presented by hanamura
4月も半ばを過ぎ、
東京ではこの間まで満開だった桜の花も散り、
若葉が陽射しを浴びてきらきらと輝いています。
今年はとくに
冬から春へと移り変わっていく情景が
心の支えともなっています。
日本人は古来から長く厳しい冬から
春へと移り変わる自然の情景を眺め、
ときに癒され、ときに励みにしていたのでしょう。
日本の伝統文様には、
自然の風物を題材にした
ものが数多くあります。
今日お話しする「楼閣山水文様」も、
自然の風物を意匠に取り入れた文様のひとつで、
もともとは水墨画の「楼閣山水図」を題材にしたものです。
楼閣山水の楼閣とは、
1階の平屋建て建築ではなく、
重層の建築物を指します。
水墨画の発祥地である古代中国では、
楼閣は政治を行う場所でもあり、
悪霊を沈静させ、神仏の加護を願うためのものとして、
各地でつくられました。
その多くは風光明媚な河畔に建てられ、
貴族や文人、画家などが訪れました。
楼閣から眺めた絶景を詠んだ詩や水墨画が
多く残されています。
また、水墨画では自然の景色とともに楼閣が建つ鳥瞰図を
あらわした「楼閣山水図」が多くつくられました。
日本に水墨画が伝えられたのは鎌倉時代の頃ですが、
こうした「楼閣山水図」が描かれるようになったのは、
室町時代の頃です。
また、室町時代には古代中国の楼閣を模して
金閣寺や銀閣寺のような楼閣もつくられるようになりました。
楼閣山水図が着物の意匠として用いられるようになったのは、
江戸時代の中期頃です。
武家の女性が着た小袖には、
この楼閣山水文様にくわえ、四季の草花と、
御所車や檜扇などの公家をあらわす器物を配した
「御所解き」とよばれる文様も用いられました。
上の写真は、楼閣に山々、川や樹木、を配した楼閣山水文様の型染めです。
心和む自然と人工的な建造物である楼閣との対比によって
自然の美しさを称えるとともに、
自然と共生する人々の営みを慈しんでいるように感じられます。
※写真は花邑 銀座店にてご紹介している名古屋帯です。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は5月4日(水)予定です。(4月27日(水)は4月29日(金)より開催の
「半巾の帯展」準備のため、お休みさせていただきます。)
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