アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

公演・講演情報

2012-07-28 09:57:57 | インポート
「ヤイユーカラの森」活動20年記念公演の情報が入りました。

ムカシ玩具舞香一人芝居 神々の謡~知里幸恵の自ら歌った謡~
8月30日(木)18:30より、札幌エルプラザホールにて開催されます。
過去blogにも書きましたが以前に登別の公演を見に行き、たいへん感動しました。
お勧めです。是非、どうぞ。
詳細は以下へ(アイヌ民族関連 イヴェント情報)
http://blog.goo.ne.jp/sakura-ive


推進機構主催の「アイヌ文化普及啓発セミナー」前期が昨日、終了しました。ひとつも受講できなかったのが残念でなりません。
後期は以下の日程と内容で開催されますので受講したいと思います。
いずれも午後6時半より、かでる2・7 7階730研修室

8月29日(水)
講座:「二風谷アイヌ語教室-大人の部・子どもの部の取り組み」 
講師:関根健司(二風谷アイヌ語教室子どもの部講師)

8月30日(木)
 講演:「アイヌ研究とは誰に向けられたもの?」
 講師:門脇こずえ(アイヌ文化活動アドバイザー)


今週に留萌で開催された伝統工芸作品展に来られた門脇さんが話されます。とても楽しみです。
    
2010年11月13日、日本文化人類学会主催の公開シンポジウム「人類学とアイヌ研究:日常としてのフィールドワーク」が、北大で開催され、第3部「若者が語るアイヌ研究と伝承の未来」で門脇さんは若者の一人として発題されました。
この時の感想をUPし忘れていることに気がつきました。いつかテープおこしと感想を書きたいと思いますが、研究者たちの発題には疑問がたくさん残ったのを思い出します。
門脇さんの「アイヌ民族自身がもう少し努力をして学び、自らの文化を理解したり一般に伝えることが必要。その上で研究者とコミュニケーションを取りながら研究を進めていくことが自分の目標」と言われていたことが印象的でした。ご自身も努力を重ねておられるのでしょう。170点の伝統工芸作品をご自身で所持されているとは驚きました。ご活躍を祈ります。




アイヌ副読本の全面見直し方針を撤回に?

2012-07-26 20:55:12 | インポート
北海道新聞に以下の記事がありましたので紹介します。
アイヌ副読本、全面見直し撤回へ 推進機構
 財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構(札幌)は24日、小中学生向けのアイヌ民族に関する副読本について、来年度から内容を全面的に見直すとした方針の撤回を固めた。同日開かれた内部委員会で、異論が噴出したため。
 副読本をめぐっては、内容を一部改変した同機構に執筆者が反発し、改変箇所が戻されるなど混乱が続いている。
 24日に同機構で開かれたのは、運営方針を協議する「事業運営委員会」(委員長、加藤忠・北海道アイヌ協会理事長)。
 非公開の会合後、取材に応じた同機構の西田俊夫専務理事や出席委員らによると、委員からは「現在の副読本の問題点が明確でなく、あらたな執筆者が1年や2年で作製できるテーマではない」などの指摘が相次いだ。同機構の事務局が委員に十分な説明をしないまま、内容の全面見直しを打ち出したことへの批判も相次いだ。
 西田氏は「手続き面で落ち度があった」と陳謝した。副読本見直し方針の撤回は、8月2日の理事会で最終決定する。(北海道新聞 07/25 13:18、07/25 17:17 更新)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/390340.html



危惧していた全面見直し方針が撤回と決まれば、まずはひと安心です。「あらたな執筆者が一年や2年でできる」程度が「パンフレットのような薄い」ものを想像させます。
が、8月2日まで気は抜けませんね。全道の教会には引き続き7月29日まで署名をお願いしています。
しかし、「手続き面」の陳謝ですから、内容面や「アドバイザー外し」の問題は扱われるのでしょうか。
ところでアドバイザーはどのような手続きで登録されたり抹消されたりするのでしょう。事前に当然、本人への了解をとっているのでしょうか。今度、伺おうと思います。
数年前に、このたび問題とされたアイヌ民族副読本に関する質問を推進機構に電話でさせて頂きました。たいへん丁寧に出版情報を教えて頂きましたし、とてもいい副読本だと誉めたら喜んでおられたのを記憶しています。



さて、留萌で「アイヌ民族伝統工芸作品展」が開催されています。数日前に鑑賞に行き、体験学習もしてきました。
いま話題の振興財団の助成事業ということで、アイヌ文化アドバイザーの門脇こずえさんがアイヌ民族の衣装や民具170点をるもい海のふるさと館に展示し、くわしい解説や体験を指導されています。
多くの方が来られて関心度も高いし、会場も素敵だと感想を言っていただき、うれしくなりました。
今日も近所のこどもたち3人と体験に行ったのですが、時間がないというのであきらめて帰ってきました。
下記の通り、28日土曜日まで開催。

日時 7月22日(日)~28日(土) 午前10時~午後4時
会場 るもい海のふるさと館入口ロビー(大町2丁目)
体験項目 アイヌ文様切り絵、樹皮編みストラップ、伝統楽器ムックリ・文様刺繍
主催 アイヌ文化アドバイザー 門脇こずえ
問合せ kozuejam0621@yahoo.co.jp/080-3262-6205
財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構助成事業



音威子府の松浦武四郎の北海道命名の地の解説


『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集いパート2 報告3

2012-07-21 20:34:51 | インポート
後半のシンポジュウムでは、小野有五さん=O(北大名誉教授)、清水裕二さん=S(考える会代表)、阿部ユポさん=A(北海道アイヌ協会札幌支部長、市川守弘さん=I (弁護士)が、各10分話し、会場からの質疑応答がなされました。いくつか紹介します。詳しくは後日に報告集を出すということですのでそちらをごらん下さい。以下、イニシャルで発言者を付けます。

「編集委員会に副読本の編集権はない、理事会で決めれば内容はいくらでも変えられる」と言っている推進機構の理事メンバーが一番問題だ。そういう理事をそのままにしていいのか。(Oさん)
集団の権利ゆえ、アイヌ民族とは誰かをアイヌ民族の中で定めていく必要がある。そして、アイヌ協会は代表ではないから、別に民族の代表機関をつくるべきだ(Oさん)

午前の編集委員会で、全国発送の際の鏡文が問題になった。書き換えの「白紙撤回」をせず、再修整とした。新しい編集委員会では冊子ではなくパンフレット程度にしようとしている。(Sさん)

アメリカのモニュメント・バレーをご存知だと思うがナバホ政府が管轄している場所だ。観光業者もナホバが行っているし課税権もある。裁判所や国会もある。それらはもともとあったものを保存している。(Iさん)
集団権利は自治区を作ることだ。日本国憲法の地方自治の章で「地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」(92条 補足筆者)とあるから作れるんだ。あとは国会が法律の範囲内でどういう権限を盛り込んでいくかだ。今の自治体も罰則が決められる。だから色々な権限が決められる。これらを考えるのが今後の課題。(Iさん)

「北方領土」には日本よりも先にロシアが行ったとロシアは言う。その前に先住していたのがアイヌだから、日本には返さないがアイヌには権利があると言っている。日本政府は北方の居住者連盟はたくさんの組織があってそこに膨大なお金を出しているのにアイヌには一切ない。北海道ウタリ福祉対策を35年やっている(2008年に名称が変わり「アイヌの人たちの生活向上に関する推進方策」)が、その8割はアイヌにではなく、公共事業として使われた。アイヌ政策は進んでいない。(Aさん)

今なぜ副読本問題なのかを考える時、教科書採択問題が絡んでいると考える。「新しい歴史教科書をつくる会」が分裂してできた育鵬社(いくほうしゃ)の教科書が各地で選択されている。実は今回の件で大騒ぎをしている義家議員はその教科書を採択させる国会議員連盟の会の事務局長だ。昨年に尖閣諸島を抱える沖縄の八重山地区で義家議員に指南を受けた教育長がこの育鵬社教科書を採択、竹島を抱える島根県も密室で採択した。次は「北方領土」を抱える北海道が狙われているとしか思えない。そのために副読本攻撃があったのでは?育鵬社教科書でアイヌ民族の記述はたったの15行で内容も問題だらけ。(他の社会科教科書は9頁)〈会場から中学教師さん〉。


などの発言がありました。他にも、函館のある教授は今回の「修整」にたいへん立腹し、今後このような書換えをするようなら自分が提供した資料一切の使用を禁止すると言われたという報告や、推進機構の理事である常本照樹さんや佐々木利和さんは園遊会に行く時間があるのだから、彼らをこの考える会にご招待して、書き換えを認めるのか聞こうではないかというような意見もあり、驚きや拍手が響きました。


留萌の花火(うまく撮れません)


最終的に、集会宣言を採択しました。後半の主要部分を添付します。

しかし、財団は、不当な政治介入によって行った記述「修整」と同時に提案していた編集委員の総入れ替えによる「新しい副読本の発行」は断念していない。それどころか、8月1日の評議委員会、2日の理事会で、「新しい副読本」の提案をしようとしている。財団が行ったアンケートでも、8割以上が「活用しやすい」と高く評価し、ようやく活用が定着しかけている現行副読本を、発行からわずか4年しか経っていない現時点で「新しい副読本」に変更する理由はどこにも見当たらない。「新しい副読本」は歴史改ざんを行った「修整」の延長上にあるとの疑念は消えない。
 アイヌ民族副読本の副題は「未来を共に生きるために」である。そのためには、日本の近代化の課程におけるアイヌモシリへの侵略・植民地化、アイヌ民族への過酷な同化政策とそれに対する民族の命懸けの抵抗の史実が明らかにされ、アイヌ民族の先住権が確立されなければならない。歴史事実の改ざん・削除は、「共に生きる」未来には到底つながるものではない。
 よって、本集会参加者の創意として次の点を財団に強く求めるとともに、北海道教育委員会、日本国政府に対してもこの決議文を送付し、問題の所在と私たちの意思を明らかにするものである。
1.アイヌ文化振興・研究推進機構は、歴史改ざんとなる3月27日の「修整通知」を即時撤回するとともに、編集委員会の創意で「再修整」された副読本を早期に発行して子どもたちの学習権を保障すること。
2.アイヌ文化振興・研究推進機構は、不当な政治介入による「新たな副読本の発行」計画を即刻中止し、現行副読本の周知徹底と活用の条件整備に力を注ぐこと。
3.「未来を共に生きるために」、歴史の真実を改ざん・削除することなく、アイヌ民族の歴史と文化の記述をさらに充実させること。
以上、決議する。 2012年7月16日 アイヌ民族副読本問題を考える市民の集いパート2 参加者一同


報道として北海道新聞が7月19日の社説で紹介していますので紹介します。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/388697.html


音威子府に建てられている碑 稚内から名寄に向う途中で撮りました。
みなさん、ご存知でしたか? 解説文は後日に掲載します。


『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集いパート2 報告2

2012-07-21 05:38:31 | インポート
市川守弘弁護士の提言「アイヌ民族の先住権とは何か(仮)」の報告です。概要をまとめると以下のとおり。

副読本の書き換え問題の第1ラウンドは、「修整」を撤回させた。しかし、今回は手続きを誤ったと謝っただけで、修整内容について謝っていない。第2ラウンドは次回から新しい編集委員を選んで全面改定して内容を変えるだろうから、「一方的に」を削除した問題、「先住権」などの内容に関する議論をこちらでも深めるべきだ。

先住権には大きく分けて二種類あるとわたしは考える。ひとつは先住権、もう一つは新しい権利(例えば、民族議席を求めるなど。それは政策論になる)。後者ばかりにとらわれていると大もとを見失う。
本来の権利は所有権だ。民法での所有権とは「使用、収益、処分する権利」。アイヌは所有概念がないということを聞くがそれは間違い。アイヌ民族は先住権、つまりその土地の使用、収益、処分する権利を持っていたし、今も持っているはず。

なぜなら、徳川幕府が松前藩に黒印状を渡し、自由に交易しているアイヌに対して松前藩とだけ交易するという松前藩に独占的交易権を与えた(アイヌはそれまで交易していたロシアや中国と交易ができなくなる)。しかし、一方で、黒印状の「付」で「蝦夷のことは蝦夷まかせ」とあり、アイヌの支配領域内における権限はすべて保全された(だからアイヌは人別帳を作られなかったし課税一切なかった)。アイヌは経済的には従属下におかれていくが政治的には自決権は保持されていたのだ(明治までは)。

アメリカの例を参照すると(配布資料 『アメリカインディアン法の生成と発展』 市川守弘著 『現代法律実務の諸問題』平成15年版 日本弁護士連合会編)、インディアンは何千の集団があったが、イギリスが「発見」したあと、土地に関することは対外的にイギリスとだけ交渉可能になる。インディアンの国家主権が一部だけ制限されるが、インディアンの内部の権利は独立している(「発見の論理」)。
ワーセスタ・ジョージア州事件判決で、チェロキーの内部では国家主権は独立しているためジョージア州政府は関与できないとした。

対外的には制約があったが対内的には諸権利は保持された。たとえば、石狩アイヌの土地では自分達の規則に従って鮭を獲る。それを他の地域のアイヌが来て勝手に獲ると民事紛争(チャランケ)になった。それを決める慣習法という法律があった。対内的には民事法制、刑事法制、それに対する補償手続きを各コタンが持っていた。各コタンが一種の国家なのだ。国家としての権限に裏打ちされた土地の使用、収益、処分する権利を先住権という。

明治に入り、開拓使はこれを全く無視して勝手に土地買貸規則(明治5)により、一切の土地は「官に属す」として国有地として宣言した。国有地にできる根拠はない。そして、先住民族アイヌが先住しているにもかかわらず、それを承知で、地所規則で和人のみに土地を払い下げる政策をとった。国際法からすれば権利侵害であり、これを「一方的」と言うのだ。

これは賠償の対象になる(先住権)。アメリカの例ではブラックヒルズをめぐる戦いで合衆国側が違法な手続きによる土地取得だったとの判決が1970年代にあり、当時の土地代金に年5%の遅延損害金(いわゆる利息)を百数十年分付けてスー族に返済させたのがある。
おなじことが日本でもやられなければいけない。それは日本が世界に合法的でちゃんとした民主主義的国家であることを宣言する以上は当然にやらなければいけない義務だ。

では、だれがこの権限を持つのか。それは個人ではなく、主権を背景とした集団の権利だから、アイヌ民族では各コタンだ。今でいうとコタンの子孫だ。

先住民族の権利といっても先住民族の実態がもうないのではないかという言い方をされるが、アメリカ連邦高裁は、政府がインディアンを保護することを怠ったために生じたことであり、その事に時効とか権利が行使されないから失効するという考えは絶対にとることが出来ない、と判決した(前掲書1018頁)。

もうひとつ、日本国憲法との関係については、先住権とは日本国憲法が出来る前の権利であって、前権利なのだ。依然、日本政府とアイヌ民族は対等なのだ。日本政府は勝手にはアイヌを日本国憲法下に置けなかったということ。
この前憲法的権限を持っている先住権の回復には乗り越えるべき課題はある。
副読本は単にアイヌの生活ぶりを伝えるというのではなく、権利も伝えるものにするべきだ。


留萌から稚内に向う途中。


『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集いパート2 報告1

2012-07-20 08:06:56 | インポート
休日の16日の14時からにもかかわらず、100名ほど入る会場がいっぱいになり、それほどに関心が高く、皆がアイヌ民族の教育に関する危機感をもった熱い集会となりました。

前回に書いたように、推進機構が編集委員会も開かずに3月27日に「修整」通知を全国に発送した後、執筆者らが要望し、6月11日、7月1日、16日の3回の編集委員会を開催。第3回目が16日の午前に開かれ、推進機構側が「執筆者に相談せずに決めたのは認識が甘かった」と陳謝し、従来の記述に戻すことにしたことが報告されました。
(道新では、「市町村教委などに対し、撤回の文書を送る考えを明らかにした」とありますが、執筆関係者によると、推進機構側は「撤回」の文言を避けた、と)。

また、8月1日推進機構の評議会、2日に理事会があり、推進機構側はすでに新編集委員10名を決めているという情報をもとに追求したが、先方は否定。しかし、2日の理事会で新たな編集委員会を作る方向を出し、全く新たな「副読本」を作成する可能性は消えていません。

興味深い報告に、振興機構が一昨年に実施した副読本に対するアンケート結果がありました。詳しくは、後日に「考える会」が今回の報告集を作成するというので、それにアンケート結果も掲載するよう要望しましたから、それが出てからもう少し正確に紹介できると思います。アンケート内容と編集委員の分析は編集委員のお一人の石黒文紀さんから以下の通り(要点筆者)。

推進機構は、道内の小中学校1897校、教育委員会180、そして道外の公立学校100校の合計2177にアンケートを送付し、回収できたのは38,8%。

約4割の回答の中で、「授業で活用している」が46%、「読み物として配布」が30,8%、「教室や図書室で閲覧」が12%。なんと約9割が副読本を何らかの形で活用していることがわかる。

また、現在の副読本が「活用しやすい」が72,4%(10年前は40%)、対して、「使いにくい」は3,2%。「どちらでもない」が23,1%(但し、内容はいいし写真もいいが文章がちょっと難しいというもの)。アンケート結果としては大半が現在の副読本をよく評価していることになるのに、推進機構側は「使いにくい」の3,2%を取り上げて全面的に変えようと考えているのだ。

記述式の回答部分を見ても大半が無条件にいいと感想がかかれており、道外の人々は100%全面的に支持してくれているし、道外では各小中学校に一冊のみの配布に留まっているが、全学年分の希望を書いている人もいる。

まとめとして、学校現場から圧倒的に要求されるのは、現在の副読本にさらに新たな要素を加えて発行すべきだというのが8割以上しめているので、今後の編集方針に反映させるべきだ。それと、なぜ活用できないかというと教師の知識不足が10%、圧倒的に多いのは時間不足が7割近くある。これらの改良がアンケートを生かすことになるとかんがえる。


推進機構が行ったアンケートで回収率4割とは言え、これだけ高評価の結果が出ているのに全面改訂を行う意味が分からない。今までの副読本を継承しつつ、より良いものを作るためにも編集委員をそのままにするか、継続性を考えて半数以上を残すかするべきだとわたしは思います。

ところで、推進機構では「アイヌ文化活動アドバイザー派遣」というのがあり、推進機構が事前に委嘱しているアドバイザーを地域の要請によって派遣し支援する制度があります。
(詳細は推進機構へ→ http://www.frpac.or.jp/ser/adviser.html )
現在の編集委員のメンバーもアドバイザーとして委嘱されていたのが、どういうわけか何の連絡もなく今年度は外されていたとのこと。徹底的に排除しようということなのでしょうか。




15日は道北の教会の交流デーで稚内教会の礼拝奉仕に行き、夜は名寄で会議。翌日、札幌で「考える会」の集会に出て帰宅。走行距離730k。留萌から稚内の海岸通を走ると見事な利尻富士が迎えてくれます。
写真の右端にある大きな花はエゾニュー。アイヌ民族がこの茎を使って「ヘニュード」という楽器を作っています。松浦武四郎が書いた絵の中にも出てきます(チレカレツと書いていますが、以下のWEBページで絵が閲覧できます→
http://gazo.library.city.sapporo.jp/shiryouDetail/shiryouDetail.php?listId=7&recId=528&pageId=17&thumPageNo=2)。
アボリジニ民族のディジュリドゥと同じような楽器です。


アイヌ民族副読本改悪問題の署名を継続します。

2012-07-19 09:42:54 | インポート
12日に副読本問題の署名第二次集約分をアイヌ文化振興・研究推進機構に渡しに行くのにお供しました。第一次集約は20,358筆、今回の集約は2,687筆、合計、20,358人の声が届けられたことになります。さらに、第三次集約に向けて呼びかけを行っており、続々、諸教会から声が届いています。

『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集いパート2が16日午後2時より、かでる2・7にて開催されました。

同日、それに先立って開催されたアイヌ文化振興・研究推進機構の編集委員会で、機構側は書き換えについて「十分な検討をせず、認識が甘かった」と陳謝し、執筆者側の要望を受け入れて元の表現を復活させることを正式に決めました。
しかし、機構側は「修整」の「撤回」とは言わず、編集委員らと別の修整箇所を再検討し、今年度版を2学期上旬をめどに発行し、小中学校に配布するとのこと。
たまたま今回の集会に札幌の教会員のMさんも来られていて、お孫さんが小学4年なので学校でどのように配布され利用されるか、また、詳しく修整箇所を確認すると言われていましたので報告を待つことにします。

ただ、問題は、推進機構側は来年度には新たな編集委員をつくり、まったく新しい数ページのパンフレットのようなものを作成することを漏れ聞いたという情報も「市民の集い」であり、8月の推進機構の理事会で審議されるとのこと。今までの積み重ねを無視し、正しい教育を受ける権利が侵されかねないため、わたしたちの間では署名は引き続き7月29日まで諸教会で呼びかけて頂き、31日にわたしのところか「考える会」代表の清水さんのところに着くように再度のお願いをします。

署名のお願い分は過去blog(6月14日)の以下をご覧下さい。
http://pub.ne.jp/ORORON/?entry_id=4375804

繰り返しますが、来年度からここにあるような「改悪、改ざん」を上回る文章の削除や、内容の後退を許さないという意味で署名集めを続けます。


関連報道をUPします。

修整の主要部分、元に アイヌ民族副読本(朝日新聞 2012年07月17日)
■アイヌ民族副読本 編集委で合意
 アイヌ民族の歴史や文化を扱った副読本の「修整」問題は、16日開かれた編集委員会で、発行元の財団法人「アイヌ文化振興・研究推進機構」(札幌市)による修整箇所を再検討した結果、主要部分は修整前の表現に戻すことなどで、編集委と財団側が合意した。財団は、遅れている今年度版を9月上旬をめどに発行し、小中学校に配布する。
 財団が道内外の教育委員会などに通知した修整は小4用6カ所、中2用5カ所。修整では、明治政府が北海道を「(アイヌ民族に)ことわりなく、一方的に日本の一部とした」との表現が削除されたが、復活が決まった。「歴史の改ざん」と編集委員らの反発が強かった。
 この部分を含めて4カ所は元の表現に戻し、7カ所は補足したり表現を改めたりすることになった。
 16日の編集委後、記者会見した財団の西田俊夫・事務局長は、修整の際に編集委を開催せず反発や混乱を招いたことを「おわびする」と謝罪。8月2日に開く臨時理事会で、編集委の結果を報告し、了承を得るとした。
 編集委員長の阿部一司・北海道アイヌ協会副理事長は「基本的に修整を元に戻す形となり、子どもたちの学習する権利も確保できた」と一定の評価をした。
 ただ、来年度版以降の副読本は財団側が新たな編集委員による作成を決めている。阿部氏は「(副読本の内容と編集委員を)変える必要はない。アンケートでも今の副読本は活用しやすいという回答が7割を超えている」と指摘した。次の理事会では、この点も協議される。(泉賢司)
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000001207170002


書き換え部分を復活へ アイヌ民族副読本 推進機構が陳謝(北海道新聞 07/17 06:57)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/388076.html




『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集い パート2

2012-07-12 11:53:13 | インポート
『アイヌ民族副読本』問題を考える市民の集い パート2のご案内です。
送られてきたはがきには開催時間が書かれていませんでしたが、チラシで補足しました。
本日、副読本問題の署名第二次集約分をアイヌ文化振興・研究推進機構に渡しに行くとのこと。第一次集約から二週間ですでに2千筆を越えたようです。わたしの手元にその後に届いた70筆分と、これからいくつかの教会を回って収集する分を含めて持参する予定です。第三次集約の日時を「考える会」に聞いて、再度、呼びかけを行います。

 (財)アイヌ文化振興・研究推進機構が、全道の小学校4年生、中学校2年生に配布している副読本『アイヌ民族:歴史と現在』の記述を、一議員の政治的圧力でアイヌ民族の先住権を否定する内容に書き換えた通知文を全国に発送した「アイヌ民族副読本改ざん」問題は、各方面に大きな波紋を投げかけました。
 しかし、現行副読本を作成した編集委員会の開催を強く拒否していた財団も、『アイヌ民族副読問題を考える会』の諸行動を始め、道内外各界・各層からの抗議、要請、申し入れなどが相次ぐ中で開催された財団の評議員会や理事会でも厳しい批判や抗議を受け、ついに編集委員会の開催を認めざるをえなくなり、協議の結果、現行編集委員会による早期の副読本発行を勝ち取ることができました。
 私たちは、この間の運動の成果と課題を市民の皆さんに報告し、あわせて、焦点になった『先住権』の問題について学び語り合いたいと思い、『市民の集いパート2』を企画しましたので、前回同様たくさんの方々の参加をお待ちしております。共にこの問題を考えてみましょう!

日時 : 7月16日(月) 午後2時~       資料代:300円
会場 : かでる2・7 「710研修室」(札幌市北2西7)
内容:提言~市川守弘(弁護士)
★シンポジウム~小野有五(北大名誉教授)・清水裕二(少数民族懇談会会長)・市川守弘(弁護士)
主催:アイヌ民族副読本問題を考える会 問い合わせ先 ainu_subtext@yahoo.co.jp



オオウバユリの花芽です


アイヌ人骨盗掘・返還請求無回答の問題ですが、近く動きが出てきます。
先立って、北大開示文書研究会代表が政府のアイヌ政策推進会議での議事概要から遺骨問題の部分をピックアップしてまとめてくれました。確認しながらいくつか気になることが出てきましたので、さっとおさらいをしてみます。

まず、『民族共生の象徴となる空間部会』議事をながめると、「尊厳ある慰霊」と「研究による成果還元」に関して推進の立場での意見として、
○人骨問題に関しては、尊厳ある慰霊と、研究による成果還元の両立を求めたい。研究によりアイヌのルーツや過去の生活状況が明らかになれば、差別や偏見の解消につながっていくと思う。
○人骨研究に関しては、昔に比べてアイヌの人類学に関する理解が進んでいること、今後も遺跡から発掘される人骨が出てくるという状況を踏まえる必要がある。アイヌから人類学者が出てくれば研究の必要性も高まることになる。
○先住民族の人骨の慰霊と研究の両立は、世界では例がない取り組みであり、我が国では可能ではないか。慰霊が主であるが、人骨研究もアイヌにとって如何に重要であるかを時間をかけて説明していきたい。それまでの間、将来の研究の可能性を含め、一カ所できちんと管理していくことが重要。 (以上、第6回部会 2010年7月26日)


とあり、慎重の立場の意見として以下が記されています。
○人骨問題は、筋論から言えば、懇談会報告に記載されているとおり、アイヌの精神文化を尊重し、国として負っている責任を果たすことであり、慰霊と研究を同列に扱うことは出来ない。現実論から言えば、現在、いくつかの大学で人骨を保管しており、アイヌ民族との協議に基づいて研究に活用する可能性はある。研究によってアイヌ民族のルーツが明らかになればアイヌ民族にとってもプラスであろうし、慰霊施設の設置といっても、納骨だけでは地域にとっては受け入れ難いかもしれない。どの筋から議論すれば、どういう論点が出てくるかを整理する必要がある。
○人骨問題は、徹底的に議論が必要。アイヌ側の総意集約が前提。(第6回部会 2010年7月26日)


以前から指摘していますが、誰の発言かが記されていないため、どの立場からの意見かが分かりません。
ただ、その後、推進側の意見が強まってきます。
○アイヌの人骨については、研究者が減少しており、大学によっては早晩、責任を持った管理ができない状況になることも考えられる。象徴空間で集約し、過去を明らかにした上で研究成果を還元していくことが必要と考える。
○研究に活用することは北海道アイヌ協会として了解している。 (以上、第8回部会 2010年11月18日)
○アメリカのように遺骨を再埋葬してしまえば、100年後に先住民族のルーツが歴史の中で消えていくおそれさえある。アメリカの例は、現状のみに目を奪われて将来について考えないことが問題であると思う。アイヌ人骨の研究成果が、アイヌの人たちや国民に還元されるために、50年、100年保管が可能な状態が必要。これはアイヌ協会と同じ考え方。 (第10回部会 2011年1月27日)


なんと、研究者不足を理由に集約と研究推進が述べられていたり、研究しないと先住民族の歴史が消えるという言い方がなされ、研究の必要性が強調されています。
また、「北海道アイヌ協会として了承している」とありますが、アイヌ協会の会員のみなさんのどれだけが、ご自分の先祖の遺骨を盗掘されたという情報を受けているかが疑問に残ります。また、アイヌ協会会員ではない遺族に対する承認の問題については触れられていません。アイヌ協会への承諾がアイヌ人骨すべてを研究対象にしていいということにならないはずです。

そして、「民族共生の象徴となる空間」作業部会のまとめとなる「報告書」(2011年6月)には、以下がまとめられています。
集約の対象となる人骨を特定し、人骨の返還や集約の進め方に関する検討を行うため、各大学等の協力を得て、アイヌの人骨の保管状況等を把握する。 なお、集約に際しては、施設の設置場所に留意するとともに、地元の理解を得るよう努めるほか、集約した人骨については、アイヌの人々の理解を得つつ、アイヌの歴史を解明するための研究に寄与することを可能とする。

これを受けて、第1回「政策推進作業部会」(2011年8月31日)の「意見」の中で、
「人骨の取扱いについて一番大切なことは、どのような経緯だったのかということについて、可能な限りの情報開示、情報共有。最終的には、返還、集約についても合意が必要。」
とあり、第2回「政策推進作業部会」(2011年11月14日)においては、文部科学省からの説明で、2012年12月を回答期限として、国公私立大学及び大学共同利用機関において保管しているアイヌ民族の人骨の情報、保管に至った経緯、人骨の出土等に関する情報、人骨等の保管状況に関する情報について調査することを承認し、現在に至っています。

人骨の保管状況がどの程度あきらかになるかが注目です。施設の設置場所をどのように「留意」するのか。さらに、アイヌ民族の理解を得るためどのような努力をされるのかも。
前回blogにも指摘しましたが、7月6日に開催されたアイヌ政策推進会議(部会ではない全体会議)の報道記事では、これらの問題を「速やかな検討を進めるとした」(朝日新聞7月7日記事)とあります。速やかに、じゅぶんに多くの意見を聞いて検討を重ねることを願います。


夏です。ビーチも整備されてきました。みなさん、どうぞ留萌へ!


副読本問題の署名第一次集約報告

2012-07-09 12:17:52 | インポート
活動報告が滞り、申し訳なく思います。
6月中旬に全道の諸教会や全国の仲間にアイヌ民族副読本問題の署名のお願いを発信し、多くのご協力を頂いています。わたしの手元に寄せられた署名70筆は下記の報道にある1万7671筆のなかに含まれて、第一次集約として6月29日に提出されました。
その後も、特に道内の教会単位でわたしのほうに届けられているので、随時、「考える会」の清水代表に送るようにしています。今後もどうぞご協力をお願いいたします。後日、最終集約日をお伝えします。以下、紙面引用。


「修整」撤回求め1万7671名が署名 アイヌ民族副読本問題
小中学生用のアイヌ民族副読本「修整」問題で、編集委員の一人で「アイヌ民族副読本問題を考える会」の清水裕二代表らが29日、発行元の財団法人「アイヌ文化振興・研究推進機構」を訪れ、「修整」の撤回などを求める1万7671人分の署名を西田俊夫事務局長に手渡した。
署名は5月14日、「修整」問題について開かれた「市民の集い」のあと、全国に呼びかけて集めたもの。「現行記述を『修整』するとした『通知』を早急に撤回すること」「副読本の記述内容の改悪・改ざんをしないこと」などを求めている。署名を受け取った西田事務局長は「修整箇所について再検討した上で、出来るだけ早く発行したい」と話した。(朝日新聞 2012年6月30日朝刊)




政府のアイヌ政策推進会議の全体会合が一年ぶりに7月6日に開催されたようです。作業部会がまとめたアイヌ修学支援策の報告を了承するなど、以下の報道がありました。以下、引用。

アイヌの就学支援強化=政府
 政府の「アイヌ政策推進会議」(座長・藤村修官房長官)は6日、首相官邸で会合を開き、北海道外に親が居住するアイヌの学生に対する奨学金事業の拡充など、就学支援を強化していく方針を決めた。2013年度予算案に盛り込む考えだ。
 推進会議は、大学でのアイヌ文化の研究支援や、職業訓練など就労支援を強化することも確認。藤村長官は会議で「アイヌの人々が誇りを持って生きることができる豊かな共生社会の構築に向けて、積極的に取り組んでいく」と述べた。
(時事通信 2012/07/06-20:18 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012070600916)


象徴空間に関しては、構想をさらに具体化するために政府として全体のマスタープランとなる「象徴空間基本構想」を早期に策定する方針を決めた(朝日)他、気になる「慰霊施設」に関しては、朝日新聞のみが以下の報道をしています。以下、引用。

北大をはじめ全国の大学などが研究目的で収集したアイヌ民族の遺骨については、文科省が各大学などに調査とその回答を求めているが、政府として調査後の返還の進め方や、「尊厳ある慰霊」が可能となるような象徴空間での集約施設や配慮のあり方などについて、速やかな検討を進めるとした。
(「象徴空間」構想早期策定へ 朝日新聞7月7日朝刊)


慰霊施設を目的としているより、各大学で集められた「研究材料」を一箇所に集めて研究しやすいように整えることのほうが目的となっているのではないかと危惧しているわたしの知り合いのアイヌ民族の皆さんは、はなから「尊厳ある慰霊」などできないと言っておられます。どのような「配慮」を検討するのでしょう。
それ以前に、ご遺族が返還を望んでいるにも関わらず、何の応答もされない北大を指導する必要があるのではないでしょうか。




山中で小鹿と遭遇。しばらくにらめっこしました。
今年もトレップ(オオウバユリ)の一番粉を数キロとりました。わたしが使うのはもったいないのでお世話になっているアイヌ民族のみなさんに送ります(上記写真はトレップの若い葉)。