presented by hanamura
まだまだ残暑が続いていますが、
朝晩はだいぶ涼しくなりましたね。
夜には虫の音が聞こえてくるようになり、
秋の風情を感じさせてくれます。
花邑ではこの秋に向け、
ただいま「更紗の帯展」を開催しています。
今回もこれにちなみ、
「和更紗」の文様についてお話ししましょう。
前回までは、江戸から明治時代までの文様についてお話ししました。(※1)
異国への憧憬を感じる自由でのびやかな江戸時代の文様と
古い文化と新しい文化を融合した明治時代の文様をご紹介しました。
今回は大正時代の文様についてのお話しをしましょう。
大正時代は、第一次世界大戦が日本の勝利に終わったこともあり、
日本中が好景気に沸き、
西欧の文化がさまざまな形で日本へと流れ込んできた時代です。
街には着物にブーツを合わせた「ハイカラ」な装いの若者が増え、
東京・銀座では「モガ」や「モゴ」という
西欧風の装いをした若者が闊歩するようになりました。
また、着物の装いでは「大正ロマン」とよばれる、
華麗で大胆な色柄のものが人気になりました。
しかし、それらの華々しい文化に反して、
この時代の和更紗の文様には、
渋い色柄のものが多くつくられるようになりました。
細かく、淡々と連続された文様はまるで江戸小紋のようで、
色使いも派手ではなく、とてもシックなものが数多く見られます。
上の写真は、斜め横段に伝統文様が配された和更紗です。
ある種無機的な文様の連続ですが
宝尽くし、鱗文など、何種類もの文様が染められていて、
作り手の遊び心を感じさせてくれます。
こちらのほかにも、大正時代の和更紗には
花柄や星柄、ひょうたん柄など、
さまざまなものをモチーフにしたものがあります。
こうした細かな文様を型に彫り、
文様と文様をずれがないように繋ぎながら染め上げるためには
やはり江戸小紋などと同様に
高い技術と習熟度が必要になります。
同時代ながら大正ロマンのような華々しさはないものの、
洒落心と技を感じさせてくれる大正時代の和更紗は
粋で洗練された和更紗なのです。
※写真の和更紗は「更紗の帯展」にて取り扱っています。
(※1)2009年8月25日更新のブログ「和更紗の文様について」を参照してください。
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次回の更新は9月15日(火)予定です。
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