アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

今日、明日の講演・イヴェント

2009-05-29 11:00:27 | インポート
大変ご無沙汰しておりました
バッハとパガニーニ(カプリース全24曲)の三夜連続コンサートに集中していました。
この組み合わせでの三夜連続とは世界初とあって大変な迫力でした。
留萌からスタートして今日からは帯広、来週は東京と久保陽子さんの無伴奏ヴァイオリンはまだまだ続くそうです。
すばらしい・・・


書きたいこと書かねばならないと思っていることが何日分も溜まってしまい、「関連ニュース」も頻繁に新たな情報が入って来ていますので、手がつけられない状態です。
ぜんぜん更新できていないにも関わらずたくさんの方に見に来ていただいて感謝でした。

今日はそれらを置いといて、アイヌ奨学金の事務を兼ねて今から札幌へ行き、明日の晩まで以下の講演やイヴェントに参加してきます。案内だけで失礼。


北海道大学アイヌ・先住民研究センター 講演会
WiPCE(World Indigenous Peoples' Conference on Education)参加報告会
日時:5月29日(金)18:00~20:00
報告者
石井ポンペ(テケカラの会会長)
萱野志朗(萱野茂二風谷アイヌ資料館館長)
結城幸司(アイヌアートプロジェクト代表)
川上将司(北大アイヌ・先住民研究センターアイヌ文化担当職員)
コメンテーター
小野有五(北大大学院地球環境科学研究院教授、アイヌ・先住民研究センター)
ジェフ・ゲーマン(熊本学園大学非常勤講師)
会場 北海道大学人文社会科学総合教育研究棟2階 W202室
※参加自由、無料

WiPCE(ウィプシー)とは、3年に1度おこなわれる教育のための世界先住民族会議とのこと。
「先住民族ネットワークAINU」の第一回目の集会でもその報告がなされました。各国から先住民が集まり、たいへん熱心に教育について議論するようです。今回は昨年12 月にオーストラリアで開催されたWiPCE2008の報告。
ジェフさんの話は先だってニサッタ学習会で聞かせていただき、後日さらにご自身の論文も送って頂いたので事前準備ばっちし。楽しみです。





北海道開拓記念館
第153回テーマ展
「北海道開拓記念館所蔵アイヌのよそおい展」
4月28日(火)~5月31日(日)
場所/特別展示室

「開拓の森」の中に、浦河へ「入植」したキリスト者グループ赤心社の最初の礼拝堂が移転されているとか。
兵庫教区からお声がかかり、6月26日から30日までいくつかの教会をまわって情報提供をしに行くので、話のネタにちょっと観てこようと思います。




講演と対談「アイヌ口承文芸のなかの“恋愛”」(仮題)
講師 中川裕(千葉大学教授)、本田優子(札幌大学教授)
日時 2009年5月30日(土)14:00~
会場 北海道立文学館講堂
定員 80名
聴講料 無料 

電話(011-511-7655)にて受け付けているので、先ほど電話しました。
ぜんぜん関係がないことですが、先日、久保さんに食べていただこうと山菜をとりに山に入ったら、
不思議な鳴きかたをした鳥がいました。「愛してるね~ チュッ・チュッ・チュッ・」と聞こえたのです。
恋愛中だったのでしょうか・・・




旭川嵐山のチセ作りが始まりましたね。これはプ(食糧倉庫)でしょうね。
こんな感じに笹を編み上げます。来週こそは手伝いに行こうと思います。


北海道アイヌ協会定期総会を傍聴

2009-05-16 18:16:31 | インポート
15日(金)は、北海道アイヌ協会総会が2・7カデルにて開催され、傍聴に行って来ました。
昨年一年間に亡くなられた皆さんに黙祷をささげ、加藤忠理事長の挨拶(M.L.キング牧師の言葉を引用されていました)、
表彰式、来賓の祝辞と続き、議事へ。
昨年の事業実績報告、新年度の活動計画と、いずれにおいてもフロアーからの切実かつ真剣な問いと要望が出され、
加藤理事長はじめ執行部が熱く応えていました。
有識者懇談会への要望を含む、アイヌ民族の権利回復への、さらなる動きが確実に感じられた総会でした。

事前に受け付けていた質問も数ページもの印刷物となって会員に配られていました。
傍聴席のわたしたちは頂戴できませんでしたし、テープも撮っていませんのでこまやかな質疑応答に関しては書けませんが、
権利回復のために要望していくぞという意気込みを感じられる発言が多く出されました。




その議論で何度か引用された資料があります。
国連人種差別撤廃委員会によって1997年(第51会期)に提出報告された「先住民に関する一般的勧告23」です。
これは、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(人種差別撤廃条約)を批准した国に対して、
きちんとその条約を守っているかを調べる機関「人種差別撤廃委員会」が日本政府へ勧告をしたものです。

その一部を引用します。
(ウェブページを探しても見つからないので総会資料P99より引用。「先住民」はそのまま用います)。

委員会は、締約国に対して特に次のことを要請する。先住民の共有地・地域及び資源を所有し、開発し、管理し及び使用する先住民の権利を承認し及び保護すること、先住民が伝統的に所有してきた土地・地域が奪われ、又は当該土地・地域が先住民の自由なかつ十分に説明を受けでなされる同意なしに他の者に居住され若しくは使用されている場合には、当該土地・地域を返還するための措置をとることである。実際上の理由によりこれが不可能な場合にのみ、原状回復を受ける権利に代えて、正当な、公正なかっ迅速な補償を得る権利が認められるべきである。かかる補償は、可能な限り土地・地域の形態をとるべ きである。
⑥委員会は、さらに、締約国に対して、自国領域内の先住民と協力して、条約のすべての関連規定を考慮に入れて先住民の現状に関する十分な情報をその定期報告書の中に含めることを要請する。


これらはまったく改善されず、その後、同委員会第58会期「人種差別の撤廃に関する委員会の最終見解」(2001/03/21)においても同じように「懸念事項および勧告」として指摘されており、今もそのままです。※1 

ここに述べられている先住民族の共有地・地域及び資源を返還することを、当然の権利としてアイヌ民族は要求していくと、総会にて述べられていました。

※1(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/saishu.html)
17.委員会は、締約国に対し、先住民としてのアイヌの権利を更に促進するための措置を講ずることを勧告する。この点に関し、委員会は、特に、土地に係わる権利の認知及び保護並びに土地の滅失に対する賠償及び補償を呼びかけている先住民の権利に関する一般的勧告23(第51会期)に締約国の注意を喚起する。また、締約国に対し、原住民及び種族民に関するILO第169号条約を批准すること及び(又は)これを指針として使用することを慫慂する。

慫慂(しょうよう)とは、他の人が薦めてそうするように仕向けること(スーパー大辞林)。





議事終了後、常本北大アイヌ・先住民研究センター長が、昨年行なったアイヌ民族への生活調査アンケート(正式名称は資料が傍聴者には配布されませんでしたので不明)の中間報告を配布し、説明と、さらなるアンケート協力の依頼が述べられました。正式な報告は7月ぐらいに出すとのこと。


帰宅途中、その日に文化審議会より名勝の一つとして登録申請された浜益のピリカノカ(美しい・形)を通ったので、お祝いを込めて写真を一枚。この山の日本語名は黄金山と言って、過去ブログに何度か書いたことがあります。アイヌ語はピンネタイオルシペ(樹叢の平原の中にそびえる雄山を意味しているとのこと。道新5月16日記事)。道新にはアイヌ語で表記とありますが、山の名前なのか、ピリカノカの総称についてなのか、分かりかねます。地名表記も、アイヌ語で大きく書かれるのがいいですね。

 

2009年5月16日00時07分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20090515-OYT1T01206.htm

他にも有識者懇談会についても書かねばならないのですが、明日の礼拝や来週の諸事業準備のため、焦っています。


チ・カラ・ニサッタ学習会「アイヌ民族教育・異文化教育」

2009-05-13 08:06:26 | インポート
9日(土)のチ・カラ・ニサッタ主催の学習会が持たれました。
「民族教育について」を熊本大学非常勤講師のジェフ・ゲーマンさんからお話を伺いたいへん勉強になりました。
遠く離れてはいるものの、ニサッタのメンバーとして一緒にやっている仲間だけあって専門分野からわたしたちが聞きたいことを教えて下さいました。ジェフ、ありがとうね~

彼を見かけたのは2年前の旭川の知里幸恵誕生祭がはじめて。次は北大アイヌ・先住民研究センターに過去講演を見せてもらいに訪ねたとき。いづれも顔をあわせた程度ですが、いつも満面の笑顔で親しみを感じていました。今回は、「いつもblogを見ているから久しぶりと言う感じがない」と言って頂き、大変恐縮しています。今回も見てくれていますか?


さて、本題です。ジェフさんはアメリカ生まれですが日本滞在20年。日本の教員になることを目指したこともあったようですが紆余曲折のすえ、出会いの中でマイノリティーのために働くことを希望。その後、2年間、アラスカの大学で先住民族の教育について学び、今回そこで得たことを紹介してくださいました。

まずは課題整理のために、第5回有識者懇談会で配布された中川裕(千葉大学人文社会科学研究科)さんの資料「資料2」を紹介し、説明をされました。

中川さんの資料はわたしも知っていましたが、過去blogに書いたようにその手前にあった「資料1」「自然人類学から見たアイヌ民族」(篠田謙一国立科学博物館・人類研究部)に集中していてきちんと読んでいませんでした。
ジェフさんは中川さんが引用してるリチャード・ルイズの「三つの言語観」を引用し、この「言語」の変わりに「文化」「教育」を当てはめてもいいだろうと説明。
①権利としての言語(文化・教育)
②資源としての言語(文化・教育)
③問題としての言語(文化・教育)


「権利」としてのそれは、その民族のアイデンティティーと関わる当然の権利として持てるもの。
「資源」としてのそれは、その民族の世界観・思想を学ぶための資源となるもの。たとえばアイヌ語は一語一語にその使われてきた世界観があり思想が込められている。それらを学ぶことによって得られるもの。この学びはアイヌ民族以外の人にとっても益になる。
「問題」としてのそれは、先のプラス的な面とは違って、マイナスの面。「アイヌ語を勉強しても活かす場がないから意味がない」というような諸問題。
(これらに加えてもう一つジェフさんは「ヒーリング」を入れましたが、これは割愛します)。
言語(文化・教育)を考える際、以上の考え方、とらえ方が出来ると説明されました。なるほどこのように整理できますね。


ジェフさんは中川資料をさらに引用して「言語政策の3本の柱」を紹介。
そこにはマイノリティーの言語の維持・復興に関する重要なものとして以下の3つが挙げられています。
①地位(status)
②核(corpus)
③威信(prestige)


①の「地位」は、その言語の社会的位置づけ。日常で当り前に使い、学校で教えたり裁判で使用できる、公に認められる公用語とすること。
②の「核」は、その言語の辞書や教科書など、それを用いることによって教材が開発できる資源のこと。
③の「威信」は、その言語の社会的なイメージ。①の「地位」とも密接に関係します、中川さんはこんな説明を入れてます。以下引用。
たとえば、「冬のソナタ」を皮切りに日本で韓流ブームが起こった際に、韓国語(ハングル)学習者が非常に増えたのは、地位の問題ではなく、韓国語の威信の向上による効果である。
(有識者懇談会のウェブ・ページ参照)

ジェフさんはこれらを紹介しつつ、この言語政策の「言語」の部分も「文化」「教育」に変えてもいいだろうと説明し、①「地位」は民族学校の法的地位や措置をしていくこと、②「核」はそれらを守るための資金援助、③「威信」は国がもっと力を入れることなどを提案。
「威信」については、例えば国立のアイヌ民族博物館や国立劇場を作るなど力を入れたり、大河ドラマなどでブームを起こしたりすることで変えられるという案は納得。

これら三つはいずれもつながっていて一つも欠けてはいけないものですし、連携しつつそれぞれを強化していくべきものと思います。

ジェフさんのお話は質問や意見もたくさん飛び交い、充実したものでした。
話の中で自己エンパワメントを充実させることについても出てきたのですが、アイヌ民族のSHIMAさんも共鳴しつつご自身のお話をされて豊かなものでした。

さらに彼は、アイヌ民族の言葉や文化を継承するための一石二鳥の方法があるというではありませんか。それは、アイヌ語を話したりアイヌ文化を継承しているエカシやフチのところに若い人たちを三年ほど住み込みなり近くに住んで通わせるなりして生活を一緒にし、どっぷりと浸かりながら継承していく方法がある、と。これらを専門用語で「言語伝承師弟」制度というそうですが、なるほど。考えてみれば中本ムツ子さんも白沢ナベさんに寄り添われていたようなことを伺っていますし、白老にはエカシやフチに密着するというのではないですが三年間の研修制度によってアイヌ文化継承者を育成しているプログラムを持っていますし、効果は抜群でしょう。これらのことに国も協力してくれたらいいですね。
それと「言語の巣」(Language Nest)というのがあるそうで、保育所、幼稚園などにエカシやフチを先生として招き、こどもたちが毎日そのエカシやフチと過ごすことで言語を自然体で身につけることを可能にする方法のようです。実際は、エカシ、フチはお疲れになることでしょうから、実施に関しては十分考える必要はあるでしょうが。


最後にアラスカの五つの民族の中のひとつアサバスカン民族の行なっている野外研修制度(研修場に数週間のキャンプを行い、古老にも来て頂いて伝統的な生活をして過すプログラム)のビデオ紹介を観ました。この研修はこども向けやマジョリティー教師養成課程のものもあったりで、頻繁に行なわれているそうです。自然の中で自然と共に生きている全住民族にとっては、自然が生きる糧をえるところであり、文化伝承する教育の場ですから、その場で共に過すことは大切なのですね。

あっという間の4時間でした。まだまだ書きたい事もありますが、おいおい関連することと共に紹介します。感謝・感謝。



北大構内にある遺跡保存庭園の中。絶滅危惧種のキバナノアマナに囲まれた竪穴式住居址碑


その夜は留萌に戻り、日曜日は礼拝後、道北地区委員会のために名寄へ。
翌11日(月)は、同志社大学の人権教育委員会夏期現地研修下見でキリスト教文化センターから二名の方が来られたので千歳空港経由で二風谷を久しぶりに訪問しました。夏に10名近くで研修に来られるとのことでお手伝い出きることをうれしく思います。夕方4時過ぎに二風谷を出発し、札幌でお二人を降ろしてそのまま留萌に帰宅。

今週は13日(水)、カナダ合同教会から道北地区研修に来られている皆さんと旭川アイヌ民族フィールド・ワークのお手伝いで川村カ子トアイヌ記念館や知里幸恵文学記念碑などを廻ります。
15日(金)は朝から北海道アイヌ協会総会を傍聴しに札幌。名称を「ウタリ」から「アイヌ」へと戻しての最初の総会です。翌16日(土)は大通公園にて10時から開催される「アースディー エゾ2009」というイヴェントを紹介されたのでのぞいて来ようと思います。ライヴの時間にはアイヌ・アート・プロジェクトも参加されるとか。大通り公園でガンガンとアイヌ・ミュージックを奏で、みんなでリムセ(輪踊り)したいですね~。楽しみです。

有識者懇談会のニュースも書きたいところですが、これから旭川に行くので次回に。


「樺太アイヌ民族 交易簿」が見つかったニュース

2009-05-08 11:26:50 | インポート
過日、さっぽろ自由学校「遊」主催の「先住民族の権利に関する国連宣言」を読むⅡ講演 第一回「先住民族の自己決定権と国家の責任」(相内俊一小樽商科大学大学院教授さん)を聞きに行って来ました。
相内さんのお話はとてもわかりやすく刺激も強いので、かつて伺った講演内容も過去blogに何度かUPしました。有識者懇談会へ提言を作成して送ったチ・カラ・ニサッタでも、学習会に是非ともお呼びしたいと、わたし個人として提案をさせて頂いていましたので期待度いっぱいでした。

今回の講義では全体的に先住民族の権利回復を考えるに当たっての大切な部分を再考させられました。しかし、アイヌ政策を考える有識者懇談会が報告書のまとめに入っている中、ニサッタとしてさらに要求するべきことはないかと具体的に模索しているわたしたちにとっては、正直、もっと突っ込んでお話を聞き、知恵をお借りしたかったです。今後、さらにお知恵をお借りしたいと願っています。


講義の前の時間は、早めに「遊」に着き、ニサッタのニュース発行と発送の事務作業を行ないました。有識者懇談会への提言に賛同くださったのは最終的に350人を超え、賛同者名を付してすでに有識者懇談会へ送っています(教会関係者は120名強でした。感謝・感謝)。
ニサッタでは今後もさらに学び考え、アクションを起こして行こうと考えています。

ちなみに次回は明日の5月9日(土)午後2時よりさっぽろ自由学校「遊」にて、「民族教育について」と題して、熊本大学非常勤講師のジェフ・ゲーマンさんからお話を伺います。



タラの芽をゲット。輝いています!天ぷらうまかったです。



朝型のわたしは朝に起きて祈り、その後すぐに北海道新聞やいくつかの新聞社のウェブサイトに入り、アイヌ民族や先住民族関連のニュースを見つけては保管し、紹介させて頂いています。
しかし、紙面にあってもウェブページには掲載されない記事もけっこうあります。残念ですね~。
今回、北海道新聞5月4日にも、ウェブページに載せて共有したい記事が載っていましたので以下、転載します。

樺太アイヌ民族交易現存 
ロシア和人豪商が記録
十九世紀初頭、江戸時代後期の樺太 ( 現在のサハリン〉で、アイヌ民族と和人との交易を記録した帳簿の存在が、初めて明らかになった。東大史料編纂所の保谷徹教授 ( 日本近世史〉が、ロシア・サンクトペテルブルクのロシア科学アカデミー東洋学研究所で発見した。北大文学部の谷本晃久准教授 ( 日本近世史 ) も協力して分析を進めており、樺太アイヌ民族の生活実態に光が当たりそうだ。帳簿は二冊で、それぞれ表紙に「大福帳」「簾貸帳」(すだれかいちょう)と書かれ、どちらも裏表紙には「久春古丹(クシュンコタン)番家(番屋のこと)」とある。当時の松前藩からの委託を受けて、樺太南部の久春古丹(現在のコルサコフ)でアイヌ民族との交易にあたっていた、和人の豪商のものとみられる。
(北海道新聞2009年5月4日 第1面(関連記事3面)


大福帳は文化元(1804)年 11月から3年分の取引が記録されていて、取引の相手は、「樺太南部の二十五カ所に住む百八十四人のアイヌ民族」。
和人がアイヌ民族に日本酒やたばこ、米などを前渡しして、その対価としてニシン、クジラなどを受け取っていることが分かるそうな。
簾貸帳は、大福帳と同時期に、約百九十人のアイヌ民族との取引が記録されていて、取引相手の大半が女性とみられ、和人側が必ず「簾」を受領したという特徴があるとのこと。なぜ『すだれ』が取引されたのかは謎!
この資料がロシアに保管されていた経緯なども含めてさらに調査が必要とのことです。
このような資料がどんどんと出て、当時の歴史の真実が明かされていけばいいですね。
北大の中にももっともっと貴重な資料が眠っているかもしれませんね。

そうそう、先日に白老へご一緒した真駒内教会員の時さんが、一昨年のディヴァンさんと行く台湾原住民族研修後、新聞でアイヌ民族関連のニュースがあったらすべて切り取って保管しているから必要な時に見せてくださると言ってくださいました。すごいですね。ウェブ記事は極力ストックしていますが、紙面だけのは断念していました。このようなつながりで権利回復への働きが補強されるように思います。近く見せていただこうと思っています。


まだ沢には積雪がある暑寒別岳


アイヌ民族の権利回復に向けての学習会

2009-05-05 08:50:05 | インポート
GWですね。旅行中の方、お仕事の方、新型ウイルス騒動で休み返上の方、
皆さんに安全と平安をお祈りします。

まずはご案内です。今年度もさっぽろ自由学校「遊」では、「先住民族の権利に関する国連宣言」を読むⅡ~アイヌ民族の権利回復に向けて 5回シリーズで開催しますね。
この度は、有識者懇談会へ提言を作成して送ったチ・カラ・ニサッタも協力します。
第一回目の5月6日(水)以外は月一回で火曜夜6時半より開催。二回分を紹介します。

第一回 5月6日(水) 午後6時半~8時半
テーマ:先住民族の自己決定権と国家の責任
講 師:相内 俊一(あいうち としかず)  小樽商科大学大学院教授
先住民族をめぐる国際的な議論の流れを追いながら、先住民族の自己決定権とは何か、自己決定権と国家の責任との間にはどのような関係があるのかについて考えたいと思います。

第二回 6月2日(火)
テーマ:樺太アイヌの歴史と現状~先住民族の「越境権」を考える
講 師:田澤 守(たざわ まもる) 樺太アイヌ協会会長
日本とロシアの国境策定により、分断と強制移住を余儀なくされた樺太アイヌの歴史をひもときながら、先住民族の「越境権」について考えます。



5月6日は午後2時より自由学校“遊”で、有識者懇談会の提言に賛同いただいた皆さんへ報告とニュースを発行したので発送作業を行ないます。
http://www.sapporoyu.org/modules/sy_course/index.php?id_course=193


北海道開拓記念館では、4月28日(火)~5月31日(日)まで、
第153回テーマ展「北海道開拓記念館所蔵アイヌのよそおい展」が特別展示室にて開催中。
http://www.hmh.pref.hokkaido.jp/





5月2日(土)はディヴァン宣教師と真駒内教会員の時さんとの三人で白老の「第15回コタンノミ(集落の大祭)」に参加して来ました。時さんは一昨年のディヴァンさんと行く台湾原住民族研修にも参加され、その後、アイヌ民族と積極的に出会いに出かけられるパワフルでキュートな70代。昨年の十勝アイヌ民族フィールドワークにも参加して下さり、このようなイヴェントの際には必ず手造りのおにぎりやおこわを作って持って来て下さるのです。
今回はわたしの大好物の甘納豆入りの赤飯おにぎりと鳥釜飯おにぎり!
北海道の赤飯は小豆ではなく甘納豆入りでとても甘いのです。これが当然だと思っていたわたしは、小豆入りで胡麻塩かけて食べる赤飯は苦手です。




チセの中に吊るしてあるカムイ・チェプ(鮭)。美味そうでした。



話を戻して・・・、ポロトコタンでのコタンノミは、観光客の皆さんも多く入られていました。感心したのは儀式中に解説をしてくださるのです。動作の方法や意味を聞きながら、一緒に参列できました。
儀式の後は、参列者全員に昼食が振舞われました。チェプオハウ(鮭入りお汁)、ラタシケプ(シケレペ=きはだの実とカボチャなどを煮たもの)、キビ入りご飯、山菜の煮付けや焼き鮭、もうボリュームたっぷり。感謝・感謝でした。
HORさんもそこでお会いでき、独立学園の修学旅行のことをお願いすることが出来ました。
午後からは、白老楽しく・やさしいアイヌ語教室主宰の大須賀るえ子さんから貴重な講義を受けました。アイヌ民族の三大詩人のお一人である森竹竹市さんの遺品から見つかったオイナの研究と、実際にオイナを歌って頂き、感激。いつかまた団体でお邪魔してお話をゆっくり伺えたらと思います。帰りには「金成マツ筆録ユーカラ既刊20編の研究と分析」を寄贈頂き、「森竹竹市遺稿集」を購入して帰路へ。



3日の礼拝は、なんと埼玉からNUMさんが来てくださいました。NUMさんは北海道旅行によく来られていて、このblogをよく見て下さっています。一昨年の神奈川教区西湘南地区での学習会に招かれた時も、わざわざ埼玉から聞きに来てくださいました。今回もGWを利用して旅行途中に礼拝に来てくださったとの事。ありがとうございました。




ポロト(大きな湖)


白老コタンノミと 「アイヌ民族の権利を回復する運動の推進決議に関する件」

2009-05-01 17:31:18 | インポート
「第15回コタンノミ(集落の大祭)」が明日の5月2日(土)10時半より
アイヌ民族博物館ポロチセにて開催されますね。ディヴァン宣教師と一緒に見学に行こうと思います。今のところクリスチャンセンターに8時集合、夕方5時ぐらいに解散の予定で白老を往復します。参加希望がありましたらわたしの車が7人乗ですので電話でご相談ください(遅いか!)。入場料と昼食は自己負担です。
コタンノミは自然の恵みと人々の健康を祈願して春と秋の年二回開催される伝統的な例大祭とのこと。白老で研究されているHORさんにもあえたらうれしいです。今年の基督教独立学園の修学旅行は白老を訪ねたいと準備しているようですから、そのこともお願いできたらと思います。






4月29日~30日、日本キリスト教団北海教区総会が開催されました。
道内の70以上の諸教会・伝道所、および関連団体から300人ほどが集まり、一年の振返りと新年度の展望を審議しました。
今年もわたし達アイヌ民族委員会・情報センターから「アイヌ民族の権利を回復する運動の推進決議に関する件」を提案し、可決されました。
教区全体が以下の議案を承認し、具体的な活動をアイヌ民族委員会、情報センターに託しました。今年も益々、活動を広げ深めたいと思います。個人的には台湾基督長老教会との連帯、台湾原住民族との出会いと学びを深めたいと願っています。秋には玉山神学院(原住民族の牧師養成大学)での研究会にも誘われていますので楽しみにしています。

       
「アイヌ民族の権利を回復する運動の推進決議」に関する件 (議案第19号 2009/4/30可決)

議  案
アイヌ民族の権利回復と差別撤廃の運動を推進するために、以下の事項に取り組む。

1.学習・研修・交流・連帯活動
アイヌ民族の権利回復と差別撤廃のため、関連する裁判や運動を支援し連帯する。また、集会等に積極的に参加する。
アイヌ民族関連の諸資料を収集し、提供する。機関誌(ノヤ)・ホームページ、Eメール等を通しての広報。
アイヌ民族の歴史と現状を学ぶ現地研修の企画・実施。原稿執筆等の協力
講師派遣による学習活動支援

2.台湾基督長老教会のディヴァン・スクルマン宣教師を支援し、先住民族に関する課題を共有する。
(1)国家形成や植民地支配により、日本・台湾で行われてきた先住民族差別について、その歴史認識を深め、新たな関係作りを目指した学習・啓発活動の実施
(2)台湾の原住民(ユェンツーミン)教会及び原住民族(ユェンツーミンツ)との交流
(3)台湾基督長老教会の原住民(ユェンツーミン)教会が培ってきた信仰や、先住民族宣教のあり方を学ぶ学習 会等の開催

注)台湾の先住民族は自らを「原住民(ユェンツーミン)」と称しておられます。したがって、アイヌ民族委員会としましても、台湾の先住民族の総称としては「原住民(ユェンツーミン)」、或いは「原住民族(ユェンツーミンツ)」という呼び方に統一しています。

提案理由

北海道と呼ばれているアイヌ・モシリ(人間の大地)は、もともとアイヌ民族が自然と共に生きてきた土地です。しかし、日本近代天皇制国家による侵略によって、アイヌ民族は土地も森も川も、自由に狩猟することも、さらに文化や言葉も奪われ、多くのいのちも奪われました。そしてその苦難の歴史は十分に省みられることなく、現在にいたってもアイヌ民族は厳しい差別にさらされています。
そのアイヌ・モシリに宣教活動を行なったキリスト教会もまた、アイヌ民族の存在に無関心であるばかりか、アイヌ民族としてのアイデンティティを尊重せず、明治政府の同化政策に協力さえしてしまいました。
わたしたち日本基督教団北海教区は、教会が侵略者・抑圧者の側に身をおいて歩んできた歴史を反省し、1985年の二風谷ダム裁判の際に、アイヌ民族の権利回復の働きを共にする目的でアイヌ民族委員会を設け、ささやかながら連帯の取り組みを進めてきました。さらに、この課題に日常的に取り組むため、1996年に「アイヌ民族の権利回復と差別撤廃を教会が宣教課題として取り組むことを目的」(センター規約3条)としてアイヌ民族情報センターが開設され、13年目を迎えています。アイヌ民族がなお厳しい現実に生きざるを得ない中で、これらの取組を今後さらに発展させていくのは、大切な宣教の課題だと言えます。
一昨年の2007年9月に「先住民族の権利に関する国連宣言」が可決され、翌08年6月には衆参両議院において「アイヌ民族を日本の先住民族として求める」決議がなされました。しかし、日本政府は相も変わらず、「先住民族」の定義が定かではないとの理由でアイヌ民族の自己決定権を含む諸権利を未だ認めるに至っていません。現在、内閣において進行中の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」が審議を続けています。アイヌ民族を含めた多くの者が権利回復のために学習会を重ね、権利回復への活動をしています。わたし達も働きの手を休めることなく、アイヌ民族の皆さんに連なっていきたいと願います。
開設以来、主事や活動委員により地道にしかし具体的に取り組まれてきたアイヌ民族情報センターの取り組みは、差別や偏見の前にまだまだ微力ではありますが、着実にアイヌ民族との出会いを広げ、権利回復と差別撤廃に向かう方向性を確かなものにしています。「平和を生きる神の民」として、今後さらに私たち北海教区がアイヌ民族と共に歩む教会となっていくために、情報センターがより一層用いられることを期待します。しかし一方で募金によってまかなわれている情報センターの財政が困難さを極めています。上記の諸課題に取り組んでいる情報センターの働きを今一度祈りに覚えていただき、財政的にも支えていく決意を新たにすることも必要です。
また台湾基督長老教会からお迎えした原住民の教師、ディヴァン・スクルマン宣教師はアイヌ民族委員会の一員として、より積極的な活動を展開され、多くのアイヌ民族の皆さんと関係を深めています。また、台湾旅行などにも用いられて、ガイド役として台湾原住民との豊かな出会いに協力されています。これらの取り組みを今後も積極的に展開していくことにより、アイヌ民族だけにとどまらない、世界の先住民族と共に歩む教会として、私たちは成長することができるでしょう。

以上の理由から、今年度もアイヌ民族の権利回復と差別撤廃、先住民族に関わる諸課題を教区・教会の宣教課題として、積極的に取り組むことを提案します。





留萌の町 年々減少しています