アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

『アイヌ民族否定論に抗する』

2015-01-31 15:24:29 | 日記
今日、Amazonから『アイヌ民族否定論に抗する』(岡和田 晃,マーク・ウィンチェスター)が届きました。読むのが楽しみです。
過日に講演された上村英明さん(恵泉女子学園大学教授・市民外交センター代表)による「アイヌ民族に対するヘイトスピーチをゆるすな 日本政府の「アイヌ政策」を検証する」がありました。前回の講演報告の補足になるので少し紹介します。

国連の人種差別撤廃条約は1965年に採択、1969年に発効した人種・民族・世系などの広範囲な差別に対抗するための人権基準で、日本政府も1995年に加入。その結果、日本政府には国内の差別状況に関する報告書を定期的に条約の監視機関である同委員会に提出し、その審査と勧告を受けることが義務づけられている。今回の委員会では、金子議員の発言は「表現の自由」ではなく、明確な「暴力」であり、法的に規制すべきだという意見が相次いだとのこと。8月29日に同委員会から日本政府(締約国)に出された「総括所見」の「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」とヘイトクライム(憎悪犯罪)」の前半に以下の文がついた。
「11 委員会は、締約国における、外国人やマイノリティー、とりわけコリアンに対する人種主義的デモや集会を組織する右翼運動もしくは右翼集団による切迫した暴力への扇動を含むヘイトスピーチの万円の報告について懸念を表明する。委員会はまた、公人や政治家によるヘイトスピーチや憎悪の扇動となる発言の報告を懸念する。委員会はさらに、集会の場やインターネットを含むメディアにおけるヘイトスピーチの広がりと人種主義的暴力や憎悪の扇動に懸念を表明する。また、委員会は、そのような行為が締約国によって必ずしも適切に捜査や起訴がなされていないことを懸念する。(第4条)」(国連文書CERD/C/JPN/CO/7-9’ 人種差別撤廃NGOネットワーク訳を若干修正)

この前半の「懸念」を受けて、次のような具体的勧告が出されました。
「人種主義的ヘイトスピーチとの闘いに関する一般的勧告35(2013年)を思い起こし、委員会は人種主義的スピーチを監視し闘うための措置が抗議の表明を抑制する口実として使われてはならないことを想起する。しかしながら、委員会は締約国に、人種主義的ヘイトスピーイおよびヘイトクライムからの防御の必要のある、被害を受けやすい立場にある集団の権利を守ることの重要性を思い起こすことを促す。従って、委員会は、以下の適切な措置を取るよう勧告する:
(a)集会における憎悪および人種主義の表明並びに人種的暴力と憎悪の扇動に断固として取り組むこと、
(b)インターネットを含むメディアにおけるヘイトスピーチと闘うための適切な手段を取ること、
(c)そうした行動に責任のある民間の個人並びに団体を捜査し、適切な場合には起訴すること、
(d)ヘイトスピーチおよび憎悪扇動を流布する公人および政治家に対する適切な制裁を追求すること、そして、
(e)人種差別につながる偏見と闘い、異なる国籍,人種、あるいは民族の諸集団の間での理解、寛容、そして有効を促進するために、人種主義的ヘイトスピーチの根本原因に取り組み、教授、教育、文化そして情報に関する方策を強化すること。」(同国連文書)
ヘイトスピーチは「告訴」の対象になる犯罪であり、公人は制裁されなくてはならない、と述べています。アイヌ政策推進会議でしっかりと議論して、国が訴えないといけないことですね。

アイヌ政策推進会議(第6回)議事概要(2014年6月2日)が下記にUPされています。その中で、アイヌ民族法の早期設置を要望する声がありました。文面から道外に住まれるアイヌ民族の方と想像します(何度も言うことですが、記録には発言者名が記されていませんので不明。おかしなものです)。
○一番希望することだけを申し上げます。昨年9月の会議でも申し上げましたが、アイヌ民族法を本当に作っていただきたい。北海道では象徴空間の話が進んでいますが、北海道外のアイヌは実質的にまだ何ら変わっていません。この現状を打破するためには、民族法の立法化の道筋を一刻も早くつけていただき、北海道内との格差というこの悲しい思いを一日も早く払拭できるようにしていただきたい。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/dai6/gijigaiyou.pdf

第18回「政策推進作業部会」が2014年9月18日に行われていますが、その議事概要によると、アイヌ民族の委員の中にも意見の相違がみられます。「北海道アイヌ協会よりアイヌ遺骨の返還・慰霊のあり方に関する同協会の考え方などについて説明」の後の質疑で、ある委員が以下の意見を述べています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/seisakusuishin/dai18/gijigaiyou.pdf
○先ほどの説明内容は北海道アイヌ協会の会員全員の一致の意見ではないですね。一部の人たちがこういうものを出してきているだけで、これを読んだら怒るアイヌがいっぱい出てくると思う。

さらに、「北海道アイヌ協会の会員ではないアイヌの方々も多くいる」ことを知っている一委員(誰だか分からない)が「それらの方々を含めたアイヌ全体の意見を同協会として今後取りまとめるような考えがあるか」を質問しています。しかし、「議事概要」上での直接的な応答はありません。

前回に書いたことですが、アイヌ協会の会員数は2400人。全道調査での道内のアイヌ民族のみなさんは16786人中の14%の方しか会員になっていません。残りの86%の方、そして道外に住まれているアイヌ民族の皆さんの意見・要望をどう傾聴するかが問われています。

「アイヌの遺骨はアイヌのもとへ」 in 東京 の報告は後日に。本日、朝日新聞紙面に掲載されましたね。


石狩川河口からの朝焼け

「アイヌの遺骨はアイヌのもとへ」in東京 再度のご案内

2015-01-27 18:10:46 | 日記
先日、札幌に行った際、アイヌ民族関連の書籍4冊を購入。
『新・先住民族の「近代史」植民地主義と新自由主義の起源を問う』(上村英明著 法律文化社)
『永久保秀二郎の『アイヌ語雑録』をひもとく』(中村一枝著 寿郎社)
『わが心のカツラの木 滅びゆくアイヌと言われて』(北原きよ子著 岩波書店)
『前沢卓写真集 アイヌ民族 命と誇り』(前沢卓)
それと、今日、Amazonで『アイヌ民族否定論に抗する』(岡和田 晃,マーク・ウィンチェスター)を購入。こちらは諸情報によると本日、札幌の書店に出ていたとのこと。

今年度は個人の方の寄贈もあり、情報センター蔵書はこの一年だけでも百冊近くなり、合計786冊となりました。関連報道や映画DVDは220本、いろいろなところに出かけて録音した講演テープ(資料付)は140本。先日の上村さんの講演もストックしました。音楽CDは60本。それなりに資料が充実してきています。年度末に道内の全教会・関連団体に所蔵書籍・映像リスト(改訂版)を配布する予定です。
今年に寄贈頂いた書物の中には、『北方文化研究報告』全巻(北海道帝国大学 思文閣出版)や、『対雁移住樺太アイヌ家数惣人別』など対雁関連の諸資料など、貴重なものばかりでした。まだ読む時間がありませんが、いつか目を通したいと考えています。

また今回、購入した書籍もどれも読むのが楽しみです。
『新・先住民族の「近代史」植民地主義と新自由主義の起源を問う』をさっそく読みはじめました。先日、著者の上村さんにサインを頂いたのですが、いつもの癖でつい書き込みをしてしまっています。
序文にあるように、本書は2001年4月に出版した『先住民族の「近代史」―植民地主義を越えるために』の復刻版として出版。著者は当時同様、今も先住民族に対する社会的関心は低く、前に扱った先住民族にまつわる諸課題は今もあるという認識で新版を編み出されたとのこと。前回の本も知らないことばかりだったので興味津々に読みましたし、このブログでも何度か参考にさせて頂いています。特に近代オリンピックと万博と先住民族との関連の章はバチェラー調査との関連で欲覚えています。
今回もより諸課題を深めています。第5章の「尖閣諸島」問題は、2014年2月に新しい論文を書かれたのを追加されたとのこと。
このブログでも今後、ご紹介したいと思います。


(画像をクリックすると拡大します)

さて、再度の「アイヌの遺骨はアイヌのもとへ」 in 東京 のご案内です。(昨日のカウントが330でしたので・・・)
詳しくはブログ「さまよえる遺骨たち」で、ご覧頂けますし、チラシもダウンロードできます。参加費500円。申込み不要。
日時:2015年1月30日(金曜)午後6時~8時50分
会場:平和と労働センター・全労連会館(東京都文京区)
プログラム
• アイヌ遺骨返還訴訟原告からのメッセージ  差間正樹さん(浦幌アイヌ協会会長)
• 講演1「アイヌ民族の遺骨を欲しがる研究者」  植木哲也さん(苫小牧駒澤大学国際文化学部教授、『学問の暴力 アイヌ墓地はなぜあばかれたか』著者)
• 講演2「アイヌ民族の先住権を認めたくない政府」  榎森進さん(東北学院大学名誉教授、『アイヌ民族の歴史』著者)
• 講演3「先住権・憲法から解きほぐす遺骨返還」  市川守弘さん(アイヌ遺骨返還訴訟弁護団)
• 他

この日、朝日新聞(以下に引用)に報道されましたように、アイヌ民族の遺骨を集め、慰霊施設をつくろうとしている政府の方針に対し、アイヌ民族の13人とその支援者計21人が日本弁護士連合会に人権救済を申し立てます。申立の文章等は「さまよえる遺骨たち」ブログに近く、掲載します。

朝日新聞 2015年1月25日13時47分
 大学の人類学などの研究用に収集されたアイヌ民族の遺骨を集め、慰霊施設をつくろうとしている政府の方針に対し、アイヌ民族の13人とその支援者計21人が日本弁護士連合会に人権救済を申し立てることがわかった。「遺骨は収集された集落(コタン)に返すべきで、集約はアイヌ民族の人権を侵害している」と主張している。
 政府は昨年6月、アイヌ民族博物館などの施設がある北海道白老(しらおい)町にアイヌ文化の復興拠点として「民族共生の象徴となる空間(象徴空間)」を設けることを閣議決定した。国立アイヌ文化博物館(仮称)などとともに慰霊施設を置く。そこに、北大や東大など全国12大学に保管されている約1600体の遺骨を集約して尊厳ある慰霊を実現、アイヌの人々の受け入れ態勢が整うまで適切な管理を行うとした。政府は遺骨の身元が分かれば遺族に返還する方針だが、判明しているのは23体だけで、今後の返還が課題になっている。
 申し立てをするのは浦幌アイヌ協会会長の差間正樹さん(64)らアイヌ民族の13人とその支援者。「アイヌ民族はコタンで先祖を慰霊する風習がある。政府が白老町に集約し、個人にしか返還しないというのは、アイヌ民族の宗教上の権利を侵害している」などと訴えている。差間さんは「先祖の土地に返して欲しい」と話している。
 弁護士連合会が調査し、人権侵害にあたると判断すれば「勧告」や「警告」を出して是正を求めるが、法的な強制力はない。
 アイヌ民族の間では、遺骨が大学に保管されたままであることへの反発が根強く、白老への集約を歓迎する声がある。一方、一部の遺族は「無断で盗掘された」などとして、北大を相手に返還を求める裁判を起こしている。遺族は特定できなくても、収集場所がわかっている遺骨は集落に返還するよう求めている。申し立ては、収集した大学の責任をあいまいにしたまま遺骨を集約する方針に一石を投じるものになりそうだ。
 内閣官房アイヌ総合政策室は「申し立てについてコメントはできないが、地域(集落)への返還については慎重に検討している」としている。
http://www.asahi.com/articles/ASH1S4STNH1SIIPE00N.html


とても綺麗な朝焼けでした。

講演「2014先住民族に関する国連特別総会と国際人権基準の浸透―ヘイトスピーチから森林認証制度まで」

2015-01-24 14:53:50 | 日記
昨日の1月23日にインカルシペ アイヌ民族文化祭 アイヌ民族シンポジウムに親子で参加して来ました。
メイン講演は上村英明さん(恵泉女子学園大学教授・市民外交センター代表)による「2014先住民族に関する国連特別総会と国際人権基準の浸透―ヘイトスピーチから森林認証制度まで」でした。
北海道新聞も取材し、今日の紙面に載りました。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/587914.html

上村さんは2014年にあった重要な事を分かりやすく3つのポイントにわけて説明。
ひとつは「世界先住民族会議」の報告、二つ目は「ヘイトスピーチ」に関すること、最後は「森林認証制度」に関すること。

ひとつめの世界先住民族会議(WCIP)は、2014年9月22~23日に行われた。
この背景は1993年に国際先住民年があり、1995年から2004年に(第1次)世界の先住民の国際10年、翌2005年~2014年に第2次世界の先住民の国際10年のプログラムが国連で行われ、最終年の2014年に今までのまとめの会議がニューヨークの国連で開催され、文章が出た。まとめると以下の通り。
①国連先住民族権利宣言(2007)を中心とする権利保障の強化と国連機関などによる実施と監視。
②先住民族の国際社会における新たな地位の検討の開始(先住民族が「準国家」としての地位を認める検討が始まった)

ふたつめのヘイトスピーチに対しては、国連人権条約機関による日本政府定期報告書の審査があり、人種差別撤廃委員会(人種差別撤廃条約:8月20~21日)より、ヘイトスピーチを行った個人および団体を捜査し、適切な場合には起訴する事、また、ヘイトスピーチをした公人および政治家に対する適切な制裁を追求することが勧告されていると紹介。
このことを、この度の金子発言(2014年8月)に当てはめると、これは単なる「言葉の暴力」ではなく、捜査や起訴の対象となる「犯罪」であり、金子が政治家であるゆえに「制裁」の対象になる。誰が対応しなければならないかと言うと、アイヌ民族ではなく、官房長官であり国家機関(中央政府・地方政府)にある、とのこと。国際的にも日本政府もアイヌを先住民族と認めているのだから、一連のヘイトスピーチは政府が対処しなければならない。
日本政府はこの勧告がこたえたようで、自民党は「ヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチーム」を設置(8月28日初会合)。内容はあやしいものゆえ市民がきちんと監視しないといけないが、動き始めた事はたしか。そして国だけではなく個々の市町村が取り組まねばならない。

なお、アイヌ民族に関する人種差別撤廃委員会の勧告は以下の通り。
a アイヌ政策推進会議および他の協議機関におけるアイヌ代表者の人数を増やす事を検討すること、
b 雇用、教育そして生活水準に関して、アイヌ民族とそれ以外の者の間で依然として存在する格差を減らすために講じられて措置の実施を迅速化し、向上させること、
c 土地と資源に関するアイヌ民族の権利を保護するための適切な措置を採択し、文化と言語に対する権利の実現に向けた措置の実施を促進すること。
d 政府のプログラムや政策を調整するために、アイヌ民族の状況に関する実態調査を定期的に実施すること。
e 前回の委員会の総括所見のパラグラフ20においてすでに勧告されたように、独立国における原住民及び種族民に関するILO169号条約(1989年)を批准することを検討すること。

以上のことで分かることは、なんらアイヌ民族への施策は十分ではないということ。もっと迅速にやるべきだ、と。


今年こどもたちに配った手作りアドベントカレンダー
(市販のお菓子だけではなく、ハリーポッタの百味ビーンズの鼻くそ味やゲロ味なども入れた)


もう一つの話題は、森林認証制度(FSC)の認証基準の改定(2012年)の紹介。
この制度とは適正に管理された森林から算出した木材およびそれを利用した製品に、これを認証し、認証マークを付与する国際的な基準制度。その原則の項目に以下の、「先住民族の権利」が加わったとのこと。少し長いですが引用します。

原則3:先住民族の権利
組織は、先住民族の所有に関する法的・慣習的権利、土地の使用と管理、森林施業により影響を受ける彼らの土地および資源について特定し、尊重しなければならない。
3.2 先住民族が自身の権利、資源、土地、領土を保護するために必要な範囲内で、組織は先住民族が森林管理に優先して持つ法律上及び慣習的な権利を認識、支持しなければならない。先住民族による管理活動の第三者への委任の際には事前に十分な情報を与えられた上での自由意志に基づく合意が必要である。(3.3は略)
3.4 組織は先住民族の権利に関する国連宣言(2007)及び原住民及び種族民条約(ILO第169号条約)(1989)の規定に従い、先住民族の権利・慣習・文化を認め、尊重する。
3.5 組織は先住民族の協力の下、先住民族にとって文化的、生態的、経済的、宗教的、精神的に特別な意味を持ち、先住民族が法律上または慣習的な権利を持つが書を特定しなければならない。これらの場所は、組織とその経営層により認識され、先住民族と協議に基づき保護されることが合意されなければならない。
3.6 組織は先住民族が伝統的な知識を守り、使用する権利を支持し、伝統的な知識や知的財産を使用する際には先住民族に補償しなければならない。また、使用する際には事前の十分な情報を与えられた上での自由意思に基づく合意を通じて、組織と先住民族の間で基準3.3のような拘束力のある契約を締結しなければならない。また、これは知的財産権の保護制度と調和していなければならない。

以上の新認証基準により、FSCによる市民外交センターへの聞き取り調査が行われ、
「※アイヌ民族の承認がない森林および木材製品には、FSC認証を認められない」という結論が出されたとのこと。
今まで、アイヌ民族が木材をとると違法となっていたが、今はアイヌ民族の承認なしに北海道から伐採される木材、生産される木材製品は国際基準に照らして「違法」となる! 10月30日より、日本製紙と王子製紙が北海道アイヌ協会との話し合いを始めたとのこと。
それがたとえ、企業の土地内にある木材であっても「違法」となるのだから、国有地なども対象になるのではとのこと。
改めて、国際基準の浸透を考える必要があり、このような混乱がおこるのも日本政府がきちんと対応していないからであり、日本政府は国際的にきちんと姿勢を見せなくてはならない、と。

講演後のパネルディスカッションの内容は省略させて頂きます。


今朝の浜益の黄金山 朝焼けで輝いていました。