アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

サケ捕獲権確認裁判 地裁判決

2024-04-28 04:45:29 | 日記

世界の先住民族は先住民族の権利、先住権によって多くの権利を得ています。ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの広大な地域に国境が引かれる前から居住しているサーミ民族は、それらの国々を自由に超えることのできる越境権があります。台湾では16民族を先住民族として国が認め、それぞれの言語を公用語としています。北西アメリカのサーモンピープルと呼ばれている人々は、サケの捕獲権を含む先住権を持ち、さらに連邦政府からの支援を受けて独自の専門家や科学者を雇い、河川や海洋の資源管理を行っています。

浦幌町のアイヌ民族団体であるラポロアイヌネイションは、かつて北海道大学等が盗掘し研究材料としたアイヌ遺骨を取り戻す裁判を経て、遺骨返還を果たしました。さらに、2020年8月には、先祖が自由に漁をしていた浦幌十勝川の河口から4キロの間でサケを取ることは先住権によって認められるとした確認の裁判を起こしました。原告側は、もともとあった権利が国によって理不尽に剥奪されたのだから権利を返してほしいと訴え、アイヌの先住権を争う初の裁判となりました。さる4月18日に札幌地方裁判所は訴えを退ける判決を言い渡しました。

判決文  (クリックすると北大開示文書研究会のサイトに行き、リンク先が表示されます)

判決後の報告会(ディヴァン・スクルマンスタッフ撮影)

国連において長きにわたって議論を続け、先住民族国連宣言が2007年に採択されました。宣言には「先住民族は伝統的に所有するなどした自然資源に対する権利を有する」と明記され、日本もこれに賛成票を投じました。
そして、翌年の2008年にはアイヌを先住民族と認める法案が国会で決議され、「国連宣言における関連条項を参照しつつ、高いレベルで有識者の意見を聴きながら、これまでのアイヌ政策を更に推進し、総合的な施策の確立に取り組むこと」を決め、アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会が組織されて審議がなされました。それらを経て2019年、「アイヌ施策推進法」が施行され、アイヌ民族を初めて「先住民族」と認め、独自の文化を生かした地域振興などが進められることになりました。しかし、土地や資源に対する権利は法律に盛り込まれませんでした。

今回の判決は、アイヌの集団としての「文化を享有すること」は保障され、「サケの採捕は最大限尊重されるべきものである」と認めつつ、その文化は「伝統的儀式、漁法の伝承、保存に関する知識の普及等の範囲」にとどまり、経済活動としての漁業、生業としての漁業は、文化享有権の一環または固有の権利ではないとして、原告の訴えを退ける判決を言い渡しました。また、先住民族国連宣言には法的拘束力がないとも明記されました。

国連総会において1966年に国際人権(自由権)規約が採択され、日本は1979年に批准しました。本訴訟のサケ捕獲権は、その27条の文化享有権の認めている権利であり、経済的活動も含むものです。アイヌを先住民族として認めたといいつつ、過去から受けている不公正や差別を無視し続け、世界の流れに逆らうこの判決に納得いかないものとなりました。 原告側「判決は不服」控訴する方針を示しました。当センターとして応援協力していきます。


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