アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

有識者懇の報告書

2009-08-14 08:29:50 | インポート
政府の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」(座長・佐藤幸治京大名誉教授)の政府への報告書を読んでいます。

過日の「チ・カラ・ニサッタ」での学習会は、内容審議に入らず、まずは率直な感想や疑問を出し合い、互いの感じ方に耳を傾けた時を持ちました。読み込んでいく必要を確認し、次回から内容を深めることにして、近く、報告書に対する何らかの行動をとろうと話し合いました。

実習生のMasaくんと昨日は読み合わせながら、いくつかの確認ができました。
まず、アイヌ民族の要望として有識者懇のメンバーでもあり、唯一のアイヌ民族のひとりであった加藤忠アイヌ協会理事長がご自身のヒアリングの際に出した要望と照らし合わせてみました。加藤さんは政府立案に当たっての基本的な三つの観点(「同化政策」「土地・資源」「法制度」)を挙げて、民族の自己決定権がないがしろにされて来た歴史と対話の必要性を訴えた上で、以下のことを提案しています。

政策提案
 (1) 教育の充実への支援
 (2) アイヌ研究・民族教育への支援
 (3) 遺骨の返還、慰霊
 (4) 広義の文化振興~経済活動との連携
 (5) 文化振興等の基盤としての土地・資源の利用
 (6) 啓発・教育の重要性
 (7) 政治的参加への対応

推進手法
 (1) 窓口機関・審議機関の設置
 (2) 国連宣言の参照
 (3) 予算の確保、新たな立法措置
 (4) 先行事例調査
    (2008年9月17日第2回有識者懇談会議事録参照)


政策提案(7)は、日本政府に対するというより、アイヌ民族内の体制つくりについてのことなので、外して考えると、提案(1)~(6)も、手法(1)~(4)も盛り込まれたと言っていいでしょうか(手法(3)(4)に関しては(1)の窓口機関設置と審議機関設置で審議・調査することが保障されれば、ですが)。

個々の意見や要望も出てきていますので、手に入り次第、照らし合わせようと思います。



イワキキンニ(ななかまど)の葉
イワ=山地の、キキ=魔を追い払うもの、ネ=~になる、ニ=木 の意味だそう。




有識者懇の報告書「3(1)①アb アイヌの人々が全住民族であるということ」に、有識者懇の先住民族の定義が書かれています。以下、引用。
「先住民族とは、一地域に、歴史的に国家の当時が及ぶ前から、国家を構成する多数民族と異なる文化とアイデンティティを持つ民族として居住し、その後、その意に関わらずこの多数民族の支配を受けながらも、なお独自の文化とアイデンティティを喪失することなく同地域に居住している民族である」

比較ができるであろうコーボゥ報告書による先住民族定義は以下の通り
「先住民族」が「自己の生活領域において発達した侵略前及び植民地化前の社会と歴史的連続性を有し,自己の領域又はその一部において現在優勢であるところの社会の中の他の部分と自己を異なるとみなす者」  コーボゥ報告書 5巻379
コーボゥ報告書のは「侵略」「植民地化」が使われています。
(コーボゥ報告書については過去ブログ参照)



アッニの葉 内皮であつし織りの布をつくる 




昨日の北海道新聞によると、政府は内閣官房に「アイヌ総合政策室」を設置したようです。秋にも発足させるアイヌ政策審議機関の事務を担当することと、これまで複数の省庁が個々に当たっていたことを総合的に担当するためとのこと。
(北海道新聞08/13 06:33  http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/182470.html)。

政府窓口が出来たことは進歩です。審議機関には複数のアイヌ民族が入って深い審議ができる事を願います。
先日紹介したカナダの審議機関は複数が先住民族であり、委員長も共同委員長として一方は先住民族代表、もう一方は非先住民族川で高裁判事の双方から出ていました。
対等な立場で設置していくことが求められているでしょう。


センター実習生

2009-08-11 13:05:40 | インポート
忙しくしていたため日誌が滞ってしまいました。

有識者懇談会の報告書が以下にUPされましたね。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainu/index.html

今日はチ・カラ・ニサッタのメンバーと報告書の読み合わせをし、一緒に考える時を持ちます。


この数日の報告をします。
7月30日(木)NHK総合テレビ「タビうた」での夏川りみさんとマレウレウは良かったですね。皆さんとてもきれいでした。

31日は留萌でのN'DANAライブ。生はやっぱり違いますね。迫力があります。感動の2時間でした。

8月4日より、農村伝道神学校の学生であるMasaさんが当センターでの社会実習をするべく来道。9月3日まで行動を共にしていただきます。
彼が来たその夜(4日)に、さっぽろ自由学校「遊」連続講座「先住民族の権利に関する国連宣言」を読むⅡで酒井美直さん(アイヌ・レブルズ代表)のお話を伺うことが出来ました。彼女の生い立ちから多くのことを感じさせてもらいました。

5日(水)は札幌から留萌に戻ると、毎年この頃に北海道旅行に来られる松本のWさんファミリーが来られていて再会を喜びました。
6日(木)は 旭川嵐山の「伝承のコタン」にて博物館体験学習「アイヌ文化 作る・食べる・奏でる」にMasaくんと参加。はじめてイナウを削りました。ムックリもなかなかいいものが出来ました。




わたしのはじめての作品。削るのはむずかしいです。


その後、名寄に向かい三愛塾に参加。「いのちの園」の村上くんたちのライヴを聴いて感動。

7日(金)は早朝に名寄を出発し、11時から北大アイヌ納骨堂イチャルパに参列。その後、北大アイヌ民族フィールドワークを行なう予定でしたが、疲れが溜まっていたのでそのまま留萌に帰りました。

8日(土)はわたしたちの機関紙「ノヤ」36号の発送準備をこなし、翌日の準備。
ノヤ最新号の編集は今年から東十三教会に転任された斎藤前スタッフが引き続き担当して下さり、既に印刷屋にまわしています。今月末にはみなさんのと手元に届くでしょう。
新規に送付ご希望の方はメールを下されば送らせていただきますのでどうぞ。

9日(日)はMasaくんに札幌北部教会の礼拝に参加してもらい、13:00からの国際先住民の日記念事業にビデオを持って行ってもらいました。なかなかいい撮影でした。感謝。

10日(月)は朝からプロジェクター持参で芦別に向かい、北海教区青年キャンプにて「アイヌ民族と北海教区の取組の過去・現在と今後の展望」を発題させて頂きました。合間に前日Masaくんが撮った国際先住民の日記念事業のビデオも写して、現在のアイヌ民族のみなさんの活動を紹介させて頂きました。
夕方には旭川の川村カ子トアイヌ記念館のこども達が留萌の海水浴に来ているというので我が家に寄って頂き、みなさんと9時過ぎまでお話して豊かな時間を持つことが出来ました。

これから日帰りで札幌に向かいますが、今週後半は留萌にてノヤ発送の事務作業に専念します。


ひろ~いひまわり畑 (名寄)