アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

「埋蔵文化財」遺骨返還訴訟 20180130

2018-01-30 14:05:36 | 日記

1月25日の午後6時20分からHTB「どさんこワイド」で取り上げられました。

https://www.youtube.com/watch?time_continue=53&v=ul0q9TSpB3s

翌日の26日、コタンの会(清水裕二代表)と、浦幌アイヌ協会(差間正樹会長)が原告となり、アイヌ遺骨返還請求裁判を起こし、北海道と北海道公立大学法人札幌医科大学(以下「札医大」)を訴えました。

しばらく、以下でニュース動画が観られます。HTBニュース

訴状は近々、コタンの会や北大開示文書研究会のHPに上げますので、詳しくはそちらをお読みいただき、ここでは分かりやすく要点を説明します。

開示された資料によると、札医大は、1962年(昭37)5月に浦河町東栄遺跡からアイヌの遺骨35体を収集し、現在も保管中(「本件遺骨A」)。それらは、「文化財保護法による届け出許可のもとに行われた札幌医科大学主体による発掘調査」として、「研究のための収集」と記されています。

さらに、札医大は1979年(昭54)に浦幌町十勝太の町道拡幅工事の際に発見された遺骨1体を浦幌町から「移譲」されています(本件遺骨B)。これら36体の遺骨の返還請求を起こしました。

灯台を破壊するほど荒れた留萌の波 連日吹雪いています。

コタンの会は、自分たちのコタンから掘られ持ち去られた遺骨はコタンのものなのだから速やかにコタンに返し再埋葬したいという主張を続け、裁判所の和解により過去に北海道大学より遺骨を取り戻し、浦河町杵臼、浦幌、紋別と再埋葬を行って来ました。

被告北海道は本件遺骨Aについて「埋蔵文化財」として、これらの遺骨の所有権を有し、被告札医大は被告北海道から依頼を受けた保管者として本件遺骨Bの占有権を主張しています。

 しかし、発掘の経緯を精査すると、結論は「埋蔵文化財」とは言えない。そのため、被告北海道は本件遺骨Aについて所有権を有していない。そのため、遺骨は返還されるべきというのが原告の主張です。

まず、発掘されたアイヌ墓地の歴史を調べると、古い時代ではなく明治以降に東栄遺跡の中に、付近に住むアイヌの人々が墓地として使用したことがわかる。アイヌ墓地そのものは「アイヌ期」の遺跡ではない。しかも1962年の調査・発掘の際の資料にも「調査分担は浦河町教委が考古学、札幌医大がアイヌ墓地である」とされ、東栄遺跡のうち、縄文以降の考古学的遺跡の発掘は浦河町教育委員会が担当し、被告札医大は明治以降に使用されていたアイヌ墓地の発掘を担当していたことがわかる。さらに、札医大は考古学的な遺跡発掘調査をしたのではなく、解剖学者による解剖学のための「研究のための収集」であることも明瞭となる。

要は、札医大は最初から研究材料として明治期のアイヌの遺骨であることをわかりながら、あたかも「アイヌ期」で埋蔵文化財であるかのようにゴマかして発掘して持ち帰っていた、ということなのです。

被告らが、本件遺骨Aが埋蔵文化財であるとする根拠は、結局、虚偽による結果である。文化財だから自治体の承諾を得れば、研究対象に簡単にできることを研究者らは利用したということになる。

✳︎これが明らかになれば、他にも「埋蔵文化財」とは言えないものを「埋蔵文化財」とされて、研究対象にされているものがある可能性が大きいということ。

 

原告コタンの会が、なぜ本件提訴をせざるを得なかったのかと言うと、これらの遺骨がすでにミトコンドリアDNA研究の対象とされているからです。2017年10月11日、安達登と国立科学博物館・人類学研究部篠田謙一ら複数の研究者によって英字論文で発表しています。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ajpa.23338/full

本件遺骨AからのミトコンドリアDNAの抽出とその解析は、権限あるものの承諾を得ていないものとして研究倫理に反するとともに違法行為(器物損壊罪)と評されるべきものです。

また、さらに本件遺骨AからヒトのDNAを抽出し研究される可能性が高いため、返還を求めたのです。

この論文はなぜかタイトルに古代(ancient)使われており、使用した94の「江戸期アイヌ個体」と述べています。それらのうち32個体が「本件遺骨A」(すなわち明治以降のアイヌの遺骨)なのです。

最近、ips細胞の論文に不正があったことが大々的にニュースになりましたが、この論文もそれに匹敵するほど問題があるのではないでしょうか。

 

北海道アイヌ協会・日本人類学会・日本考古学協会による「これからのアイヌ人骨・副葬品に係る調査研究の在り方に関するラウンドテーブル・最終報告書」こちらが、昨年4月に出来ました。この中に、従来の研究に問題があるため研究者は深く反省し、今日の人権の考え方や先住民族の権利に関する議論や国際的な動向に関心を払い、その趣旨を十分に理解する努力をするべきで、研究をする際には真摯に研究の目的と手法を事前に適正に伝えた上で、記録を披瀝、自ら検証していくことを求めています。そして、研究の対象外とするものとして①アイヌの同意が得られないもの、②100年以内に埋葬された遺骨や副葬品、③収集経緯を公開できないものなどが挙げられていますが、今回の本件遺骨Aは研究対象外のはずです。これも問題にするべきです。

(本件遺骨Bに関しては後日に)。

 

今年の教会(アイヌ民族情報センター)前の雪像。『赤鼻のトナカイ』のつもり。大雪と猛吹雪ですぐに壊れました。