アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

「北海道におけるアイヌ施策を推進するための方針(素案)」に関する意見

2019-08-20 21:01:25 | 日記

たいへんご無沙汰しております。久しぶりの投稿です。

道のアイヌ施策を推進するための方針(素案)に関するパブリックコメントの締め切りが今日でした。あわてて午後9時前に書き終えて、メールにて送りました。内容を公表いたします。

   最近、家のまわりに頻繁に現れて畑を荒らしてはみんなに怒られる鹿ちゃん。鹿ゆえにしかたがない? わたしはとても可愛いと思っています。

 

******************************************************** 

アイヌ政策推進グループ 御中

「北海道におけるアイヌ施策を推進するための方針(素案)」に関する意見

                                      留萌市宮園町3−39−8

                                                  三浦 忠雄 

1.差別(ヘイトスピーチ)に関する罰則規定を盛り込むべき

 アイヌ施策推進法の第4条には「何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」とあり、第5条には、アイヌ差別禁止について「国と地方自治体が・・・施策を策定し、及び実施する責務を有する」と定めています。

 しかし、この法では、罰則規定がなされておらず、これは単なる「お願い」でしかありません。さらに、「北海道におけるアイヌ施策を推進するための方針(素案)」(以下、「道施策方針案」)も、罰則規定はなく、加えて、差別解消のための啓発には触れているものの、実際に差別がある中で、どのように対応するかが欠けています。

 2017年度に道が実施した「北海道アイヌ生活実態調査」の結果を出さないまでも、差別の現実はあり続けています。また、昨今のインターネット上では、頻繁に「アイヌはもういない」などの発言や、「アイヌは不当な利権を受けている」などというデマやヘイトスピーチが綴られています。

 アイヌ施策推進法を制定する国会審議において、「民族としてのアイヌなんてもういない」という発言はヘイトスピーチであることが認められ(衆議院 国交委員会 4月10日)。また、「明確にアイヌの人々を差別することを目的としたヘイトスピーチは本条に反するもの」「第4条においては、アイヌの人々に対してと規定しており、必ずしも個人を対象としない差別的言動も本条に反する」と答えています(参議院 国交委員会4月18日)。

 これらのことから、特に差別を目の当たりにする道における「道施策方針案」には、差別(ヘイトスピーチ)に関する具体的な罰則規定を盛り込むべきだと考えます。

 

2.広くアイヌ民族の方々からの意見を聞くべき

 「道施策方針案」の「3 その他アイヌ施策の推進のために必要な事項」にある「アイヌの人たちの課題やニーズ」、「アイヌの人たちの意見を十分踏まえる」とありますが、アイヌ民族からの意見聴取は「アイヌ協会」に偏り過ぎているように見えます。アイヌ協会に加入していない大多数のアイヌの皆さんの意見にもしっかりとこころと耳を傾けて頂きたいです。

 また、􏲲「国のアイヌ政策に係る国連人権関係諸機関による勧告や、諸外国における先住民族政策の状況にも留意する」とあります。是非とも、今までの勧告を真摯に受け止め、改善策を実行して頂きたいと願います。

 なお、カナダの場合は政府が主導して1991年から先住民族委員会を設置して詳細な調査を行い、2008年に「真実と和解のための委員会」をつくり、さらに寄宿舎学校問題を調査し、2015年に「報告書」を出します。そこには、「同国の同化政策を文化的ジェノサイドとよび」、政府に対して先住民族と和解するための具体策を国連権利宣言に基づき94項目あげて、その実行を迫りました。日本政府はそのような動きに見習うべきですし、道においてもそのような提案を積極的に行うべきと考えます。

瞬く間に、夏が終わり、秋の空になっています。

先週にはアイヌ民族情報センター機関紙「ノヤ」を発行・送付し終えました。

また、日本キリスト教団出版の「教師の友」冬号にアイヌ奨学金キリスト教協力会の記事を複数で書き、掲載されました。