アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

小坂田裕子さんによる「ラテンアメリカにおける先住民族の権利保護」

2017-11-03 12:33:41 | 日記

さっぽろ自由学校「遊」の今年度後半のアイヌ関連連続講座が始まりました。

「遊」にはいつも貴重な学びと出会いをさせて頂くことに感謝しています。後期のテーマは「先住民族の権利、世界の趨勢」で、第1回は小坂田裕子(中京大)さんによる「ラテンアメリカにおける先住民族の権利保護」 (10/20)でした。10月28日付の北海道新聞でも小坂田さんへのインタビュー記事が掲載されていましたが、6月に『先住民族と国際法』Amazonを出版され、その内容にも触れての講演でした。

小坂田さんはラテンアメリカでの裁判報告とアイヌ民族の権利を関連させてお話されました。最後に以下の三点のまとめをされました。

1.米州人権裁判所が個人の人権を発展的解釈することによって先住民族の集団的権利を認める判決を過去に出したことを複数紹介。米州人権裁判所が拠って立つ米州人権条約は日本国憲法以上に個人主義的な条文にも関わらず、集団としての権利を認める判決を行なっている(「人権文書の個人主義という性質は先住民族の集団的権利の承認を必然的に否定するものではないということを示唆した」)。日本国憲法は個人主義的な文章ゆえアイヌ民族の集団的権利を認められないという日本の議論は国際的に見た場合、説得力を持たない。

2.ラテンアメリカでは憲法解釈に「先住民族の権利に関する国際連合宣言 (2007年 以下、「権利宣言」)の趣旨を反映させて、憲法に基づいて先住民族の集団的財産権を認める判決や、権利宣言を直接的に適用して先住民族の同意を取得するよう政府に命令する判決が出ている。日本の裁判所や政府は権利宣言の法的拘束力のなさを理由として権利宣言の利用に消極的な立場をとっているが、ベリーズの国内裁判例では権利宣言の法的拘束力は問題視されず、むしろ権利宣言採択の際に賛成票を投じたことが重要視されている。日本の裁判所では公的拘束力のある人権文書の関節適用ですら消極的だが、法的拘束力のない権利宣言であっても、それが普遍性と具体性を持つ基準を含んでいる場合には必要に応じて参照され国内法解釈の正当性を補強する機能を果たすことができる、つまり関節適用されうると考える。

3.権利宣言は法的拘束力はないが、権利宣言に規定される宣言の中には国際慣習法化している、あるいは少なくとも慣習法として生成しつつあるものもあり、国際慣習法として法的拘束力をもつ権利もあると考える。

難しいのでテープを5回以上聞きました。小坂田さんは最初からアイヌ民族の権利を意識していたのではなく、多文化共生を実現するために国際人権法がどういう貢献ができるのかを博士論文を書く中で研究し、そこでLGBTの人たちやイスラムの女性、先住民族へと関心を向け、権利宣言採択を受けてアイヌの権利も考えるようになられたとのこと。

勉強になりました。日本もぜひ、権利宣言採択の際に賛成票を入れたものとして関節適応をし、アイヌ民族に権利を認めるようになることを願います。

北海道新聞記事 【小坂田裕子さん】先住民族を巡る国際法に詳しい大学教授(10/28)は、分かりやすくまとめられていますので一読をおすすめします。

こちらからもご覧頂けます。

 

さっぽろ自由学校「遊」の今年度後半のアイヌ関連連続講座の詳細は以下に。

http://www.sapporoyu.org/modules/sy_course/index.php?id_course=586