花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「KATAGAMI style」展に行ってきました。

2012-04-25 | 更紗について

presented by hanamura ginza


4月も中旬を過ぎ、
東京では、ぐんと気温が上がりましたが、
季節の変わり目だからなのでしょうか、
雨の降る日も多く、傘が手放せない日が続いています。

それでも、ゴールデンウィークのときには、
晴れとなる地域が多いようなので、
お出かけには最適な日和となるでしょう。

各地では、ゴールデンウィークに向けて、
さまざまな催し物が開催されていますが、
お着物にちなんだ催し物では、
東京の丸の内の三菱一号館美術館で開催されている
「KATAGAMI Style」展もおすすめです。

名前にある「KATAGAMIとは、型紙のことです。
型紙とは、和紙を重ねて柿渋で
貼り合わせた地紙に、
彫刻刀で文様を彫り抜いたもので、
織地に意匠を染めつけるために用いられるもので、
お着物にはとても縁の深いものです。

その型紙が、19世紀後半から20世紀初頭に
イギリスやフランス、ドイツ、アメリカなどの西欧に
千点から一万点もの数がもたらされたということで、
「KATAGAMI Style」展では、日本でつくられた型紙が、
各国でどのような影響を与え、
どのような美術品や工芸品のデザインに用いられたのかといった内容が
くわしく展示されています。

先週の日曜日にその「KATAGAMI Style」展に行ってきました。
雨の降る寒い日でしたが、
会場には、多くの人々が訪れていました。

さまざまな年齢層の方が来場されていましたが、
その中でも、テキスタイルの勉強をしにきているのか、
学生さんのような若い人の姿が目立ちました。

日本の伝統文様の普遍的な美しさを再認識するとともに、
型紙そのものについても美を感じることができた
興味深い展示内容でした。

今日は、その「KATAGAMI Style」展にて
紹介されていた型紙についてお話ししましょう。

日本において、
型紙がつくられたのは鎌倉時代のころです。
糊によって文様部分を防染する糊防染の誕生とともに、
型紙は誕生しました。

それまでの衣服の意匠は、
公家の装束に用いられていた、
錦織などの織りによってあらわされた
優美なものが主流でした。

しかし、武士が実権を握るようになると、
織りよりも、簡素で機能的な着物が好まれるようになり、
型紙を使用したシンプルな意匠が用いられるようになりました。
各地の権力者たちは、それぞれの美意識をあらわすように
独自の文様を精緻な型染めによってあらわすようになったのです。

江戸時代になり、友禅染めが考案されると、
上流階級では華麗な文様が染めあらわされた着物が人気となりました。
その一方、型染めは粋を美とする庶民たちの間で人気となり、
技法を凝らしたさまざまな文様の型染めがつくられるようになりました。

中でもで三重県の鈴鹿市白子、寺子の両地域では、
紀州藩の後ろ盾もあり、型紙の生産地として
多くの型紙が製作されました。
この地方でつくられる型紙は、現在でも「伊勢の型紙」とよばれ、
江戸小紋などにも用いられています。

ちなみに、伊勢の型紙は、当時つくられた和更紗にも用いられています。



上の写真の腹合わせ帯は、江戸時代後期につくられた和更紗からお仕立て替えしたものです。
異国情緒漂う唐花文様が、染めあらわされたもので、
現代見てもモダンな雰囲気ですが、
こちらも伊勢の型紙が用いられたものです。

こうした型紙が、海外に多くもたらされたのは、
明治時代になってからです。

西洋化が進んだ当時の日本では、
服装も着物から洋服へと変わっていき、
手間のかかる型染めによる染色は廃れていきました。
そのため、型紙をつくる仕事が減り、
型紙の作り手である職人も数が少なくなっていったのです。
また、いままでつくってきた使用済みの型紙も、
その用途が見出せず、破棄されたものもかなりの数があったようです。

この型紙に、価値を見出したのが、
イギリスやドイツ、フランス、アメリカ、ベルギーなど、
欧米の国々でした。

アールーヌーボーなどの新しい美意識が注目されていた当時の欧米では、
日本独自の文化が生んだ型紙の緻密な文様や斬新な意匠に、
美を見出していました。
そして、多くの型紙を国に持ち帰り、
その型紙の文様をヒントにして、
ポスターのデザインや食器、家具のデザインを考案していったようです。

こうした型紙は浮世絵などに並んで、
西欧において産業や芸術に新しい息吹をもたらし、
当時の西欧で盛んだったた美術工芸改革運動の流れに伴い、
新しい美意識を誕生させました。



上の写真の名古屋帯は、
明治時代につくられた絹紬からお仕立て替えしたものです。
松と冊子が交互に組み合わされ、
冊子の中には麻の葉が配された凝った意匠の藍染ですが、
こういった日本の伝統文様が海外に渡り、
さまざまな工芸品や美術品に応用されました。

「KATAGAMI Style」展では、
こうした型紙をもとにしてつくられた
タペストリーや家具、絨毯などが、
国ごとに分けられて展示されています。

芭蕉の文様が絨毯に用いられていたり、
菊文様がビビットな色合いのクッションカバーになっていたり、
お屋敷の階段に型紙のデザインが用いられていたりするなど、
各国においてさまざまなかたちで型紙の文様が取り入れられています。

それにしても、日本においては、
実用品として使用する道具でしかなかった型紙に、
美を見出して、自国に持ち帰った人々の眼識の高さには驚きです。

しかし、文明開化が進んだ日本において、
身近にあったものだからこそ、
その美を見失ってしまっていたのかもしれません。

当時つくられた型紙の中では、
現在つくるのが困難なものも多く、
そうした貴重な資料を手放してしまったことについては、
残念な気持ちがしてきます。

しかし、名もない職人が心意気で作り上げた型紙が、
西洋で評価され、さまざまなデザインに用いられて
普遍的なものになっていったということは感慨深くもあり、
当時、日本の職人たちがもっていた美意識の高さを
うかがい知ることもできます。

「KATAGAMI Style」展は、
5月27日(日)まで開催されているようなので、
ご興味のある方はぜひ、足を運んでみてください。


※上の写真の「和更紗両面染め、唐花と鳥唐草文様の腹合わせ帯 」と、「冊子に松文様 型染め 名古屋帯 」は花邑銀座店でご紹介している商品です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は5月3日(木)予定です。

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