の原告である浦幌の差間さんもバラバラになっているご遺骨の複数の箱を返還対象として引き受ける準備をされています。また、原告のおひとりである小川隆吉さんはこの度のDNA鑑定報道でたいへん怒っておられます。ご遺骨を一刻も早く元のコタンの土へと埋葬するべきだ、と。

 この一年、忙しかったり書けないこともあったりで、更新は少しでした。読んで頂いた皆さまに感謝。新年も皆さまに神さまの祝福が豊かに注がれますようにお祈りします。


紙面掲載された「アイヌ政策の期待と課題は」(朝日新聞11/5付)に疑問その2 

2016-12-07 20:25:51 | 日記

11月5日付の朝日新聞朝刊に掲載された「アイヌ政策の期待と課題は」ここで、引っかかったところを続けます。常本さんはこう述べます。

「米国や豪州などで語られる『土地の返還』『政治的な自決権』といった先住民族の権利実現を直ちに目指すのは今のアイヌと日本の現実になじむでしょうか。」

いわゆる世界の先住民族の権利と日本のアイヌ民族は違うのだから、同じ「権利実現を直ちに目指す」ことは出来ないという考え。これは、アイヌ民族の置かれている状況が特別であるかのように述べていますが、どの国も多くの課題を抱えながらも先住民族の権利実現を進めているわけで、日本だけが特別と言うわけではないはずです。あたかも特別なので時間をかけて多数派を説得しなければ動かない、あるいは、「社会の現実と向き合」って、あきらめなさいとも聞き取れるもので、納得がいくものではありません。

かつて、常本さんはアイヌ文化振興・研究推進機構主催の普及啓発セミナー2000年の講義「アイヌ民族をめぐる法の展開」で、民主主義の多数決の世界では多数派が益になるようなものがないと少数者である先住民族の権利は回復しない、と、アラスカなどの例を挙げていました。そうなのでしょうか?

専門家に伺いたいところですが、たとえば、過去Blogに書きましたが、カナダの場合は政府が主導して1991年から先住民族委員会を設置して詳細な調査を行い、2008年に「真実と和解のための委員会」をつくり、さらに寄宿舎学校問題を調査し、2015年に「報告書」を出します(丸山 2016.2)。そこには、「同国の同化政策を文化的ジェノサイドとよび、政府に対して先住民族と和解するための具体策を94あげ、その実行を迫っている」(前掲)そうではありませんか。そのような提案をし、政府を動かすのが常本さんの役割なのではないでしょうか。

 小樽にあったクリスマスツリー

 常本さんの文を続けます。

「日本国憲法は『法の下の平等』を規定し、特別な扱いを原則禁止していますが、憲法13条では「個人の尊重」を定めている。」

 憲法14条から「特別な扱いを原則禁止している」を強調し、次に、ここでは憲法13条を持ち出して「個人の尊重」で、差別によってアイヌとして生きる選択権がおびやかされているとしています。しかし、まず、前半の部分に関しては、ご本人も委員であった「アイヌ政策の在り方に関する有識者懇談会」の報告書(2009)には、

「事柄の性質に即応した合理的な理由に基づくものであれば、国民の一部について、異なる取扱いをすることも、憲法上許されると一般に解されており、既述のようにアイヌの人々が先住民族であることから特別の政策を導き出すことが『事柄の性質に即応した合理的な理由』に当たることは多言を要しない。さらに、我が国が締結している『あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約』第2条2が、締約国は特定の人種への平等な人権保障のために特別な措置をとることができるとしていることも視野に入れる必要がある。」(P26)

と、あえて国際法(人種差別撤廃条約)まで持ち出して、アイヌ民族への特別な政策をしていいのだと説明しているのです。それなのに、アイヌ民族はそれに当たらないかのような印象を与えている事が問題です。

加えて、憲法13条に「個人の尊重」を示す事によって、個人をあえて強調しているような意図が感じられます。常本さんはご自分の論文で「土地の権利や言語権など、国連宣言に含まれている先住民族固有の権利の中には、民族が権利主体となるものが少なくないが、欧米に法体系を継受した日本では権利主体は原則として個人とされている」(『アイヌ民族と「日本型」先住民族政策』2011.9 P80)と書いていますし、以前にもご本人の講演で何度か聞きました(録音テープを聞けば確認出来るのですが)。しかし、以前から不思議だったのですが、欧米では先住民族の権利は保障されているわけで、どこがちがうのかと・・・。

このような考えは「国際人権法に反するだけではなく、・・・二風谷ダム裁判をも不当に稔じ曲げること」と、丸山さんは批判しています。丸山さんは二風谷ダム裁判の原告であった萱野茂さんの陳述にアキアジ(秋鮭)を捕る権利を要求していたことに触れ、国際人権規約自由権規約27条に照らせば、アイヌ民族が「自身の文化を享有するには多数派の日本人とは違った人権上の配慮、すなわち、法的な優遇策として集団的権利が必要であるとの結論が導かれる」(前掲書)、実際に裁判では国際人権規約自由権規約27条を引用しつつ、憲法13条を踏まえて、アイヌ民族の集団的権利のひとつである文化享有権を日本の歴史上、はじめて認めたのだから、常本さんの考えを「欺瞞」だと述べます。読んでいて、丸山さんのほうが納得いきます。

 ※「享有」とは、権利などを生まれながらに身につけ、もっていること。

う〜ん、だれが読んでも、分かりやすいように書く事を目指していますが、難しいでしょうか。もう少し、次回も続けます。

加えて、さる11月25日に行われた再埋葬の報告会のテープ起こしが別のメンバーにより行われ、近々、北大開示文書研究会ないし、『さまよえる遺骨たち』BlogにUPされます。お楽しみに。

昨日から、その報告会で採択された『アイヌの遺骨はコタンの土へ 杵臼からのメッセージ』を、関係する大学や博物館、研究所、各市町村役所、そして、各地区のアイヌ協会宛に発送する作業をしていました。全国ニュースでは出ていないと思いますので、ここで、大学以外の施設でアイヌ人骨を『保管』していた13施設の名を挙げます。北海道新聞に掲載されていました。または、こちら

伊達市噴火湾文化研究所

東京国立博物館

網走市立郷土博物館

苫小牧市美術博物館

釧路市埋蔵文化財調査センター

ところ埋蔵文化財センター(北見市)

いしかり砂丘の風資料館(石狩市)

胆振管内豊浦町中央公民館

渡島管内森町遺跡発掘調査事務所

上之国館調査整備センター(檜山管内上ノ国町)

北海道博物館

市立函館博物館

室蘭市民俗資料館 

これらに合計74体の遺骨が保管されていたとのこと。詳細は報告書なるものに書いているのでしょうが、わたしまはだ見つけていません。2012年にに伊達市噴火湾文化研究所を見学した際、資料展示している部屋に1m四方ほどの大きな頭骨の写真が展示されていました。あれはアイヌ民族のものだったのでしょうか。過去Blogにも書きましたが、怪しいと思ったのです。

各博物館は、徹底的に「保管」に至った経緯を調べ、明らかにするべきでしょう。渡した方も、受け取った方も責任があります。自ら発掘し、保存していたならば、資料にて公にしていなければならないことでしょうから、今になって公になるのはおかしいでしょう。もちろん、上記以外の博物館にも遺骨があるという噂があります。国は徹底して調べるべきでしょう。さらに、遺骨があると言うことは、副葬品もあるかも知れません。そのことも。

これらのご遺骨も、白老の慰霊施設に運ばれ、再度、「研究材料」として扱われてしまうのでしょうか。ひどい話です。これを見過ごしていていいのでしょうか。北大開示文書研究会とコタンの会は、それぞれのご遺骨が元のコタンの土に帰ることを願い、行動しています。そのひとつとして今回、100近くの関係団体にメッセージを送ります.


紙面掲載された「アイヌ政策の期待と課題は」(朝日新聞11/5付)に疑問

2016-12-06 15:08:02 | 日記

11月5日付の朝日新聞朝刊に掲載された「アイヌ政策の期待と課題は」ここを以前に読み、ひと月がすぎてしまいました。すでに常本氏の文に対し、いろいろ批判されているのを見聞きします。たとえばdon-xuixoteさんのBlogなど。 

阿寒アイヌ協会長の廣野洋さんの最初のことば「スタート地点に立たせてほしい」の言葉に、大きくうなずきました。先住民族アイヌが奪われてきた権利を取り戻すためのスタート地点にも立っていない、それすら国は整えていないと。アイヌ民族が何十年も求め続けてきた法律制定を期待し、「もっと普通に文化や伝統を守っていけるようにしたい」と訴えておられます。

それに続いて、北大アイヌ・先住民研究センター長であり、政府のアイヌ政策推進作業部会部会長の常本照樹さんのインタビュー記事は今までの繰り返しであり、問題だと思います。

「政府は東京五輪・パラリンピックの2020年に「民族共生象徴空間」を白老町に整備します。アイヌへの理解と共生を進める「扇の要」になる施設です。」

 2020年の民族共生の象徴となる空間を「扇の要」と宣伝するのをこの数年、何度か耳にしますが、そこには大きな問題(慰霊施設への遺骨収集と遺骨研究)があることは以前から書いています。それをカモフラージュするかのように東京オリンピックを抱き合わせてお祭りムードでもって行こうとする感がプンプンします。

2016年7月に出た「民族共生象徴空間」基本構想(改定版) ここを確認すると、「遺骨等に係る調査・研究の在り方」(P15)に、今後は (公社)北海道アイヌ協会、日本人類学会及び日本考古学協会の三者による「これからのアイヌ人骨・副葬品に係る調査研究の在り方に関するラウンドテーブル」において議論するとあります。三者だけでいいのでしょうか。しかもアイヌ協会はアイヌ民族全体の代表ではありません。

その中間まとめここの「これからの人骨と副葬品を用いた研究について」(P4)に、こうあります。

研究は、当事者であるアイヌに対し、研究の目的とそれによってもたらされる成果とリスクについて十分に説明し、同意を得た上で、慎重に進めることが前提であり、これまで大学が保管していた人骨と副葬品のうち、以下の条件に触れるものは、研究倫理の観点から見て研究対象とすることは問題がある。

ⅰ.研究の実施について、アイヌの同意を得られないもの。

ⅱ.海外における法制度やガイドラインの事例を考慮して、研究が行われる時点から見て三世代以内、すなわち概ね 100 年以内に埋葬された人骨と副葬品。

ⅲ.現在の遺族等への影響を鑑みて、収集経緯を公開できないもの。

ⅳ.収集経緯が不明確であるものや、時代性や埋葬地に関する情報を欠如するものや、資料の正確性を担保する基本的データ(例えば、発掘調査時の実測図、写真、出土状態の記載)が欠如するもの。そのほか、調査行為自体に研究倫理の観点からみて学術資料として活用することに問題を含むもの。

 なお、上記の i から iv の条件に触れる人骨と副葬品は研究対象としないことを原則とするが、iv)の条件に触れる人骨のうち、アイヌも交えた検討と判断の結果として、研究の有効性がしかるべき手続きを経て保証されると見なされる場合には、限定的に研究を行う可能性を有する。

ⅱの条件では、北大等から移されるご遺骨のかなりの数は100年以内なので研究対象外となるかと思いきや、気になるのはⅳの項目。

この項にも北大等から移される遺骨が入ります。そして、その後のただし書きには、ⅳは原則的には研究対象外とするが、「アイヌも交えた検討と判断の結果」、研究可となることが書かれています。ここでいう「アイヌ」は先の三者のなかのアイヌ協会であるならば、極めて閉ざされたなかでの了解で可能となる、ということでしょう。

また、ご遺骨と並んで副葬品に関してもさらりと記述されていますが、副葬品は明らかに盗掘品です。黙って掘り出し、盗んでいったものなのです。この事に関して、何の言及もなされず、ここに「研究対象」の可否について並べられている事自体が問題です。かつて、児玉作左衛門が、八雲でアイヌ人骨を掘った際の資料には「副葬品」の項目があり、ほとんどのものに「有」と記入されています。だれの許可もとっていませんし、しかも、その後の行方は全く不明です。これらを含めて、副葬品に対する調査を国は行うべきです。

4ヶ月も前のこと、8月6日に札幌で国際先住民族の日記念事業「考古学・人類学とアイヌ民族—最新の研究成果と今後の研究のあり方」の講演会が行われ、わたしは聞きに行けませんでしたが仲間が行って、内容を報告してくださいました。チラシはここ

その中の遺伝人類学からの講演で、北海道アイヌ協会の了解を得て54体の遺伝子研究をしたと報告があったとのこと。

すでに、遺伝子研究もすすめられている! この「54体」は健在しているアイヌ民族の皆さんからのものなのか、大学等で「保管」されている遺骨からなのかは分からなかった、と。これらが遺骨からであったならば、この「研究」も、先の「三者」による合意に基づくものということでしょうか。

さらに、日本人類学会理事の講演で、人類学会と道アイヌ協会が、札幌医科大学所蔵のアイヌの骨に関して『協定』を結んだとの発言があったようです。協定内容を知りたいものです。

先日、八雲教会の礼拝に招かれて八雲に行ってきました。八雲郷土資料館を訪ね、くわしい説明を受けました。かつて、児玉作左衛門らが遺骨を「発掘」した場所であろうところも教えて頂いて行ってきました。

八雲墓地の入口に建つ墓碑です。墓前で祈ってきました。

かつて、落部のアイヌ墓地から三人のイギリス人によって盗掘され、犯行がばれて返された13名の名が記されています。(植木哲也著『学問の暴力』第1章参照)。

 

八雲のあと、七飯、函館、函館千歳、渡島福島、江差、利別の各教会を訪問。

北方民族博物館、松前城にあるアイヌ資料も見学に行きました。

 

 


「アイヌの遺骨はコタンの土へ〜歴史的な再埋葬を語る集い」報告

2016-12-02 20:18:02 | 日記

さる11月25日(金)に、北海道クリスチャンセンターにて、「アイヌの遺骨はコタンの土へ〜歴史的な再埋葬を語る集い」を行いました。いつもながら、個人的な報告をいたします。

多方面から110名程がご参加頂き、この問題に感心を持つ方達が多い事を実感しました。

同日にアイヌ民族関連の大きな音楽イヴェントもあったようですが、こちらに来て頂いたことは感謝です。

プログラムは北大開示文書研究会のHPこちらに掲載していますが、簡単に流れをお伝えします。

はじめに、清水裕二コタンの会代表より挨拶があり、コタンの会制作のDVD「85年ぶりの帰還 12人の遺骨が杵臼コタンへ」を18分上映。裁判の半ばで故人となった城野口ユリさんのお元気だった頃の姿も映されていましたし、コンパクトにまとめられた報告映像でした。いつか販売出来るようになればいいかと考えています。

その後、第1部「杵臼再埋葬を語る」とのテーマで、この度、ご遺骨を迎えたコタンの方々の5名から、ひと言ずつお話し頂きました。小川隆吉さん(訴訟原告、コタンの会顧問)、山崎良雄さん(原告・城野口ユリさんの実弟、コタンの会副代表)、小川トシ子さん(小川隆吉さんの実姉、コタンの会)と続き、高月勉さん(コタンの会事務局長)からは、再埋葬の儀式の期間中に応援に駆けつけて下さった静内の皆さんの裏方の準備のご苦労や当日の報告を頂きました。

わたしは聞き手役として登壇しましたが、お一人おひとりの語られる言葉に邪魔にならないよう、ほぼ傾聴するのみとなりました。

つづいて、この度のアイヌプリ(アイヌ式)での葬送の祭司をつとめられた葛野次雄さん(コタンの会副代表)、葛野大喜さん(札幌大学ウレシパクラブ)による語りがありました。葛野エカシはこの儀式を行うに当たり、何ヶ月もの間、資料を調べたり、イナウやクワ(墓標)を作るなどの準備をされました。「アイヌにはアイヌの決まりがあんだ。ストーブにやかんをのせるんでも、注ぎ口を向ける方向が決まっていたり、いろいろ面倒くさいんだ。」などと笑いをとりながら、ご苦労を語られました。また、息子さんの大喜さんは、この度の父親と儀式を行うことで、あらためてアイヌとして生きることの大切さを学んだと発言されました(わたしの記憶)。

報告3として、文書研のメンバーである平田剛士さんより、杵臼コタンが遺骨を取り戻すまでを分かりやすくグラフや表を用いての解説を受けました。

小田博志さん(北海道大学教授、人類学)からは、研究者の立場から、倫理を守ることに大切さ、そして、「研究者である前に“人間”でありましょう」とのメッセージを、市川守弘さん(北大開示文書研究会、弁護士)より、今回はアイヌの先住権を認めさせた画期的な和解であったとの報告を受けました。

第2部のパネルディスカッションでは、差間正樹(訴訟原告、浦幌アイヌ協会会長)、清水裕二さん、市川守弘さんがそれぞれの立場からの発言をされました。

時間も迫っている中、フロワーから数人の発言がありました。お一人は平取アイヌ協会の木村ニ三夫さん。

(木村さんに関しては過去Blogにも報告あり)

北大の納骨堂という「牢屋に閉じ込められて30数余年。今度は白老へ移され研究材料として恥ずかしめをうけるのではないかと、毎日まいにちびくびくしているであろう先人達」の故郷への帰還の叫びが聞こえて来ると訴えられました。新冠アネサルより強制移住で旭(旧上貫別)へ来た者たちが、今度は白老の慰霊施設へと言うことになると「三度目の強制移住になる。絶対に阻止したい」「尊厳ある慰霊施設というが、逆である。尊厳を踏みにじる施設だと私は思う」と。続いて平取町議のお一人も参加されており、町としても誠意ある対応をしたいと決意表明をされました。

もうお一人は、平取出身の方。今回の小川隆吉さんの働きに敬意を表し、「シャモの中にもいい人がいたんだと思いました」と。今回の開示請求による資料で、自分の先祖の遺骨もあったことを知り、たいへんショックを受け、「大通公園のすごく人通りの多いところで、十字架にかけられ素っ裸でさらし者にされているという感じ」と表現。単独で北大と交渉したが、それではだめだと思い、北大開示文書研究会に加わり、返還請求をすると決意を語られました。「当たり前のこととして、生きている人に人権があるのなら、遺骨にも権利がある!土に埋められていたのだから、その土に戻る権利があるんだ」と。

最後は、「アイヌの遺骨はコタンの土へ 杵臼からのメッセージ」を会場の皆さんの拍手で採決し、終了しました。メッセージはこちら